『テラスハウス』は「放送倫理上の問題があった」。BPOが見解、木村花さんへの人権侵害は認めず

母・響子さんが、木村花さんの死は番組での「過剰な演出」がきっかけでSNS上に批判が殺到したためだとして、人権侵害があったと申し立てていました。
木村花さん
木村花さん
Etsuo Hara via Getty Images

フジテレビの恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花さんが死去した問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は3月30日、「放送倫理上の問題があった」とする見解を公表した。

その上で、フジテレビに対して「問題の深刻さの認識に甘さがあったことは否定できない」と指摘し、再発防止に務めるよう要望した。一方で、フジテレビ側は花さんへの一定のケア対応をしていたなどとして、「(花さんに対する)人権侵害があったとまでは断定できない」とした。

母響子さんが人権侵害を申し立てていた

木村花さんは、「テラスハウス」出演時の言動をめぐりネット上で誹謗中傷を受け、2020年5月に自ら命を絶った。

番組では、出演者の1人が花さんのレスリングのコスチュームを誤って洗濯し、それに対して花さんが怒るシーン(第38話の“コスチューム事件”)をNetflixで配信。その後地上波でも放送し、ネット上で花さんへの誹謗中傷が相次いだ。

木村花さんの母・響子さんは、花さんの死は番組での「過剰な演出」がきっかけでSNS上に批判が殺到したためだとして、人権侵害があったと指摘。

BPOに申し立てを行い、2020年9月にBPOで審理入りが決定した。

一方フジテレビは、番組で花さんを「暴力的に描いていない」などと主張し、「人権侵害は認められない」と反論していた。

放送人権委員会は、調査の結果、「木村(花)氏に精神的な負担が生じることが明らかである本件放送を行うとする決定過程で、出演者の精神的な健康状態に対する配慮に欠けていた」と指摘。「放送倫理上の問題があった」と判断した。

一方で、フジテレビ側が花さんが自傷行為を行なった後に「一定のケア対応」をしていたことや、地上波放送前に「一定の慎重さをもって判断がなされた」ことなどをふまえ、「人権侵害があったとまでは断定できない」とした。

BPO会見より
BPO会見より
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「モラルを持って真摯に問題と向き合ってほしい」母の響子さんが指摘していた

フジテレビは20年7月末に公表した内部調査結果で、炎上を煽る意図はなかったと結論づけている。

報告書では、花さんに寄せられた誹謗中傷について、「多くの批判が寄せられることは予見できなかった」と報告。SNSの炎上を狙った演出について、「木村花さんの場合に限らず、制作スタッフの全員が、出演者のSNSの炎上を煽ろうとするような意図を持つことは無い」と否定した。

こうした内部調査の報告について、響子さんは「なぜ誹謗中傷が起きたのか、本質を見ず、(SNSの誹謗中傷など)自分たちの責任がないところに責任を押し付けて逃げているようにしか思えません」と批判。

ハフポスト日本版の取材に対し、「フジテレビや制作会社にはモラルを持って真摯に問題と向き合い、本質的な改善策を出してほしい」と訴えていた。

また響子さんは、SNS上で花さんを中傷したとして、投稿した男性に約290万円の賠償を求める訴訟を起こしている

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