DHC問題、コンビニ大手3社の対応は?専門家「取引先企業にも是正責任がある」

取材に対し、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの3社は、DHC製品の取り扱いを続けていると回答した。
時事通信社

化粧品大手「DHC」が公式オンラインショップ上で、在日コリアンへの差別的な文章を掲載し、批判の声が上がっている。

Twitter上では、同社製品を取り扱うコンビニエンスストアの対応にも注目が集まっており、ハフポスト日本版はコンビニ大手3社に対応状況を取材した。

セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの3社は、取材に応じ、いずれも取り扱いを続けていることを明らかにした。「現在のところ、取扱いの中止などは検討しておりませんが、お客様のご意見などを参考に判断してまいります」(ローソン)などとしている。

「ESG投資」の専門家は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」などを踏まえ、「取引先であるコンビニ大手にも、問題の是正に向けた責任がある」と指摘する。

DHCサイトの文章に、批判の声上がる

DHCは、公式オンラインショップに「ヤケクソくじについて」という文章を掲載している。吉田嘉明・代表取締役会長の名義で、2020年11月に書かれたものだとしている。

自社サプリの優位性をアピールする文章で、同じくサプリを手掛けるサントリーについて、「CMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です」と根拠を提示せずに主張。在日コリアンへの蔑称を交えた呼称を使っており、抗議の声があがった。

この問題についてNHKが取材し、2021年4月9日に放送した。DHC側は4月10日までにこの文章を加筆・更新した。

そこでは、「NHKは日本の敵です。不要です。つぶしましょう」などとつづり、在日コリアンの外見を揶揄するような表現も書かれている。

問題をめぐっては、大阪市生野区に拠点を置く人権団体「コリアNGOセンター」が、大阪市のヘイトスピーチ抑止条例に基づき審査を求める意見書を大阪市に提出している。同団体は文章について、「明らかに在日コリアンが日本人よりも劣っているとの主張にもとづくもの」と指摘。DHCが全国に販売店を持ち、大阪市でも経済活動を行なっていることから「大阪市条例で審査すべき」だと訴えている。

コンビニ3社、取材への回答

DHCの商品は、直営店のほかドラッグストアなどで取り扱われている。中でも同社が「コンビニエンスストアで販売する画期的手法を取り入れた」と説明している通り、コンビニで同社の製品を手にする消費者は多い。

一連の問題を受けて、Twitter上では、最寄りのコンビニでのDHC製品の販売状況についての投稿など、コンビニの対応に関心を向ける内容が多数見られた。

DHCの取引先である大手コンビニは、今回の問題をどうとらえているのか。

セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社が、4月20日までにハフポスト日本版の取材に応じた。

いずれの社もサプリメントや化粧品などの商品を現在、「扱っている」と回答した。

取引先企業であるDHCが、差別的な表現をサイトで掲載していることを受けて、同社製品の取り扱いに関する対応を検討しているかという質問に対しては、各社は下記のように答えた。

セブン-イレブン「個々のお取引先様の案件につきましては回答を控えさせて頂きます」

ファミリーマート「現状では、未定でございます」

ローソン「現在のところ、取扱いの中止などは検討しておりませんが、お客様のご意見などを参考に判断してまいります」

取引先行動指針の中で「人権の尊重」を求めている

ファミリーマートは取材に対し、「人権方針を策定しており、全ての役員・従業員に対して教育・啓発に取り組むとともに、ビジネスパートナーおよびその関係者の皆さまに対しても、本方針を共有し、理解・浸透を図って参ります」と説明した。

ファミリーマートが公開している人権方針の中では、人種や国籍などによる偏見や差別の禁止を明記しており、「ビジネスパートナーおよびその関係者の皆さまにも本方針を理解し、支持していただくことを期待すると共に、コミュニケーションや情報共有を深めるなど、協働して人権尊重を推進するよう継続的に働きかけていきます」としている。

また、セブン&アイ・ホールディングスも「お取引先行動指針」の中で「人権の尊重と保護」を掲げ、取引先に対し「 直接、間接を問わず人権侵害に加担しないでください」などと求めている。

専門家「影響力を行使して、問題に関与していくべき」

日本フランチャイズチェーン協会によると、2020年12月時点で、国内のコンビニ店舗数は5万5000を超え、同年の売上高は10兆6608億円となった。

環境や社会課題の観点から企業の将来性を評価する「ESG投資」の専門家・夫馬賢治さんは、「コンビニの事業規模は大きく、今回の問題においても責任と影響力は著しく大きい」と指摘する。

根拠の一つとするのが、ファミマの人権方針、セブンのお取引先行動指針でも言及されている国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」だ。

「国連の指導原則では企業に、取引関係によって生じる人権への負の影響に対し、是正に向けて関与することを求めています。つまり、今回のケースでもコンビニ大手には明確な責任があると考えます。コンビニ大手は事業規模の大きさを自覚し、自身の影響力を行使して、問題に関与していくべきです」

「今回のDHCの発信はヘイトスピーチであり、由々しき問題です。各社は、企業としてこの件をどう考えているのか示し、DHCに対してどのように働きかけているかを開示すべきです。消費者に判断を転嫁するようなことはあってはなりませんし、消費者に対しても、『差別を容認しない社会にしよう』というメッセージを訴えるべき立場にあります」

こういった姿勢を示していくことは、企業の経営面への利点もあると指摘する。

「国内投資家も、人権課題を重視するようになってきています。人権侵害は許容しないというスタンスを明らかにすることは、投資家からの評価を高め、企業価値を高めることにつながります」

「また、差別を放置することは、差別を容認することと同じです。それにより差別が広がり、社会情勢が悪化し、経済にブレーキがかかれば、結果的に自社の売上が落ちることにもつながりかねない。経営の面でも企業は、取引先がおこしている人権問題について、是正に向けて積極的にコミットすべきです」

夫馬 賢治(ふま けんじ)ニューラルCEO。ESG・サステナビリティ専門家。ハーバード修士。Sustainable Japan編集長。著書に『ESG思考』(講談社+α新書)、『超入門カーボンニュートラル』 (同、2021年5月出版)などがある

<夫馬さんによるESG解説>

(湊彬子 @minato_a1 ・生田綾 @ayikuta /ハフポスト日本版)

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