【強制労働リスク調査】日本の食品系企業、26位〜38位と低評価続出。改善に向けた取り組みは?

「ビジネスと人権」が重視される時代、低評価だった日本企業は、どんな改善策を打ち出したのでしょうか。

ビジネスが「人権 」を無視できない時代になっている。6月13日に閉幕した主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、サプライチェーンにおける強制労働の根絶に向け、各国が連携を強めていくことで一致した。

自社商品の生産過程で、強制労働や児童労働はないか。防止策を講じているか。企業にとって、人権侵害のリスク管理は社会的な責務だ。

しかし、2020年10月に公表されたイギリスの人権団体の強制労働リスク調査では、100点満点で8点という「サントリー食品インターナショナル」をはじめ、日本企業6社はいずれも厳しい評価を突きつけられた。

日本政府は同月に「ビジネスと人権に関する行動計画 」を策定し、企業に取り組みを促したばかり。半年あまりが過ぎた今、対応は改善したのか? 各社に聞いた。

Know The Chainの調査を受けた食品関係の日本企業
Know The Chainの調査を受けた食品関係の日本企業
時事/サントリー/明治

最高点は英「Tesco」、国内3社は平均以下

調査はイギリスの人権団体Know The Chain」(KTC)が2020年、世界の食品・飲料系企業を対象に行った。まず、大手43社を対象に、強制労働リスクへの取り組みを「調達行動」「モニタリング(監視)」など7つの指標を元に100点満点で数値化した。

43社の平均は28点で、最高はイギリス「Tesco」の65点。スイスの「ネスレ」は55点(3位)、アメリカ「アマゾン」は37点(13位)だった。最低は、中国の「Foshan Haitian Flavouring and Food Co.Ltd.」とサウジアラビアの「Almarai Co.」の2社で0点だった。

採点対象となった日本企業3社は、いずれも平均を下回った。

8点のサントリー食品インターナショナル」は、43社中38位。「サプライヤーの把握やリスクの開示」「モニタリング」など、4つの指標で0点だった。

イオン」は17点(31位)。苦情申し立ての仕組みなど「労働者の声」が0点で、サプライヤーの適正な選定など「調達行動」の評価も低かった。

国内最高点だった「セブン&アイ・ホールティングス」も、22点(26位)にとどまった。

「(日本国内で)同社はサプライチェーンの基準、経営陣とアカウンタビリティ、モニタリングプロセスに関する情報開示が進んでおり、新たなサプライヤーを選定する前に強制労働リスクを評価する方法について情報を公開している」と評価されたが、それでも平均を6点下回った。

Know The Chainの報告書(日本版)の表紙
Know The Chainの報告書(日本版)の表紙
Know The Chain/ビジネスと人権リソースセンター

日本企業6社の評価「最低限の措置のみ」

調査では、対象を60社に広げて、5段階評価も行った。日本は対象となった6社すべてが最低限の措置しか講じていない」という4番目の評価だった。

60社全体をみると、5段階で最高の「ほぼすべての領域で措置を講じている」はゼロ、2番目の「大半の領域で措置を講じている」は8社(13%)、3番目の一部の領域で措置を講じている」は15社(25%)だった。

日本企業の遅れが浮き彫りとなったが、政府はこの調査結果が公表された2020年10月に「ビジネスと人権」の行動計画を策定。官民挙げての取り組みが本格化したばかりで、今後の挽回に注目したい。

Know The Chainによる日本企業の調査結果
Know The Chainによる日本企業の調査結果
ハフポスト日本版

日本企業6社の改善策は?

日本企業6社は調査結果をどう受け止め、どのように改善に取り組んできたのだろうか。ハフポスト日本版の取材に対する各社の回答をまとめた。

<以下、回答文より抜粋>

【サントリーホールディングス】(本社・大阪市)

今回の結果を真摯に受け止め、改善に向けた機会と捉え、取り組みの更なる強化につなげたいと考えております。Sedex(※)での加入を通じたサントリーグループ全体での1次サプライヤーの強制労働も含めたESGマネジメントを加速し、2021年5月時点では1000以上の製造拠点を含む主要サプライヤー約650社とのSedex上での連携を実現しており、リスク評価も実施しています。

今後は連携するサプライヤーを拡大しながら継続してマネジメントを行います。また、主要な原料に関する2次サプライヤー以降のリスク評価について取り組みを開始しました。既存取り組みの最新アップデートは7月中に下記サイトにて更新する予定です。

(※)グローバルサプライチェーンの労働条件を企業が管理および改善するために使用している世界有数のオンラインプラットフォーム。

【イオン】(本社・千葉市)

イオンは、近年「国連ビジネスと人権に関する指導原則」をもとに活動しており、2020年度については、救済へのアクセスへの取り組みを行いました。トップバリュサプライチェーンに対する「お取引先さまホットライン」を設置し、ホームぺージで開示し、運用を始めています。

【セブン&アイ・ホールティングス】(本社・東京都千代田区)

昨年のKnow The Chain の調査報告は、真摯に受け止め取り組みの改善を進めております。今後の改善内容はHP等で公開をさせていただきます。なお、現状の取り組みに関しましては一部弊社HPで公開しております。

【明治ホールディングス】(本社・東京都中央区)

昨年の結果については、真摯に受け止め、対応していきたいと思います。その後、Supplier Code of Conductを下記に開示しております。
https://www.meiji.com/global/sustainability/policies/pdf/supplier_code_of_conduct.pdf

さらに、サプライヤー調査を開始し、下記サイトにも開示しております。Sustainable procurementの部分をご覧ください。
https://www.meiji.com/global/investors/business-plans/mid-term-plan/

2023中期経営計画で、明治ROESGを導入し、ESG評価機関の結果を役員報酬に反映していきます。

【ファミリーマート】(本社・東京都港区)

当社では人権尊重の重要性について企業活動における基盤と受け止めております。昨年10月に「ファミリーマート 人権方針」を制定し、ビジネスパートナーおよびその関係者の皆さまにも本方針を理解・支持していただくことを期待し、協働して人権尊重を推進すべく努めています。

人権方針の制定に合わせ、各種通報や相談先となる窓口をWEBページにて開示。デューデリジェンスとして、お取引先約150社に労働環境を確認するアンケートを実施したほか、一部のお取引先には、工場監査を実施しました。

【ヤクルト本社】(本社・東京都港区)

「Know The Chain」の報告書は、当社グループの人権に関する取り組み検討のため、参考にさせて頂いています。ヤクルトグループでは、各国・地域の法令遵守はもとより、世界人権宣言、国際労働機関(ILO)の提唱する労働や人権の原則(ILO宣言)を含めた国際的な人権の原則を遵守し、人権に配慮した事業活動を推進しています。

2018年に「ヤクルトグループ CSR調達方針」を策定し、これに基づきCSR調達に取り組んでいます。人権・労働・環境・腐敗防止などのCSR要素を考慮し、サプライヤーと協働して持続可能な社会を目指す活動です。2020年7月に「ヤクルトグループサプライヤーCSRガイドライン」を策定しました。「ヤクルトグループ人権方針」を開示する予定もございます。社会に寄与する良き企業市民として、グローバル社会と協調しながら、積極的に人権に配慮した活動を推進していきます。
https://www.yakult.co.jp/csr/operation/supplier_csr_guidelines.pdf
https://www.yakult.co.jp/english/csr/operation/supplier_csr_guidelines.pdf

提供写真をもとにハフポスト日本版が作成

6月24日(木)夜9時からのハフライブでは、SDGs時代に、お金や金融システムは本当に世界をより良い場所に変えていく力があるのか、機関投資家とZ世代をゲストに迎えて考えます。

【番組概要】

・ハフライブ「SDGs時代、お金で世界は良くなるか?」
・配信日時:6月24日(木)夜9時~
・配信URL: YouTube
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・配信URL: Twitter(ハフポストSDGsアカウントのトップから)
https://twitter.com/i/broadcasts/1dRJZNZnPAAJB
(番組は無料です。時間になったら自動的に番組がはじまります)

【ゲスト】
松原稔さん / りそなアセットマネジメント執行役員責任投資部長
能條桃子さん / 一般社団法人「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事・慶應義塾大学院経済学研究科修士1年

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