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2021年06月23日 15時10分 JST | 更新 2021年06月23日 15時59分 JST

夫婦同姓は「合憲」最高裁2015年に続き 夫婦別姓訴訟

長官と判事の15人全員がそろう大法廷で審理した。大法廷は2015年、夫婦同姓を定めた民法規定を「合憲」と判断していた。

最高裁に入る弁護団ら
澤木香織撮影

夫婦別姓を認めず、婚姻届を受理しないのは憲法に違反すると訴えた3件の家事審判の決定で、最高裁大法廷は6月23日、憲法判断を示した。

民法と戸籍法の夫婦同姓規定について「合憲」との判断を示した。弁護団が、取材に明らかにした。

榊原富士子弁護士は、憲法14条違反を認めない論旨について「全く理解できない」とした上で、違憲とした裁判官による「意見」の内容を「前進した」と評価した。

原告の一人は「自分の小学生の子どもが大人になったとき、同姓か別姓か2つの選択肢がある世の中になってほしい」とコメントした。

審理は、長官と判事の15人全員がそろう大法廷(裁判長・大谷直人長官)でされた。大法廷は2015年に、夫婦同姓を定めた民法規定を「合憲」と判断していた。

 

【update 2021/06/23 16:00 弁護団への取材内容を加筆しました】

 

 

裁判の経緯は?2018年、3組の夫婦は婚姻届を出したが受理されず

澤木香織撮影
取材に応じる弁護団ら

 

別姓での婚姻届の受理を求めていたのは、東京都内に住む3組の事実婚の夫婦だ。

夫婦は、2018年に婚姻届を役所に出す際、「婚姻後の夫婦の氏(姓)」を選ぶ欄の「夫の氏」と「妻の氏」の両方にチェックを入れ、結婚後もそれぞれの姓を名乗ることを希望したが、いずれも受理されなかった。

このため、役所に婚姻届の受理を命じるよう求めて、2018年3月に東京家庭裁判所に審判を申し立てていた。

審判で3組の夫婦は、夫婦同姓を定めた民法や戸籍法の規定が「婚姻の自由や信条によって差別されない法の下の平等を定めた憲法に反する」と主張した。

だが東京家裁は2019年3月、最高裁が2015年に出した合憲判決を踏襲し、夫婦同姓を定めた民法の規定には「合理性がある」と申し立てを却下。最高裁判決後の世論調査などから、選択的夫婦別姓制度の導入などを「国会で議論すべき要請が高まっていることがうかがえる」としながらも、「家族のあり方や氏(姓)の意義が大きく変化したとまでは認められない」とした。

夫婦は審判を不服として東京高裁に即時抗告したが、いずれも棄却されたため、最高裁に特別抗告していた。

 

「家制度」廃止、民法改正。しかし原則は残った【夫婦別姓議論の経緯】

夫婦同姓を法律で義務づけている国について、2015年に安倍晋三首相(当時)は、「我が国のほかには承知していない」としている

日本で夫婦同姓が原則となったのは、1898年に施行された明治民法からだ。

第2次世界大戦後の1946年、個人の自由と尊厳を重視する日本国憲法が公布されると、それまでの家父長的な「家制度」は廃止された。これを受けて「妻が夫の家に入る」と定めていた民法も1948年に改正されたが、夫婦同姓の原則は750条として残された。

戦後、女性の社会進出がいっそう進んだ。

1979年に国連で女子差別撤廃条約が採択され、日本は1985年に批准。同年の男女雇用機会均等法制定につながった。

 

96%の夫婦が、夫の姓に「現実に存在する男女の不平等を反映している」

社会で活躍する女性が増えるにつれ、結婚によって姓が変わる不都合が顕著になってきた。

姓が変わることで、旧姓で築いた業績や信用を保つことが難しかったり、パスポートや運転免許証、銀行口座の名義を改める手続きが必要になったりする。アイデンティティーが失われたと感じる人もいる。

2015年現在、結婚する夫婦の実に96%が夫の姓を選んでおり、こうした不利益は妻が受けることが圧倒的に多いのが現状だ。

国連の女子差別撤廃委員会(CEDAW)は、ほとんどの女性が結婚する際に夫の姓を選んでいる日本の状況を「現実に存在する男女の不平等を反映している」と指摘。条約に沿った国内法の整備を進めるよう2003年以降、繰り返し勧告してきた。

 

与党の反発。進まぬ国会での議論

ところが、法整備は進まず、近年は議論の後退すら指摘されている。

1996年には、法務大臣の諮問機関である法制審議会が、選択的夫婦別姓を導入する民法改正要綱を答申したが、保守派議員の反対で国会への法案提出が見送られた。

2020年12月に政府が策定した第5次男女共同参画基本計画からは、第4次計画まであった「選択的夫婦別氏(別姓)制度」という文言が削られた。与党自民党内から「別姓になれば家族の一体感が失われる」と反発があったためだ。

2015年の最高裁大法廷は、夫婦同姓の制度は「社会に定着しており、家族の姓を一つに定めることには合理性がある」と合憲判断を下し、国会での議論に委ねた。

内閣府が2017年に行った世論調査で、選択的夫婦別姓への法改正を容認する人の割合は42.5%と、同様の調査を始めた1997年以降でもっとも高くなった。 

 2021年6月現在、選択的夫婦別姓を求める人たちが、他にも複数の訴訟を起こしている。

経営者らが実現を求める共同声明を国に提出する動きや、多くの地方議会で政府に導入や議論を求める意見書が採択され、社会の機運も年々高まっている。

「合憲」判断をした2015年以降のこうした社会情勢の変化について、最高裁がどう捉えるかがポイントになるとみられていた。

 

2015年最高裁の「合憲」判断

民法の夫婦別姓規定をめぐって、初の憲法判断となったのが、2015年12月の最高裁大法廷での合憲判決だ。

この裁判は2011年、東京都内の事実婚の夫婦ら5人が起こした。夫婦同姓を定める民法750条は、憲法が保障する法の下の平等や婚姻の自由、女子差別撤廃条約に違反していると訴えていた。 

最高裁大法廷は判決で、民法の夫婦同姓制度は「社会に定着しており、家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位と捉えられ、その呼称を一つに定めることには合理性が認められる」と指摘。

「姓の変更を強制されない権利」は憲法が保障する権利とはいえず、また夫婦がどちらの姓を選ぶかは当事者に委ねられているのだから差別には当たらないと判断した。その上で、姓に関わる制度のあり方は「国会で論ぜられ,判断されるべき事柄」として、夫婦らの上告を棄却した。

2015年の合憲判決は、裁判官15人のうち10人の多数意見で決まったが、10人がいずれも男性で、3人の女性裁判官全員が「違憲」の立場だったことも注目された。

このうち、岡部喜代子裁判官(当時)は、「離婚や再婚の増加、非婚化、晩婚化、高齢化などにより家族形態が多様化している現在において、氏が果たす家族の呼称という意義や機能をそれほどまでに重視することはできない」と述べ、通称使用の広がりで「(改姓による)不利益が一定程度緩和されているからといって夫婦が別の氏を称することを全く認めないことに合理性が認められるものではない」と意見した。