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2021年07月04日 13時21分 JST | 更新 2021年07月05日 12時49分 JST

最近の中学入試がスゴい。難関校で「答えのない問い」が出題される理由とは?

例題「今まで算数を学んできた中で、実生活において算数の考え方が活かされて感動したり、面白いと感じた出来事について簡潔に説明しなさい」

ハフポスト日本版
2017年 駒場東邦中学校入試問題(算数)

 「今まで算数を学んできた中で、実生活において算数の考え方が活かされて感動したり、面白いと感じた出来事について簡潔に説明しなさい」

これは、難関校で知られる駒場東邦中学校の入試で出された算数の問題。

「これが算数の入試問題?」と思った人も多いのではないか。

この問題は、中学受験専門塾・日能研の電車内広告『シカクいアタマをマルくする。』シリーズでも取り上げられている。数多くの問題の中から、「良い問題だ」と思ったものがピックアップされている。

今、中学の入試問題は変わりつつある。出題傾向から教育の変化を追ってみた。

 

入試は0時間目の授業

冒頭の出題校である駒場東邦中学校は、出題意図について「自分で考え、答えを出す力を育む教育をしています。日々の勉強が日常生活にも繋がっているということを意識してもらいたいというメッセージを込めました」と語っている

それぞれの学校がどういう生徒を求めていて、どういう生徒を育てたいと思っているか、学校に入ったらどんな授業が待っているのか、入試問題には学校からのメッセージが込められているのだ。

この入試問題をピックアップした『シカクいアタマをマルくする。』のサイトには、以下のような解説が書かれている

「この問題は、算数に対する学び方の姿勢をダイレクトに問う問題と言えるでしょう。

(中略)入試のためだけでなく、入試の先にある『算数(数学)を学ぶ意義とは?』そんな問いをダイレクトに、かつ、大胆に受験生にぶつけてきた駒場東邦中のこの問題に敬意を表し、日能研では、この問題をシリーズに選ぶことにいたしました」

ただ与えられた問題を解くだけの受け身の姿勢ではなく、驚きや喜び、楽しさや面白さを感じながら算数を自主的に学んでいるかを見たかった。

『うちの学校では、そんな授業を実践しているよ!』という学校からのメッセージだ。言わば入試は、“0時間目の授業”とも言えるのだ。

最近の中学入試では、こうした「あらかじめ解答が用意されていない」「受験生の数だけ答えがある」問題が増えてきている。

それこそ、今人類が一丸となって解決しようとしている“模範解答などない”地球規模の課題、SDGsに関する問題も年々増えている。

 

ハフポスト日本版
提供:日能研。SDGsに関する出題数の推移。

スマートフォンで調べたら大抵のことがわかる時代、知識量を増やすことや、計算などの処理能力の速さは、もはや大事ではない。問題を複合的に考え、自分なりの解を出す能力が求められているのだ。

こうした中学の入試問題の変化と同調するかように、大学入試改革が進みつつある。

2021年度から大学入学共通テストが実施され、今後は知識問題だけでなく、知識に基づいた思考力や判断力、表現力などを評価するために、記述型問題を新たに導入しようという動きもある。

教育現場では一層、自分なりの答えを出す能力が求められていくだろう。それが社会に出てから必要な能力であることは言うまでもない。

wenjin chen via Getty Images
Pencil in light bulb, creative concept map

変わるべきは大人たちの姿勢

日能研にも取材を行った。日能研では、子どもたちに「“模範解答の顔色”を窺う必要などない、自分の答えを出そう」と伝えているという。

例えば、以下の入試問題。

(ベーシックインカムに関する文章を読んだ上で)「働かなくても生活をするために十分なお金が国からもらえるとしたら、あなたは働きますか?働きませんか?」(西武学園文理中学校の入試問題)

西武学園文理中学校は、出題意図について「今の世の中の問題は正解が一つとは限らない、あるいは正解らしい正解がありません。変化のスピードが早く、多様で複雑な社会に生きていく子どもたちに、『正解は一つとは限らない』ことに気づいてもらいたいと思い、このような形式の問題を出しました」と語っている

日能研の担当者は、その一方で、「『働くと答えることが模範解答だ』と思う子どもも悲しいことにいると思う」と話す。

「本当に大事なのは、あなた自身の考えはどうなの?ということです。10年前は大人たちの答えが模範解答だったかもしれないけれど、10年後には君の答えの方が『最適解』かもしれないよ、と。SDGsの問題に唯一の答えはありません」 

模範解答が先にあることが前提で、それを探り当てに行くような「従来型の学び」はもう有効ではないということだ。 

しかし、子どもばかりを責めてはいられない。 

常日頃から、夕食のメニューや休日に何をして過ごすか、大人が全て決めてしまっていないか? 

無意識に子どもたちに「大人の方が正解」「模範解答がある」と思わせてしまっているのは、大人たち自身なのかもしれない。 

「SDGsは教えるものではなく、考えてもらうもの。大人が子どもに教えるなんておこがましい。これまで大人たちが解決してこなかった、答えがあるのかすらもわからない問題や課題。君たちもどうか一緒に考えてくれないか、というスタンスで接するべきでしょう」(日能研・担当者) 

大人たちは「教育が変わらなければいけない」と叫ぶだけ叫んで、思考停止していないだろうか? 

子どもたちへの教育は変化しているのだ。答えのない問題に対して、必死に自分なりの答えを出している子どもたちが、10年後、20年後、一緒に働く仲間となる。その時に取り残されないためにも、大人たちこそアップデートしていかなければいけないのかもしれない。 

 

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