席を譲るのは「余計なこと」?断られても「選択肢あるのが大事」な理由【漫画】

作者の青鹿ユウさんは、声をかけてもらったことで、助けの手が取れる状況ではないとしても「ほっとする」経験をしたと振り返ります。

席を譲るべき?でも声をかけたら迷惑かも...

困っている人を見かけたときに、手助けをしたいと思う反面、「余計なことをしない方がいいかな...」とためらう人もいるかもしれません。

そんな人にとって、電車内で手助けの申し出を断られた時のエピソードを描いた漫画が、「声かけ」を考える上でのヒントになりそうです。

作者は青鹿ユウさん(@buruban)。3年前のある日曜日のこと。青鹿さんは、赤ちゃんの娘と、夫と電車に乗っていました。

娘を抱っこして座席に座っていた夫は、向かい側で赤ちゃんを抱っこしている女性に気づきました。お母さんとみられるその女性は、とてもオロオロしている様子でした。

その赤ちゃんは吐き戻してしまい、お母さんの服は大惨事に。両手に荷物を提げたまま立っていました。

夫から「あの人困っているみたい」と知らされた青鹿さん。席を譲ろうと、母親に近づき声をかけました。

電車内で、困ってる人に気づいた
電車内で、困ってる人に気づいた
青鹿ユウさん提供

「大丈夫ですか〜?荷物もったりしますよ!」

母親は、「だいじょうぶですので」と返します。

「拭くものだけでも...」と提案しましたが、再度断られたため、青鹿さんは「なんかあったらなんでも言ってくださいね〜」と伝えて家族のもとに戻りました。

すると、隣に座っていた乗客が、青鹿さんにこう伝えました。

「どうせああやって断られちゃうから 声かけたり席譲ったり 考えちゃうわよねぇ〜?」

「どうせああやって断られちゃうから」
「どうせああやって断られちゃうから」
青鹿ユウさん提供

そこで青鹿さんは、ふと思いました。

自分があのママさんと同じ状況だったら、どう思うだろう?

早くなんとかしないと。場所移動したい。赤ちゃん大丈夫!?注目されて恥ずかしい。服どうしよう--。

<きっと周りの手をとっさに受け取れないぐらい パニックなだけなんじゃないだろうか?>

私があのママさんと同じ状況だったら...
私があのママさんと同じ状況だったら...
青鹿ユウさん提供

隣の乗客は、「声かけられたくないかもだし 余計なことしないのが一番なのかもね〜」と続けます。

そこで、青鹿さんはこう伝えました。

「座る、座らない 頼る、頼らないの 選択肢があのママさんにあるコトが大切だと思うんですよ...!」

「選択肢があるってだけですごい救われるし 声かけてくれたら多分!うれしいと!思うし...っ!今じゃなくても落ち着いてから思ったり...!」

<かけた声や手が取られないこともあるけど 出来る限り『選択肢があなたにはある』と言っていきたいと私は思います>

「選択肢があなたにはある」と言っていきたい
「選択肢があなたにはある」と言っていきたい
青鹿ユウさん提供

「自分でなんとかしなきゃ」と焦り

青鹿さん自身、「周りの手をとっさに取れないくらいパニックになる」経験を何度もしたと言います。

「特に子どもが0歳の頃は育児初心者で、オロオロして対処もうまくできませんでした。にらまれたり舌打ちをされたりすることもあり、交通機関を使用する時はとても緊張することが多かったです」

子どもが2歳くらいになりイヤイヤ期に突入すると、0歳の時とは違ったパニックになることが多かったと振り返ります。

「『迷惑になってしまう』という思いが先にくると、とにかくその場から退散しなければと焦りました。申し訳ない、迷惑をかけているのではないか、とにかく自分でなんとかしなきゃ、という気持ちで焦り、さらに悪循環に陥ることもありました」

助けの手を取れなくても

以前は、手伝いを申し出た時に断られると「余計なことだっただろうか...逆に悪いことをしてしまった。何も言わず、見ないふりをした方がいいのかも」と思うこともあったという青鹿さん。

でも出産後、声をかけてもらえると、その助けの手が取れる状況じゃないとしても「とにかくほっとする」経験をしたと言います。

「『迷惑じゃないですよ、ここにいて良いですよ、見守ってますよ』と伝えてもらえているのと同じだと気づきました。一人で対処しなくてもいいんだよって選択肢を出してもらえるだけで、こんなに安心できるのかと知りました」

「声をかけるまででなくても、泣き止まない娘に四苦八苦している時もニコニコ笑いかける目線をくれたり、『あら〜良い声〜子どもは元気が一番よね〜』と独り言のようにつぶやいて通り過ぎてくださったり。そういう『この場にいてもいいよ、焦らなくてもいいよ』という意思表示をいただけることって、する側が思うより相手に大きく響くと自分が体験して初めて分かりました。その日中、その方の笑顔を思い出して救われる思いがしたことを覚えています」

断られる=「恥ずかしいこと」じゃない

隣に座っていた乗客から、「どうせああやって断られちゃうから」「余計なことしないのが一番なのかもね」と言われた時、どう感じたのでしょうか?

「出産する前は、声をかけて断られることで、傷ついたり恥ずかしく感じたりすることもありました。このご婦人も、私が落ち込んでいると思って、フォローするつもりで良かれと思って声をかけてくれたのだと思います。ただ、今の私は選択肢を提案することが目的なので、受け取ることも断ることも相手の自由だと考えています。なので、『断られること=恥ずかしいこと、とは捉えていませんので大丈夫ですよ』とこの方にお伝えした方が良いと思いました」

余裕のある範囲で

この漫画をシェアしたツイートには1万を超えるいいねが付くなど、反響が広がっています。

「漫画を見て『迷惑じゃなかったんだ!それなら今度も手助けの申し出をするね』と言ってもらえて、とてもうれしくなりました。声をかけられて『安心できたよ』という意見を、子育てをしている人たちから多く聞けたこともよかったです」

一方で、青鹿さんは「声をかけなければならない、手助けしなければならない、ということではない」と強調します。

「『断られたら傷つく』という人もきっといると思います。『声をかけて損した...』と思うことのないよう、余裕のある時に、余裕のある範囲でするのが良いと私は考えています。もし何かしたいけど、断られるのは嫌だな...と思われる人がいたら、笑顔を見せるなど、『焦らなくても大丈夫ですよ、迷惑と思ってませんよ』という意思表示をしてもらえたらとてもうれしいです」

◇ ◇

青鹿(あおしか)ユウさん

漫画家。子育てに関することのほか、アレルギーなど医療をテーマにした漫画を制作している。