アートとカルチャー
2021年09月26日 11時14分 JST

「天国から見てくれてるよ」が苦しかった。亡き母の友だちの温かい言葉に救われた話【漫画】

作者のさゆりさんは「母は亡くなったけど、生きていたこと、それを思い出すことは決して悪いことではないんだと感じました」と言います。

生前の母の友人と再会した時に受け取った、優しい言葉に救われた思いがした。心温まるエピソードを描いた漫画に、反響が広がっています。

作者はイラストレーターで漫画家のさゆりさん@NANASHIORI)。それは、数年前の出来事でした。

子どもの頃同じ保育園に通っていた「ゆう君」のお母さんと、偶然スーパーで再会しました。

さゆりさん提供
同じ保育園だった「ゆう君」のお母さんと、母とよく行ったスーパーで再会した

「お久しぶりです」

「元気そうで良かったー!!」

顔を合わせたのは母の葬儀以来で、約3年ぶりでした。

さゆりさん提供
母の葬儀以来だった

ゆう君のお母さんは、さゆりさんのお母さんとの思い出を語り始めます。

「...私ねぇ、この辺に引っ越して来た時、ずっとひとりぼっちでさ...」

さゆりさん提供
ゆう君のお母さんは、引っ越してきたばかりの頃の思い出を語り始めた

<知らない土地で、友達も知り合いも全然いなくて 一人で子育てしながら

ずっとずっと 寂しかった>

そんな時に出会ったのが、さゆりさんのお母さんだったそうです。

さゆりさん提供
寂しかった時、出会ったのがさゆりさんのお母さんだった

「お兄ちゃん、もしかしたらうちの娘と同い年かも!!」

さゆりさん提供
初めて出会った日のこと

さゆりさんのお母さんは、ゆう君に「もし暇ならこれから遊ぶ?」と声をかけます。

「お母さんもどうぞ」

<本当にすごくうれしかった>

 

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「もし暇ならこれから遊ぶ?」

ゆう君のお母さんにとって、さゆりさんのお母さんは「初めてのママ友」でした。

「それからお母さんにはいっぱい助けてもらったんだよ」(ゆう君のお母さん)

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初めてのママ友だった

「今も、こうやって買い物してたら『久しぶり』って また...会えるんじゃないかって....」

さゆりさんは、お母さんが亡くなってから色んな人に「天国から見てくれてるよ」と言われることが辛かったと言います。

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「また...会えるんじゃないかって...」

母は、みんなにとって「死んでしまった人」になったんだと感じてしまうからでした。

ですが、「また会いたい」というゆう君のお母さんの言葉がとてもうれしく、温かい気持ちになったといいます。

さゆりさん提供
「また会いたい」の言葉がうれしかった
さゆりさん提供
「元気でね」「ありがとう」

 

「母に会いたい」の一言が救いに

ゆう君のお母さんから、「初めてのママ友だった」「お母さんにいっぱい助けてもらった」と聞いたとき、さゆりさんは「とても意外でした」と振り返ります。

「いつも母と笑っている姿しか見たことがなく、スーパーで(母と)出会うと『久しぶりー!!』から始まり、私やゆう君が『もう帰ろうよー』なんて言うくらい話し込んでいたり(笑)」

「いつも笑って遊びに来てくれたけど本当は色々悩んでたんだなぁと、話を聞いて初めて気づきました」

また会いたい。

ゆう君のお母さんにそう言われた時、さゆりさんは「今もこの人の中では私と同じ、声が大きくて、よく笑って、背中をポンと叩くあの母の姿があるんだなぁ」と感じたと言います。

「私の家族や周りの人は、母の話をしなくなりました。父は思い出すのがつらいからと、母の服を全部捨てました。そんな中、この人は母に会いたいと言ってくれた。それがとても救いになりました。もう二度と会えないのは分かってるんですけど、私はどうしても『天国にいる人』に思えなくて。ずっとずっと苦しかったんです」

「ゆうくんのお母さんに会って話を聞いて、母は亡くなったけど、生きていたこと、それを思い出すことは決して悪いことではないんだと感じました。周りに気を使わなくてもいい、思い出したい時に母を思い出せば良いんだ。それは心の中で生きているのと一緒だと思いました」

 

「読んだ人がどう思うか」より大事にしたこと

このエピソードを、なぜ描こうと決めたのでしょうか。

さゆりさんは、「自分の気持ちに正直になりたかったから」と明かします。

「今まで漫画を描くときは『読んだ人がどう思うか』を考えて描いてました。でも、編集者の方とお話をする機会があって、別の漫画を読んでもらった時に『あなたはこの作品をどんな思いで描いたのか?』と質問されて、何も答えられない自分に気がつきました。自分の感じたままの気持ちを言葉にして描きたいと強く思いました。<母が亡くなってから、色んな人に『天国から見てくれてるよ』って言われるのが辛かった>というセリフは、読んだ人が辛くなるかもしれないけど、絶対に描きたいと思って描きました」

漫画をシェアしたツイートは、1万以上のいいねがつき、大きな反響が寄せられています。

「本当に嬉しかったです。『思い出すきっかけをくれてありがとう』とコメントをもらった日は嬉しくて泣きました。私と同じ気持ちの人がいて、その人がこの漫画を読んで少しでも救いになったんだ...と、描いて良かったと思いました」