「浦島太郎のカメはオス?メス?」 ココリコ田中さんが特別授業に登場 こどもたちが笑顔で学んだ深刻な危機【SDGs】

笑いを通じてこどもたちに地球温暖化や海洋ゴミの問題を伝える活動があるのを知っていますか?全国の小中学校に出前授業を届ける「海の落語プロジェクト」。エンターテインメントの力を生かしたSDGs学習の現場を取材しました。
小学4年生の答えに耳を傾けるココリコ・田中直樹さん
小学4年生の答えに耳を傾けるココリコ・田中直樹さん
篠塚健一

「『浦島太郎』に出てくるカメは、果たしてオスでしょうか、メスでしょうか」

お笑いタレントのココリコ・田中直樹さんの出すクイズに、4年生の児童60人の答えは割れた。東京都足立区の千寿本町小学校で12月7日に開かれた出前授業の一コマだ。

「正解は……メスです」

喜んだこどもたちから大きな歓声が上がる。田中さんはやさしい口調でこう語りかけた。

「浦島太郎を背中にのせて竜宮城に向かう絵を見たことがあると思います。砂浜でウミガメの赤ちゃんとして産まれて海で生活して、浜に上がってくるのはメスだけなんです。メスは陸で卵を産みますが、オスは海に入ったら上がってくることはないと考えられるので、正解はメスです」

今度はジンベエザメが産む赤ちゃんの数は? 生き物好きの田中さんのクイズは続き、うなずきながら興味津々な様子のこどもたち。そこで環境専門家の井手迫義和さんが、こう投げかけた。

「田中さんの詳しい海の生き物たちが温暖化やゴミの問題で大変なことになっています」

なにげなく捨てられたゴミが川を流れて海へ。たくさんの生き物たちが暮らす海を汚しているゴミの多くは街で出ているーー。その現実をクイズを交えて伝えると、井手迫さんは「絶対にこれからの人生、ポイ捨てはしないようにしてくれよな~」と呼びかけた。サブに回った田中さんは「うんうん」「あれ~」……。話の展開に軽やかに反応して、こどもたちの集中力を途切れさせなかった。

落語で笑いながら知る「2050年の海」

出前授業は日本財団「海と日本プロジェクト」の一環で、2018年に始まった海をテーマとする落語を携えて小学校などを回る。この日は「未来の水族館」と題した一席を落語家の三遊亭朝橘(ちょうきつ)さんが最初に披露した。

新作落語「未来の水族館」を演じる三遊亭朝橘さん。地球温暖化の進んだ2050年の激しい風雨を体験する場面
新作落語「未来の水族館」を演じる三遊亭朝橘さん。地球温暖化の進んだ2050年の激しい風雨を体験する場面
篠塚健一

男女のカップルが訪れた完全予約制の水族館。一見なんの変哲もないが、足を踏み入れると、そこに再現されているのは「2050年の海」だ。

「クサい、すごくクサいんだけど!」

地球温暖化による水温上昇で、煮えて死んでしまい悪臭を放つムール貝。北極の厚い氷は消えており、住んでいたシロクマの姿はない。そして、見慣れた日本地図の形も変わっている。

「ないない、おれの街がない」「この地図、どうなってるんですか?」

「2050年、そのあたりは海に沈みます」

「えっ!沈むの?」「なんで?」

「氷が溶けたら海の水が増えるからその分、海面が上昇してくるんですよ。住むところなくなっちゃうのシロクマだけじゃないんですね」「クマッちゃいますね!」

テンポの良いしゃべりに、ドッと笑いがわく。

「全部、人間のせいです」

そう説明する台詞が、あるべき行動に気づかせていく。

「人間のするいろんなことで温暖化は進むんですよ。ガソリンで車を走らせたり、石油や石炭で電気を作ったり、ゴミを燃やしたり。それからお肉のために牛とか豚を飼ったりするでしょ。いろんなことで温室効果ガス、特に二酸化炭素が発生するのが温暖化の原因です」

「電気で走る自動車を作ったり、その電気にしても無駄遣いせず節電する。ゴミを減らす。そういう努力をしないとダメですねえ」

地球の面積の約7割を占める海。落語で語られた未来はペットボトルやレジ袋が細かくなった「マイクロプラスチック」がたまり、ウミガメの首にはビニールのゴミが巻き付いている。そして、温暖化の影響で大きな台風がいくつも発生する。悲惨な光景を描きながらも、朝橘さんの話術にこどもたちの表情には笑みと真剣さが交互に現れていた。

45分の授業。終わりを告げられると、「エーッ」と残念がる声が。「30年後のことなんて知らなかった」「楽しくて勉強になる」「これからは公園に落ちているゴミを拾って捨ててあげたいな」と、こどもたちは口々に感想を話した。

環境専門家の井手迫義和さんのクイズに元気よく手を挙げて答える児童たち
環境専門家の井手迫義和さんのクイズに元気よく手を挙げて答える児童たち
篠塚健一

こどもたちとの記念撮影にもおさまった田中さんは「芸人なので、楽しくおもしろおかしくメッセージを発信していけたら。まずは現状を知ることが大切だと思います」。井手迫さんは、環境問題をこどもたちに教えるポイントは「友だち感覚」にあると話す。

「堅くて眠たくなる環境教育は違うんです。こどもたちとほぼ対等、友だち感覚で。地球温暖化は本当にヤバい問題です。こどもたち自身がもっと勉強したくなるようにと思ってやっています」

迫り来る海の危機を、自分たちの問題として受け止めるためのアシスト役を果たす取り組み。エンタメを活用した出前授業は、大人たちのSDGsへの理解とこどもたちとの向き合い方も問いかけている。

ハフポスト日本版がSDGsをテーマにお届けしているライブ番組「ハフライブ」。今月は地球を持続可能にするために欠かせない海や陸、その豊かさを支える「生物多様性」について掘り下げます。生物多様性の喪失は、ビジネスや金融の世界でも「経営上の重大なリスク」として危機感が高まっています。その最前線の動きを通して考えます。

<番組概要>

配信日時:12月20日(月)夜9時~

Twitter: https://twitter.com/i/broadcasts/1nAKEYlqmelKL

YouTube:以下よりご覧いただけます。

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