「性的同意」を中高生に伝えるハンドブックができた理由。傷つけず、傷つかないために今知ってほしいこと

性的同意や性暴力に関するハンドブックを、NPO法人「mimosas(ミモザ)」が作成。そこには、10代の子どもたちが「被害者にも加害者にもならないように」との願いが込められていました。
mimosasは若い世代に向け、性被害や性的同意に関する情報を発信している
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「性的同意」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

ボディータッチやキス、性的な言葉かけ、性行為といったあらゆる性的な言動について、その行為を積極的にしたいと望む互いの意思を事前に確認することを指します。

相手の同意なく性的な行為をすることは、性暴力になります。

こうした性的同意について10代のうちに知る機会がないことで、性暴力の被害に遭っても被害と認識できないまま自分を責めたり、加害者になってしまったりする現状があるのではーー。

そんな問題意識から、性的同意や性暴力についてわかりやすく伝えるハンドブック『MIMOSAS BOOK-あなたが傷つかないための性の本』が作られました。

制作したNPO法人『mimosas(ミモザ)』のメンバーに、冊子に込めた思いを聞きました。

性的同意に必要な「3つの条件」

MIMOSAS BOOK
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mimosasは「知ることで変えられる未来がある」をモットーに、性被害や性的同意に関する情報を若い世代の人たちに届けることを目指して活動するメディア。

ハンドブックは、性暴力の被害者支援に取り組む弁護士や公認心理師の監修のもと作られました。大きく分けて「性暴力とは」「性被害にあったらどうすればいいの?」「性的同意って何?」の3つの柱で構成しています。

「性暴力とは」の章では、レイプだけでなく電車内での痴漢や「ノリ」で胸を触るといった、同意のない性的な言動全てが性暴力であると説明。さらに、交際中のパートナーとの間でも性暴力は起きること、SNSを通した性被害もあることを伝えています。

冊子の構成や文章を担当した伊藤まりさんは、「痴漢を含め性被害があまりに社会にありふれていて、そもそも被害を被害と認識できないケースは多い。被害を受けた後、専門機関への相談やカウンセリングといった対処につなぐためにも、まずは性暴力とは何かを知ってもらえたら」と話します。

性的同意に必要な「3つの条件」として、冊子では次のように示しています。

1)NOと言える環境が整っている

2)「立場の差」がない対等な関係である

3)どのタイミングでもNOと言える

その上で、「デートに行く」「付き合っている」「相手の家に行く」といった行動・関係性自体は性的な同意を意味せず、その都度同意が必要であることを解説しています。

それではどんなとき、どのように性的同意を取れば良いのでしょうか?

ハンドブックでは、初めてのデートやパートナーの自宅にいるときなどのシチュエーションで、同意を確認する具体例を挙げています。

「いやだったらいつでもいやって言って大丈夫だからね」と、相手が安心して断れる声かけをしたり、「あなたのことは大好きだけど、今日はあんまり気分じゃないかな」と伝えたりすることを例示しました。

相手の意思を確認する習慣がなかなか根付かない背景について、メンバーの伊藤ミナさんは「性的同意に限らず、例えば『おい』という一言で父親が母親を呼び寄せるような、コミュニケーションを怠る文化があります」と指摘します。

「立場の強い人が弱い人に対し、『察して受け入れて、それに応える』ことを強いる文化が普段の生活からある。その結果が、性的同意のない性被害を生む土壌になっているように感じます」(伊藤ミナさん)

被害者にも加害者にもなってほしくない。その思いから、ハンドブックには「相手の気持ちや体調を気にしたことがない」「『NO』と言ったら、きらわれるかなと思う」など、誘う側や誘われる側の同意チェックリストも掲載しています。

性被害を受けたときの相談先リストや、受けられるケアなども収録しています。

中学から「性的対象」と見られるように

mimosasのメンバー。(右上から時計回りで)横井桃子さん、伊藤まりさん、額宮瑞希さん、伊藤ミナさん
mimosasのメンバー。(右上から時計回りで)横井桃子さん、伊藤まりさん、額宮瑞希さん、伊藤ミナさん
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ハンドブックは、主に中高生が手に取ることを想定して制作されました。

その理由を問うと、メンバーの横井桃子さんは自身の体験を振り返りました。

中学生になった途端、痴漢など性被害を受けたと同級生たちから聞くことが多くなり、私自身も『性的対象』として見られるという経験が増えるようになりました」

一方で、学校の教員から言われたのは「女の子だから気をつけなさい」「4月は変な人が多いから気をつけてね」という、被害者にならないための注意喚起だったと明かします。

「『気をつけなさい』としか言われなかったので、当時は性被害に遭った自分を責めるようになりました」

その後大学で性的同意について学び、横井さんは「自分にはNOと言うパワーがあり、自分の体は自分のもの」と理解できたといいます。

「もっと早く知っていたら、自分を責めずに中高生時代を過ごせた気がします。だから今の10代の子どもたちには性的同意のことを絶対に知ってほしい。それは自分の権利について学ぶことであり、自分や相手のバウンダリー(境界線)を尊重することになるんです」

Five via Getty Images

性暴力はどんな状況であっても「被害を受けたあなたが悪い」ということは絶対にないということ。「夜道を歩いていたから、派手な服を着ていたから、被害を受けても仕方ない」というような被害者を非難する言動は二次加害であることを、冊子では強調しています。

全ての中高生がアクセスできるように

図書館や保健室など、全ての中高生たちがアクセスしやすい場所にハンドブックを届けようと、mimosasはクラウドファンディングでサポートを募っています。集まった寄付は、ハンドブックの制作費や送付代、人件費などに充てられます。

すでに17の学校・団体からハンドブックの提供依頼が寄せられているといいます(3月11日時点)。

額宮瑞希さんは、「多くの中高生は学校というクローズドなコミュニティにいます。性的同意や性暴力について知らないことで、誤って被害者を責めてしまうような価値観が友達どうしで大きくなってしまう。その前にハンドブックでストップをかけられたら」と呼びかけています。

(取材・文=國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)