博士号取得のお祝いは「剣」だった。闘病しながら研究を続けた妻にプレゼント【画像集】

「固定観念にとらわれたありきたりな花束ではなく、特別なものを贈りたい」という夫の思い

自らの背丈と同じくらいの長さがあるという堅牢そうな剣を構え、精悍な表情や笑顔を見せる女性の写真が、ネット上で話題になっている。

5月3日にTwitterに剣との「ツーショット」の写真を投稿したのは、Elizabeth Dworak(エリザベス・ドウォラック)さん。

Elizabeth Dworakさんは博士号取得のお祝いに夫から剣をもらった
Elizabeth Dworakさんは博士号取得のお祝いに夫から剣をもらった
Elizabeth Dworakさん

投稿は「私と夫はフィンランドの博士号取得者が剣を手に入れることを知りました。私が博士号(ドクター)を取得した今、夫は私のための『ドクターズ・ソード』で私を称えることに決めました」とコメント。11日時点で1400件のリツイートと8100件の「いいね」で祝福された。

このツイートが日本でも話題になり、「めっちゃかっこいい」「フィンランドで博士号取ればよかった」「北欧に憧れる理由がまた増えてしまった」と日本語でうらやむ声が相次いだ。

夫から剣をもらった瞬間は「有頂天で涙が出そうだった」
夫から剣をもらった瞬間は「有頂天で涙が出そうだった」
Elizabeth Dworakさん

フィンランドの「ドクターズ・ソード」とは?

Elizabethさんがツイートで言及したように、フィンランドでは博士号取得者が学位授与式で剣を携えることがあるようだ。国内最大の公立大学であるオウル大学のホームページでは、剣は「博士号取得者の勲章」だと説明されている。

「ドクターズ・ソードは、科学者が厳しい研究の末に見出した、良いもの、正しいもの、真実のために戦うことの象徴です」

「フィンランドでは、授与式で使用できる剣は、フィンランド独立共和国の公認の(軍用ではない)剣のみです。黒または金色のクリップと、金色の大学章が付いた鞘が付属しています」

オウル大学の学位授与式では、博士号取得者は男女問わず剣を携えることが義務付けられているという。

博士号取得者はさらに、「学問と研究の自由のシンボル」でもあるという帽子(ドクターズ・ハット)を式典でかぶるという。形は丸く、大学や分野によって、帽子の形やエンブレムが異なる場合があるそうだ。

なお、オウル大学ではドクターズ・ソードもドクターズ・ハットも、大学が学生に贈るわけではない。博士号取得者が自分で注文して購入する必要がある。貸りた剣や帽子で式典に出ることもできるそうだ。

「ありきたりな花束ではなく剣を」

ハフポスト日本版は、剣を手に入れたElizabethさんに取材した。

実はElizabethさん、フィンランドとは縁もゆかりもなかった。Elizabethさんの生まれ育ちはアメリカで、現在はシカゴに住んでいる。

ノースウェスタン大学で心理学を学ぶ29歳。個人の性格や興味から健康や人生の行方を予測する研究に携わる。博士課程5年目を終える6月、ついに博士号(Personality, Development, & Health Psychology)を取得する予定だという。

Elizabethさんが卒業するノースウェスタン大学
Elizabethさんが卒業するノースウェスタン大学
FierceAbin via Getty Images

剣をくれたのは夫だ。

Elizabethさんが博士課程に進学してまもない頃、フィンランドでは博士号取得者が式典で剣を携えることを、夫婦でネット上の記事で読んで知った。月日がたち、Elizabethさんはその記事をすっかり忘れていたものの、ひそかに覚えていた夫。Elizabethさんの博士論文が受理された記念に「固定観念にとらわれたありきたりな花束ではなく、特別なものを」と考え、剣を贈ることを決めたという。

剣をもらったとき、Elizabethさんは「有頂天で涙が出そうだった」そうだ。

「300ページもある博士論文を書き上げた5年間の努力に対する祝福として、自分の背丈とほぼ同じくらいの長さの剣を手渡され、とてもうれしかったです」

今は自宅のElizabethさんのデスク近くに剣を保管しているが、夫はElizabethさんの研究室に飾ってほしいと考えているそうだ。「研究室を訪れた人に、剣のことを尋ねてもらえたら」と願っているのだという。

突然患った病気、研究もままならない日々

博士号を手にするのは容易ではなかった。研究の難しさだけでなく、博士課程3年の夏に体調を崩し、とある自己免疫疾患だと診断されたことが、道のりをいっそう険しくさせた。

「診断後の2年間は、研究から一歩下がり、自分の健康を優先させていました。罪悪感や不安がありました」

入院したこともあった。闘病で研究がままならない歯痒い日々を支えたのは、夫や指導教官だったという。

「夫はいつも私に寄り添い、私の苦しさに共感してくれました。ときに休息を取ることを思い出させてくれ、通院にも力を貸してもらいました。

指導教官はつねに私の研究よりも健康を優先して考え、さまざまな締め切りについて、柔軟に、忍耐強く、調整を重ねてくれました。大学が大学院生の義務としている業務については、在宅で勤務できるように便宜を図ってくれました」

ただならぬ苦境に立たされながら博士論文を書き終えたElizabethさん。夫の「固定観念にとらわれたありきたりな花束ではなく、特別なものを贈りたい」という思いは、そんな妻の姿をそばで見守っていたからこそ抱かれたのかもしれない。

Elizabethさんは7月、ノースウェスタン大学医学部の助教に就任する予定だ。高齢者の健康に関心を持っているといい、「個人の性格や興味などと認知機能の低下の関連性を調べて、認知症の早期発見につながる研究をしていきたいです」と話している。

いつか教え子に剣を

Elizabethさんは「侍が先祖代々、刀などの家宝を受け継ぐ」といった日本の伝統のイメージにあこがれを抱いているという。

「将来、自分の子どもが博士号を取得することになったら、『家伝の刀』を贈ろうと夫と話しています。いつか私が大学院生の指導をする教員になったときには、博士論文を提出した教え子にも、剣をプレゼントしたいです」

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