ある女性がパートナーと付き合って結婚し、その2人が育てた子どもが結婚するまでのストーリー。隠されていた事実が最後に明らかに――。
性の多様性や家族のあり方を描いた作品が「ものすごい技術」「とても素敵な作品です」などとTwitterで話題を呼び、60万件を超える「いいね」がついています。
作品を投稿したのは、紙工作でさまざまなストーリーを表現する「工作漫画家」として活動している「しんらしんげ」(@shin___geki)さん。5月29日に「愛する日々」と名付けられた1分31秒の動画を投稿しました。ノートのページをめくっていくと、登場人物の表情が変化する仕掛けが施されており、あるストーリーが展開されていきます。
■愛する日々
物語はある女性が告白されるところから始まります。その後、交際を経て2人は結婚。
男の子の赤ちゃんを育てることになった2人。時には口論になることもありつつも、子どもを育てていきます。
すっかり成長した子どもが親にパートナーとして紹介したのは男性。2人は結婚し、親元から離れることに。
そして物語の最後に写し出されるのは女性の結婚や子育てなどこれまでの写真が載っているアルバム。その写真を見ると主人公の女性の隣に立っているのは男性ではなく女性。
女性2人が一緒にアルバムを見返している様子で物語は締めくくられます。
この投稿には「ストーリーも、その技術も素晴らしいです」「すごく素敵な家族の物語ですね」「当たり前だと思ってたことは当たり前じゃないんだと、考えさせられました」など多くのコメントがつきました。
また、物語の最後に女性のパートナーが女性だと分かることについても「よく見ると序盤の方からヒントがあったんですね」などとコメントが寄せられています。
また同性カップルは里親制度で子どもを育てることが可能なものの、特別養子縁組は法律婚の夫婦に限定されており、同性カップルは利用できないのが現状です。公益社団法人Marriage For All Japanも、この作品で特別養子縁組のポスターが一瞬写る描写について「今の日本では、この物語のカップルには決して認められていないこと」とツイートしています。
■価値観を押し付けるのではなく
ハフポスト日本版は、この作品を投稿したしんらしんげさんに取材をしました。以下は一問一答です。
――なぜ、このテーマを選ばれたのでしょうか? そして、この作品を通して伝えたかったことは何ですか?
自分自身も固定観念で気づかないようなものがあって、人が持ってる固定観念を利用して作品を作ろうと思いました。
――創作の際に苦労された点は何でしょうか?
絵をL字型に折り曲げてるので絵を歪ませて作っており、正面から撮ることで絵が整うようにしています。
全部の絵をこれらの形で作るのが大変でした。
――計算された仕掛けが特徴的ですが、制作にどのくらい時間がかかっているのでしょうか?
時間は計算してないのでわからないですが100時間以上はかかっていると思います。
――多様な性のあり方を描く際に気を付けたことはありますか?
価値観を押し付けるのではなく、こういったかたちもあるよねというかたちで作るようにしています。
――普段はどのようなテーマで制作しているのでしょうか?
テーマは決めていないのですが、毎回何か驚きがあるような作品を作ろうとは心掛けています。
――今回の作品には67万6千件を超える「いいね!」が付くなど大きな反響が寄せられていますが、どのように感じていらっしゃいますか?
想像以上で驚きました。内容がしっかり伝わるか心配でしたが、2回3回見て理解できたという人もいてネットの動画という何度も見直せるコンテンツと合っていたと思います。
――多くの人から感動したというコメントが寄せられていますが、読者に向けて何かメッセージはありますか?
自分の作品は言葉のないものがほとんどで、自分自身も内容の解説はしないです。
あえてこちらからはメッセージなどは言いません。
作品を見た人がそれぞれ感じたことがメッセージだと思って頂ければと思います。