アイドル自死、東京高裁が遺族側の控訴棄却。東京地裁が「契機を明らかにすることは困難」と請求を棄却していた【UPDATE】

遺族が当時の所属事務所を相手に、女性が自殺したのは過重労働などの一連の行為が原因だと訴えていた。

【UPDATE 2022/12/22 12:20】この訴訟の控訴審判決が2022年12月21日に開かれ、東京高裁は請求棄却を言い渡した一審・東京地裁判決を支持し、遺族側の控訴を棄却した。遺族と当時の所属事務所のそれぞれの代理人弁護士が、公式サイトなどで発表した。

愛媛県のご当地アイドルグループメンバーの16歳の女性が自殺したのは、過重労働などが原因だとして、遺族が当時の所属事務所の代表者らに損害賠償などを求めた訴訟の判決が6月9日、東京地裁であった。島崎邦彦裁判長は、遺族の請求を棄却した。

判決文によると、原告側は、事務所側が女性に過重な活動をさせるなどして、正常な認識が著しく阻害される精神状態にさせたなどと主張。事務所側が女性に「グループを続けないのであれば違約金1億円を支払え」という趣旨の発言をしたとして、一連の行為の影響で女性が自死したと、違法性を訴えていた。

被告側は、女性の活動内容や時間は「特に過重なものではない」と反論。「違約金1億円を支払え」という発言について「した事実はなく、女性がそのように受け取るような趣旨の発言をした事実もない」と否定していた。

女性はアイドルグループのメンバーとして活動中だった2018年3月、自ら命を絶った。

判決は、レッスンやイベント以外の時間の女性と事務所側の連絡とやりとりの内容に触れ「(女性が)精神的な負担を感じていたことを窺わせるものではなく、グループにおける活動時間及びその内容が精神的負荷を受けるほどに過重であったとまでは認められない」と指摘。

グループ活動による精神的負担を示すやり取りが見当たらないとして「グループでの活動により、正常な認識等が阻害される程度の強い精神的負荷がかかっていたとは認められない」と認定した。

「違約金1億円を支払え」という発言については、そう言われたと女性から打ち明けられたという証言に触れる一方で、被告側が一貫して、発言自体を明確に否定していることにも言及。

「証人の供述の他に、発言がされたことを的確に示す証拠はない。供述などによっても、被告がいかなる経緯ないし文脈で上記の発言をしたかは具体的に明らかではない」と認定しなかった。

その上で「これらの行為が女性を自死に至らしめる違法行為又は安全配慮義務違反に該当するものとは認められない」と判断。「自死を決断した直接的な契機を明らかにすることは困難であるといわざるを得ない」と結論づけた。

判決を受けて、被告である所属事務所の代表者は「本日言い渡された判決は、弊社の社員やグループのメンバーが生前の女性に真摯に向き合っていたことを、裁判所に認めていただいた結果であると考えております」というコメントを発表。

原告である遺族は弁護団を通じて「今後、弁護団の先生方と相談した上で控訴して、私たちの主張が認められるようにしていきたいと考えています」とコメントを出した

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