原発事故で国の責任を認めず。賠償義務は東電のみ【最高裁判決】

「国策民営」で進められた原発で起きた事故に対する責任のあいまいさが、改めて浮き彫りになった。
最高裁に向かう原告団=2022年6月17日午後1時15分、東京都千代田区、福留庸友撮影
最高裁に向かう原告団=2022年6月17日午後1時15分、東京都千代田区、福留庸友撮影
朝日新聞

原発事故の国の責任、最高裁が認めない判決 賠償義務は東電のみ

2011年3月の東京電力福島第一原発事故で被害を受けた住民らが国に損害賠償を求めた4件の集団訴訟の上告審で、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は17日、国の責任を認めない判決を言い渡した。賠償義務は東電だけが負うことになり、後続の同種訴訟でも国の責任は否定されていくとみられる。

「国策民営」で進められた原発で起きた事故に対する責任のあいまいさが、改めて浮き彫りになった。

■全国で32件の訴訟 約1万2千人が原告に

東電と国を訴えた集団訴訟は全国で32件起こされた。約1万2千人の住民らが原告となり、事故で避難を余儀なくされたり、平穏な生活ができなくなったりしたと主張して、国が定めた賠償の基準「中間指針」を超える計約1100億円の賠償を求めた。

第二小法廷は今回、先行して進んだ福島、群馬、千葉、愛媛の4訴訟について判断。まず東電に対しては3月、約3700人の原告に計約14億5千万円の追加賠償を確定させた。

一方で国の責任については、高裁判決のうち福島、千葉、愛媛の3件が認めたが、群馬は認めなかった。最高裁はこの日の判決で統一判断を示した形だ。

原発で事故が起きる恐れがある場合、経済産業相は電気事業法に基づいて「修理や改造、使用の一時停止」などの命令を電力会社に出すことができる。裁判では、国がこうした権限に基づく規制を怠ったことが国家賠償法上、違法と言えるかが争われた。

原告側は、国の地震調査研究推進本部が2002年に公表した地震予測「長期評価」をもとに、「国は福島第一原発の敷地の高さを超える津波の到来を予見できた」と主張した。そのうえで「規制権限を行使して、設備の浸水対策や防潮堤の設置などを東電に進めさせれば、原発事故は回避できた」と訴えた。

一方、国側は長期評価について「専門家からは懐疑的な意見が多く、原発の規制に採り入れるほどの精度はなかった」と信頼性を否定し、巨大津波は予見できなかったと反論した。仮に防潮堤などの対策を講じたとしても、「実際に起きた津波の規模は桁違いで、事故を防ぐのは不可能だった」とも主張していた。(根岸拓朗)

(朝日新聞デジタル 2022年06月17日 14時41分)

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