政治家を目指す女性を支援。「パブリックリーダー塾」が塾生募る。現職議員の講義、100万円の支給も

女性の政治参画への高いハードルが課題となる中、「パブリックリーダー塾」のプロジェクトは、“普通の女性たち”が政治家になることを後押しする試みだ。
「パブリックリーダー塾」発足の記者会見
「パブリックリーダー塾」発足の記者会見
提供:村上財団

日本の政治分野におけるジェンダーギャップの解消が世界から大きく遅れをとる中、政治家を目指す女性たちを支援するプロジェクト「パブリックリーダー塾」が立ち上がり、塾生の募集をスタートした。

プロジェクトを主催するのは、社会課題の解決に向け活動する非営利団体への寄付や助成に取り組む「村上財団」

8月4日の記者会見で、財団の村上玲・代表理事は「日本の社会課題は多様化しているにも関わらず、政界は多様化していません」と指摘。「選挙にチャレンジする女性に、政治や選挙に関する学習機会の提供や経済支援を行い、参加者同士が励まし合えるコミュニティーを構築していきたい」と、プロジェクトに込めた思いを語った。

「共働きをしながらキャリアを構築している方、子育てや介護に奮闘する方、シングルマザーの方、社会貢献事業を行っている方、夢を追いグローバルで活躍している方、日本社会を変えたいと思って勉学に励む方。こういった“普通の女性”が選挙にチャレンジするハードルを、少しでも下げられれば」

応募の要件は?

「パブリックリーダー塾」では、政治家を志す10〜30代の女性(性自認が女性の方も含む)を公募し、書類審査と面接審査を経て10〜20人程度を選出する。

選考のポイントは、以下の3つ。

・将来のリーダーとしての明確なビジョン

・ジェンダーギャップをはじめとした、日本の社会問題に対する問題意識

・グローバルな視点や経験

応募者の政治思想や支持政党は問わない。今後立候補を目指す選挙は、国政・地方政治のいずれも可能という。

選考を通過した塾生は、現職の国会議員らによる講義の受講(2022年11月〜2023年3月、全9日)のほか、キャリア形成のための費用として100万円が支給される。

このほか、居住地が遠方の場合は対面授業への出席にかかる交通費の支給や、講義会場での託児サービスも提供するという。

女性の政治参画への高いハードル

Yuki Takada/ハフポスト日本版

世界経済フォーラムが発表する、男女格差の大きさを国別で比較した「ジェンダーギャップ指数」(2022年)で、日本は146か国中116位だった。政治分野はさらに遅れを取り、139位との結果になった。

7月の参院選では、当選者に占める女性の割合は28%となり過去最多となったものの、最大与党である自民党は2割にとどまるなど、政党間での差が目立った。

2021年10月の衆院選では、当選者に占める女性の割合はわずか9.7%で、前回(2017年)の10.1%から後退した。

女性の政治参画のハードルが高い背景には、「政治は男性がするもの」という性別役割分業の意識が社会に根強いことや、男女の経済格差、子育てしながらの政治活動の難しさといった課題が指摘されている。

与党を中心に、政党が現職の男性議員の支援を優先し、女性候補者を立てることに消極的であるという課題もある。

今回のパブリックリーダー塾では、養成プログラムを通じて立候補のハードルを下げることで政治の場に一人でも多くの女性を送り出し、多様な政策立案を促したり、取り組まれてこなかった社会課題を解決に導いたりすることを目指す。

生活を犠牲にすることなく、政治家になれるように

村上玲さん(右)と、白井智子さん
村上玲さん(右)と、白井智子さん
提供:村上財団

審査員の一人で、不登校の子どもたちの支援に長年取り組んできた「新公益連盟」の白井智子・代表理事は、これまでに周囲から何度も選挙に立候補するよう声掛けがあったものの、断り続けてきたと自身の体験を明かした。

政治家を志さなかった理由について、「社会起業家としてロビー活動する中で、特に教育に関して政治家と話が通じない場面が多かった。数の論理が通用する政治の世界で、女性として政治家になっても、『教育を良くする』という目標の実現まで非常に時間がかかりそうだと思った」と振り返った。さらに、女性議員へのハラスメントの問題も不安に感じたという。

「自分が何も関わらなかったことに責任を感じている」として、今回のプロジェクトに加わることを決めたという。

「このムーブメントを通じて、女性が自分たちの生活を犠牲にすることなく、当たり前に政治参画できる世の中を作っていくことに寄与できれば」

パブリックリーダー塾の応募の締め切りは8月31日。募集要項や応募方法の詳細は、村上財団の公式サイトで確認できる。

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