人格否定のような暴言、クレジット記載も報酬もなし…映画・ドラマの脚本家に対するハラスメントの実態は?

映画業界の性暴力やハラスメントの問題を受け、日本シナリオ作家協会が声明を発表。「勉強させてやった」などの理由で、立場の弱い脚本家が執筆者として扱われず、本来なら得られるべき対価や権利を奪われることがあるという。
日本シナリオ作家協会
日本シナリオ作家協会
公式サイトより

映画業界内で告発が相次ぐ性暴力やハラスメントの問題を受け、日本シナリオ作家協会は10月11日、「文化・芸術に関わるすべての業界における、あらゆるハラスメントを根絶するために、全力を尽くす」とする声明を発表した

日本シナリオ作家協会(以下、作家協会)は、映画やドラマなどの脚本家でつくる団体。7月にハラスメント問題への見解と取り組みについて公表し、8月には、ハラスメント対策ガイドブックの作成にあたり、協会内外で起きたハラスメントの実態を把握するため、アンケートも行っていた

「#MeToo運動、自らの問題とせず放置」

今回発表された声明では、「日本シナリオ作家協会を含む映像業界には、長年の間、性行為の強要を含む様々な形のハラスメントが存在し続けていました」と、性暴力やハラスメントがあったことを認めた。その上で、「それにもかかわらず、2017年、アメリカのハリウッドにおけるセクシュアル・ハラスメント告発が世界的な#MeToo運動に拡大したときにも、自らの問題とせず放置したまま」だったと説明。

2022年に、日本の映画業界でも監督やプロデューサー、先輩俳優などから地位や関係性を利用され性暴力を受けたとする証言が相次いだものの、「作家協会を含む映像業界全体が問題意識を持って対処することはありませんでした」とし、その理由をこうつづった。

「長期に渡り、加害の意識が欠如した者たちが加害を繰り返してきたにもかかわらず、周囲の問題意識が薄弱なために加害者を許容し、被害者に冷淡であったという異常な体質を、映像業界が維持してきたからです。この体質が、ハラスメントを長期化・悪質化させ、被害を隠蔽させて、現在においても新たなハラスメントを生じさせている要因となっているのです」

脚本家という職種については、「プロデューサーや監督から仕事を貰い受ける立場であることが多く、密室における少人数での作業となりがち」だと説明。「性行為の強要という犯罪をも含むハラスメントが、現在に至るまで計り知れないほど起きていました」とした。

ハラスメントの実態は? 人格否定のような暴言、クレジット記載なし

声明では、脚本家に対する具体的なハラスメントの一例として、以下をあげている。

▽立場の弱い者に対し、人格否定のような暴言を吐く

▽アイデアを出させ、タイトな締め切りで執筆させながら、クレジットタイトルに氏名も記載しない、報酬も払わない

さらに協会内部で起きた事例としては、以下のようなものがあるという。

▽師匠と弟子、先輩と後輩などの力関係の下、共同作業であるにもかかわらず、「勉強させてやった」などの理由をつけられて、立場の弱い側が執筆者として扱われず、本来なら著作権者として得られるべき対価や権利を奪われる

▽脚本家から事務局職員への酒席でのセクシュアル・ハラスメントや、業務上の適正な範囲を超えた暴言

▽作家協会が主催するシナリオ講座における、講師(協会員である脚本家)から受講生への指導を超えた罵詈雑言、性的な誘いを持ちかけるなどの悪質な行い。また、受講生から講師へのカスタマー・ハラスメントやセクシュアル・ハラスメント

▽協会員が外部の大学などで教える場での、講師側ないしは学生側からのハラスメント

脚本家をめぐるハラスメントには「共通する構造」があるといい、こう説明している。

「立場の強い側が当然の権利のごとく、あるいは無自覚にハラスメントを行う。一方、弱い側は、仕事を降ろされることや、無視されたり、悪評をたてられたりすることなどへの恐怖心から、拒否も抵抗もできず泣き寝入りを強いられる」

「このような実態が見えていても黙認する者も多く、さらには容認すらしている周囲の人々の存在があることが、この構造を存続させ、より強固なものにしていました」

今後は相談窓口を設置、ガイドブックも作成

今回の声明では、こうしたハラスメントの実態について、「私たちは、直接的にも間接的にも知りながら、実態調査や加害者の処分といった対策を講じることを放棄してきました。そして、加害者を許容して内輪で庇い、被害者を見えない存在にし、より追いつめ、傷つけてきました」として、謝罪。

同協会では、ハラスメントを根絶するために対策委員会を設けたほか、今後は、協会員や職員が被害を受けた際に対応する相談窓口を設置。

また、8月に行ったアンケートの結果をふまえ、独自のハラスメント対策ハンドブックを作成し、協会員や、映像制作会社、映画会社、テレビ局などに配布するという。専門家を招いて講習会、勉強会の実施も行う予定だとしている。

この声明内容は、「作家協会にとどまるべきではありません」とし、「この声明の精神が映像業界全体の常識になるよう、全力を尽くしていきます」と宣言した。

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