「健康保険」とは?生命保険って入った方がいい?お金の専門家が解説

国民皆保険である、健康保険。一体どんなもの?そもそも生命保険は入った方がいい?お金の専門家に聞きました。

社会人になると、周囲に加入する人も増える「生命保険」や「医療保険」。そもそも、日本の「健康保険」ってどんなもの?保険って入った方がいいの?入るなら、どう選んだらいい?働く私たちが知っておきたい基礎知識を、お金の専門家で「日本金融教育推進協会」代表理事の横川楓さんに聞きました。

【目次】

  1. そもそも「生命保険」とは?
  2. 「健康保険」の仕組みとは?
  3. 「マイナ保険証」とは?
  4. 「生命保険」、どう選んだらいい?
  5. 保険料の目安って?

そもそも「生命保険」とは?

横川さんは「『生命保険』と聞くと、イコール『死亡保険』と思われている方も多いのですが、生命保険とは基本的に、亡くなった際に保険金が受け取れる『死亡保障』がついているものや、入院時に保険金が受け取れるようないわゆる『医療保険』なども含めた総称を指す言葉です」と解説します。

そのため、会社員であれば毎年10月頃から始まり、所得税の控除などを申告する「年末調整」で受けられる控除の一つである「生命保険料控除」についても、「いわゆる『死亡保険』だけではなく、『医療保険』なども対象となっています」と紹介しました。

生命保険とは、亡くなった際だけでなく、病気なども含めた「もしも」に備え、保険料を支払うことで、家族や自らの生活を支える保険金を受け取ることのできる仕組みだといいます。

では、死亡保険や医療保険には入った方がいいのでしょうか。横川さんは「SNSなどでも『保険には入らなくてもいい』といった投稿を見たことがある人も多いかもしれないのですが、それは日本は『健康保険』など公的な医療保険がしっかりしているということが背景にあります」と指摘しました。

その上で、さまざまな保険に加入する前に知っておくべき基礎知識として、「健康保険の仕組みをまず知り、どんな保障が受けられるのかを知っておきましょう」と呼びかけました。

「健康保険」の仕組みとは?

「健康保険」3つの基礎知識
「健康保険」3つの基礎知識
krisanapong detraphiphat via Getty Images / ハフポスト日本版

いわゆる「健康保険」とは、病気や事故の際に医療費の負担を軽減してくれる保険制度です。雇用形態などによって加入する保険に違いはありますが、日本では「国民皆保険」とも呼ばれるように、すべての国民が次のいずれかの公的医療保険に加入し、保険料を支払っています。

  • 自営業やフリーランスの方は自治体が保険者となる「国民健康保険」
  • 会社員の方などは「全国健康保険協会(協会けんぽ)」や企業などが設立する「健康保険組合」が運営する「健康保険」
  • 国家公務員や地方公務員の方などはそれぞれの組織の「共済組合」
  • 船舶の船員などは「船員保険」
  • 75歳以上の人などは「後期高齢者医療制度」

横川さんは、「自分が加入している保険は、健康保険証を見れば書いてあるので一度確認してみてください」と呼びかけました。

加入する保険によって負担する保険料や受けられる保障に違いがありますが、「健康保険」について知っておきたい制度として、横川さんは次の3つを挙げました。

  1. 医療費の3割負担
  2. 高額療養費制度
  3. 傷病手当金

①については、病気やけがで病院を受診した際に窓口で支払う医療費のことで、健康保険証を提示すると、6歳から70歳未満の人は所得に関係なく、3割負担で済みます。そのほかは、次のように規定されています

  • 75歳以上の人は1割(※現役並み所得者は3割、現役並み所得者以外の一定の所得以上の人は2割)
  • 70歳から74歳までの人は2割(※現役並み所得者は3割)
  • 6歳(義務教育就学前)未満の子は2割

②は、高額な医療費がかかった場合に、後から払い戻しを受けられる制度のことです。これは加入する保険に関係なく、申請すれば受けられますが、年齢や所得などに応じて上限額が変わります。

厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf

横川さんは「基本的に自分で申請しないともらえません。申請してから『上限額』を超えた窓口負担分の金額が戻ってくる仕組みなのですが、戻ってくるまでおよそ3ヶ月ほどかかると言われています。一時的に高額な医療費を支払わないといけないのは負担が大きいですが、こうした制度があるということは知っておきましょう」と語りました。

また、入院時の食費負担や差額ベッド代などは含まれないことに注意が必要です。

③の傷病手当金は、病気やケガなどの理由で働けない期間がある場合に支払われるものです。ただ、これは「国民健康保険」では受けられない給付金で、会社員などが加入する「健康保険」でもらえるものとなります。

横川さんは「基本的に仕事を休んだ分、お給料が補填されますよ、という制度です。おおむね月給の3分の2程度の金額が日割りで支給されますが、これも『高額療養費制度』と同じで、仕事を休んだ後に申請をして、振り込んでもらうので、後から受け取る形になります」と解説しました。

「病気やケガで入院し、数カ月間会社に行けなくなってしまって、その間は無収入になってしまうのではないかと思う方もいるかもしれませんが、まずは基本的な制度として全額ではないけれども収入が保証される仕組みもあるということを覚えておくと安心感はあるのではないかと思います」

「マイナ保険証」とは?

高額な医療費がかかった場合に、後から払い戻しを受けられる『高額療養費制度』について、横川さんは加えて、「いったん窓口で全額を負担し、その後支給される仕組みですが、『限度額適用認定証』を事前に加入する健康保険に申請し、窓口に提示すると、実は窓口で支払う額を自己負担限度額にすることができるという制度があります。事前に入院することがわかっている場合などは、これを利用すれば一時的な負担をせずに済みます」と説明します。

これに関連し、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」について言及。政府はマイナンバーカードの普及をめざし、健康保険証として利用を申し込むとポイントを付与する第2弾のキャンペーンを実施しています

マイナンバーカードのイメージ見本
マイナンバーカードのイメージ見本
時事通信社

マイナ保険証を活用すると、マイナンバーカードを健康保険証として利用できる医療機関では、事前の申請が必要な『限度額適用認定証』がなくても、限度額を超える支払いが免除されるといいます。

「マイナンバーカードについて個人情報の扱いに不安を持つ方もいるかもしれませんが、高額な医療費の一時的な負担が必要なくなるという点では便利になる面もあるのかなと思います」

「生命保険」、どう選んだらいい?ポイントは?

公的な医療保険として受けられる制度について理解した上で、それに加えて民間の生命保険にも入るとすれば、どう選んだらいいのでしょうか。

横川さんは「休んだときの保障や、医療費が高額になったときに所得に応じて多額の費用を払わなくて済むような制度は最低限あるのですが、受けられる保障は全額ではないですし、もらえる金額が普段の給料より少なくなるというデメリットはあります」とした上で、「そこに不安を感じるかどうかという点も(加入を判断する上で)大きいと思います」と指摘しました。

さらに、「保険に入ると毎月の保険料が高いというイメージを持つ方もいるかもしれませんが、若いうちに入った方が保険料は安いですし、内容がいいか悪いかは別としても、安いものだと1000円未満で入れる掛け捨ての医療保険など、意外と低額で入れるものもあります」と説明。「ご家族が病気になられて不安を感じたり、入院時にいくらかお金をもらえると安心を感じたりする場合は、公的な医療保険にプラスアルファで保険に入ることを検討してもいいと思います」と語りました。

一方で、「病気になったときの備えは必ずしも生命保険に入らないといけないわけではなく、例えば月々5000円の保険を払ったつもりで自分で貯金をするという考え方もあります」と指摘。

妊娠・出産を希望する女性に対しては、「もし帝王切開となると手術を受けることになるので、高額療養費制度など公的な制度の対象となりますが、個室などを希望した場合の差額ベッド代などは適用されません。また、妊娠中・出産後でも民間の医療保険に加入することはできますが、保険会社によっては子宮に関する病気が保障の対象外となってしまったり、条件付きとなってしまう場合もあります。不測の事態や出費に備え、民間の医療保険に入っていないという方は、妊娠前、出産前に検討することも必要だと思います」と説明しました。

保険料の目安ってある?

もし民間の生命保険などに加入するなら、月々の保険料の目安はあるのでしょうか。

横川さんは「加入時の年齢によっても入れる保険が異なり、安い保険料のものに入りたいと思っても、年齢次第では入れないということもありえます」と指摘。一律に「月給の何割」などと目安を示すのは難しいとしつつ、自分はどのような保険に入れるのか、一度シミュレーションをしてみることをおすすめします。

生命保険会社などがネットで気軽に見積もりをシミュレーションできるサイトを公開しており、「いろんな会社のものをいくつかやって比較してみるのがいいと思います」とアドバイスしました。

掛け捨てではなく、貯蓄型の生命保険もあり、「貯蓄型の保険は掛け捨てのものに比べ、月々の保険料も高くなります。もちろん『もしも』の際には安心ですが、銀行預金と違い、気軽にいつでもお金を引き出せるものではありません」と指摘します。

保険に入るかどうかは、家族構成や健康状態によるものが大きいため、横川さんは「健康に対しては、いつでも引き出せる貯金という形で備えることもできます。まずは自分の貯金の金額や、普段のお金を使い方などを考えた上で、健康に不安を感じたり、妊娠・出産を考えていたりするなど、ライフイベントや健康状態に応じて、安いものから検討していくという流れがいいのではないでしょうか」と提案しました。

また、亡くなった際に家族が受け取れる公的なお金として「遺族年金」があるとも指摘。死亡保険を検討する際にも、遺族年金としてどのくらい受け取れるのかをイメージした上でプラスアルファで加入するという意識が大事だといいます。

「まず公的な保障があり、それにプラスアルファで民間の保険を考えてみるのが大事だと思います。日頃、お給料から引かれている年金や健康保険の保険料は高いと思うので、まずそれを活用するという意識を持っていただければと思います」

(この記事は、2022年11月17日に開催されたTwitter Spaces「#お金を話そう」の内容を一部加筆・編集しました)

Twitter Spaces「#お金を話そう」
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