アメリカのバイデン大統領は7月21日、大統領選挙から撤退し、カマラ・ハリス副大統領を民主党の後任候補に推薦すると発表した。
ハリス氏は、民主党の候補指名を確実にしたわけではないものの、バイデン氏から支持を得たことで、有力な後任候補としてみられている。
バイデン氏の撤退発表後、多くの人たちがココナッツやヤシの木の絵文字と共に、ソーシャルメディアでハリス氏への支持を表明した。
コロラド州のジャレッド・ポリス知事は、ココナッツとヤシの木、アメリカ国旗の絵文字でハリス氏を歓迎。「アメリカは、新しいスタートを望んでいる」「カマラには希望のビジョンがあり、私たち全員が信じられる未来がある」とつづった。
民主党の女性候補者を支援する政治活動委員会「エミリーズリスト」や、LGBTQ権利擁護団体「ヒューマンライツキャンペーン」などは、ソーシャルメディアのユーザー名にココナッツとヤシの木の絵文字を加えた。
なぜココナッツとヤシの木?
なぜ、ハリス氏を支持する人たちは、ココナッツとヤシの木の絵文字を使うのか。
きっかけになったのは、2023年5月にホワイトハウスで開かれたヒスパニック系アメリカ人の公平な教育や機会を促進するためのイベントだ。
ハリス氏はこのイベントのスピーチで、ヒスパニック系の若者の平等な機会のためには、親や祖父母、教師、地域社会のニーズも考慮に入れなければならないと強調した。
その中で、自身が母親から言われたというセリフを次のように紹介した。
「私の母は、時々私たちを叱りつけて、こう言ったものです。あなたたち若者ときたら。自分がココナッツの木から落ちてきたとでも思っているの?」
「あなたたちは、今生きている文脈や、その前にあるすべての文脈の中に存在しているのです」
ハリス氏はこのエピソードを、母親のモノマネやジェスチャーを交えて笑いながら紹介。
どことなくおかしみがあるこのスピーチは「いつまでも見ていられる」とソーシャルメディアで拡散された。
また、この動画は2024年6月に行われた大統領選挙のテレビ討論会の後、さらに大きな注目を集めるようになった。
この討論会で、バイデン氏が言葉を詰まらせたり、つじつまの合わない発言をしたりしたことで、民主党内で候補者を変えた方が良いという意見が続出した。
バイデン氏の立候補辞退を求める圧力が高まる中、KHiveという名で知られるハリス支持者らがスピーチの動画を拡散。
チャーリーXCXの「Von dutch / ヴォン・ダッチ」などのリミックスバージョン動画が作られ、Google検索では「coconut tree(ココナッツの木)」の検索が急上昇した。
バイデン氏が7月21日に立候補を取りやめ、正式にハリス氏を後任候補として推薦した後は、ココナッツとヤシの木がハリス氏のシンボルになりつつある。
ソーシャルメディアには「立候補辞退は、ココナッツの木から落ちてきたとでも思っているの?」などのジョークも投稿されている。
ハリス氏は、民主党の正式指名を確実にしたわけではない。しかし、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事やピート・ブティジェッジ運輸長官など、候補者として名前の挙がっている民主党の政治家も、すでにハリス氏支持を表明している。
共和党候補のトランプ氏は78歳で、81歳のバイデン氏を高齢だと批判してきた。しかし59歳のハリス氏と比較すると、トランプ氏は20歳近く高齢になる。
スピーチの動画がTikTokなどのソーシャルメディアで拡散されることで、若い世代にハリス氏を印象付けて支持を広げる可能性もある。