
法律上同性カップルの結婚が認められていないのは違憲だとして、性的マイノリティ当事者が国を訴えている裁判は、東京2次訴訟の判決が11月28日に言い渡されることになった。
この「結婚の自由をすべての人に」訴訟は全国5カ所で計6件の裁判が行われており、東京2次は最後の高裁判決になる。
これまで言い渡された5つの高裁判決(札幌、東京、福岡、名古屋、大阪)は すべて、同性カップルの結婚を認めていない現在の法律の規定を「違憲」と判断した。
5月20日に東京高裁で開かれた東京2次訴訟最後の審理(東亜由美裁判長)では、8人の原告のうち、福田理恵さんと藤井美由紀さん、ケイさんの3人が意見陳述をして、異性カップルと同じ、平等な結婚の権利を認めてほしいと訴えた。
無言で渡された入国書類
福田さんと藤井さんは2014年に出会い、パートナーとして11年間支え合って生きてきた。
2023年に福田さんがアメリカに出張に行った時に、「このまま結婚できずに人生が終わるのは嫌だ」という苦しい思いから、現地で藤井さんと結婚。ニューヨークの職場の上司に祝福され「妻と妻なんだ」という幸福と安心感に包まれた。
しかし、帰国時に利用した日本の航空会社の機内で、入国書類を配っていた客室乗務員に「家族なら一緒に税関申告できる」と言われ、「アメリカでは結婚している」と伝えたところ、何も言わずに別々の申告書を差し出されたという。
福田さんは「一度平等を味わった私にとって、この差別の不条理は耐えがたいものでした」と、怒りと悲しみが入り混じる気持ちを語った。
藤井さんは、アメリカで結婚したものの、2021年に裁判の原告になった後に母親が亡くなり、報告できなかったと涙で言葉を詰まらせながら語った。
「アメリカで法的に結婚した私たちの姿を母に見せてあげたかった。本当は日本でも結婚できるようになった姿を見せて、安心させてあげたかった。でも、その願いはもう叶いません」
福田さんは、藤井さんと出会った直後に乳がんと診断された。闘病中は藤井さんが福田さんを支え看病したが、病院が付き添いを許可したのは家族だけだったため、藤井さんは二人の関係を「いとこ」と嘘を付かなければならなかった。
藤井さんと福田さんは今も、どちらかが倒れた時に相手に連絡がいくのか、一緒に住んでいる家を相続できるのかなど、不安が尽きない。
藤井さんは「どれだけ愛し合い、ともに人生を歩んでも『家族ではない』という一言で全部が壊れてしまう。それが、今の日本の現実です」と述べ、異性カップルと同じように、同性カップルも結婚が認められるようにしてほしいと求めた。

誰もが愛する人とともに生きられる社会を
結婚が認められないことでともに生きる未来が描けず、パートナーとの関係を諦めざるをえない人たちもいる。
ケイさんは20年以上ともに生きた同性パートナーと、数年前に別れた。ふたりは別れる時に「もし結婚できていたら、こんな結果にはならなかったかもしれないね」と話したという。
ケイさんは社会生活でセクシュアリティをカミングアウトしておらず、同性パートナーとの関係を隠すために、ゲイ男性と短期間、形式的な婚姻関係を結んだこともある。そのことに苦しみ続けてきた。
法廷では婚姻が認められていないことについて「結婚ができないことは単なる不便さではありません。私たちの存在を、社会が公的に認めないということです」と語った。
「制度から排除されていることは、存在をないこととして扱われ続けることなのです」
「婚姻制度は、自らの人生を主体的に選び取る自由のために、選択肢として必要不可欠なものだと思います。誰もが、愛する人とともに生きることを夢見る自由を持ち、その夢を制度が支える社会であってほしいと願っています」
最後の判断では「さらに1歩踏み込んでほしい」
これまでの5つの高裁判決はいずれも、結婚を認めていない法律の規定は、結婚の自由や法の下の平等を定めた憲法などに違反すると判断した。

中でも、大阪高裁は、同性カップル用の別の結婚制度を作ることは「新たな差別を生み出す可能性がある」と指摘し、現在の法律婚制度を同性カップルも使えるようにすべきとの考えを示した。
藤井さんは、「5つの高裁で違憲判決が出たことは、私にとって希望の光で結婚ができる日が近づいてと感じている」と審理後の記者団の取材に述べた。
違憲判決が続いている一方で、石破首相らは「国会の議論や訴訟の状況を注視する」という発言を繰り返すのみで、国会で、結婚の平等を実現するための法改正の議論は進んでいない。
福田さんは、「東京高裁も、これまでの5高裁と同じように違憲判決を出してほしいが、国会が動くようさらに一歩踏み込んで(結婚が認められていないことで精神的被害を被ったとして求めている)損害賠償を認める判断をしてほしい」と述べた。
