新規入会者の3割が35歳以下。年会費5万円の「超高級カード」が若者に刺さる“4つの理由”。魅力的な特典とは?

円安や物価高が続く中、2024年12月に過去最高の取扱高を記録。富裕層向けのクレジットカードが若者に支持される背景とは?

富裕層向けのクレジットカードとして知られるラグジュアリーカード。年会費は「チタンカード」で5万5000円(税込)、「ブラックカード」が11万円(税込)、「ゴールドカード」では22万円(税込)、さらに最高位クラスの「ブラックダイヤモンド 入会金110万円(税込)、年会費66万円(税込)と、一般的なクレジットカードと比べると高額だ。

そのため、従来は主に30~40代の富裕層をメインターゲットとしてきたが、2024年の新規入会者のうち35歳以下が全体の30%を占め、20代の入会者数は直近2年で約3倍に増加している。なぜ若年層からの支持が高まっているのか。ラグジュアリーカードを運営するBlack Card I株式会社でChief Digital & Marketing Officerを務める児玉朋雄さんに話を聞いた。

児玉朋雄さん
児玉朋雄さん
misaki hashimoto / HuffPost Japan

若者が惹かれる理由は「ステータス」と「実利」

ラグジュアリーカードは当初、40〜50代の高所得層の男性を主なターゲットとして広告展開を行っていた。しかし、近年の社内データ分析によって、20代の申し込みが着実に増えていることが明らかになった。

若年層の関心を集めた理由は大きく4つある。まずは金属製カードならではの質感だ。初めて手にした際の重みや高級感のあるデザインが「ステータスを感じさせる」と評価されている。

上からゴールドカード(イエローゴールドカラー)、ゴールドカード(ローズゴールドカラー)、ブラックカード、チタンカード
上からゴールドカード(イエローゴールドカラー)、ゴールドカード(ローズゴールドカラー)、ブラックカード、チタンカード
misaki hashimoto / HuffPost Japan
左上にダイアモンドが施されている最上位クラスの「ブラックダイヤモンド」のみ招待制
左上にダイアモンドが施されている最上位クラスの「ブラックダイヤモンド」のみ招待制
misaki hashimoto / HuffPost Japan

「20代の入会者からは、『金属製でかっこいい』『ステータスがありそう』といった声が多く聞かれます。素材感や重厚さといった第一印象がカードに対する興味を持つきっかけになっているようです」(児玉さん)

しかし、若者に選ばれている理由はそれだけではない。2つ目は「実利を追求していること」だ。見た目の魅力に加えて、ポイント還元率の高さといった実利も支持を後押ししている。

一般的なクレジットカードの還元率は0.5%程度。一方、ラグジュアリーカードの場合、最もベーシックな「チタンカード」でも1%以上の還元率で、業界でも高水準に位置している。高い年会費に見合う明確なメリットがあることも、納得感のある選択理由となっているようだ。こうした傾向を受け、若年層へのマーケティング施策も強化。デジタル広告に加えて、地下鉄やタクシーなどのオフライン広告にも注力し、より広い世代への認知拡大を図っている。

人気の優待特典は「会員同士の交流会」

ラグジュアリーカードの若年層ユーザーをさらに詳しく見ていくと、一般的に想像される”富裕層”像とは少し違った特徴があることが分かってきた。児玉さんはこうした人たちを「ライフスタイルの活性度が高い層」と表現している。たとえ年会費が高くても「長期休暇に旅行に行きたい」「たまには素敵なお店で食事をしたい」といった好奇心や前向きな消費意欲を持っているという。

そんな彼らにとって魅力的なのが3つ目の理由である「会員限定で楽しめるさまざまな優待体験」。中でも特に、月に一度開催される会員同士の交流イベント「ソーシャルアワー」が好評だ。このイベントでは会員同士が気軽に会話し、つながりを広げることができる。これまでに、有名ホテルのバーラウンジでのパーティーや渋谷の洗練された空間で開かれたワークアウトイベントなども開催されてきた。20代の若い経営者の参加も多く、ビジネスのきっかけになることもあるという。

会員限定で行われたクリスマスパーティーの様子
会員限定で行われたクリスマスパーティーの様子
ラグジュアリーカード提供

「価値観や志向性の近い方々との出会いの場として、多くの会員様から高く評価していただいています」(児玉さん)

また、「2人で行けば1人分が無料になる」レストラン優待は若い世代に人気の特典だ。同様の“2名で1名無料”は他社カードでも見られるが、ラグジュアリーカードでは独自に拡張し、4名で利用すれば2名分、6名で利用すれば3名分が無料になるのが大きな特徴である。

対象店舗も厳選したレストランに限定。友人との食事会はもちろん、ビジネス接待にも活用されており、「高級レストランでこんな素敵な時間が過ごせるなんて」という感想が寄せられている。

ポイントを貯めて商品と交換するという従来の使い方にとどまらず、日常を少し豊かにする“体験”という価値を提供している点がラグジュアリーカードならではの魅力だ。

会員向けのオリジナル商品も次々と開発されている。写真左からワイン、コーヒー、金箔
会員向けのオリジナル商品も次々と開発されている。写真左からワイン、コーヒー、金箔
misaki hashimoto / HuffPost Japan

入会キャンペーンに頼らず、既存ユーザーの満足度を維持

意外なことに、ラグジュアリーカードでは大々的な入会キャンペーンはあえて控えている。ブランドのイメージや、すでに利用している会員の満足度を大切にしているからだという。年会費が高めに設定されていることもあり、申し込みをする人の多くは、その場の勢いではなく、2〜3週間ほどじっくり考えたうえで入会を決めている。

そんな中で、若い世代への発信手段として力を入れているのが、4つ目の理由であるYouTubeをはじめとした「インフルエンサーマーケティング」だ。YouTuberとのタイアップ企画も積極的に行ってるが、特に効果的だったのは広告のためではなく、実際にラグジュアリーカードを使っているYouTuberが自分の体験をもとに発信したケースだという。

「YouTuberのちゃますけさんがラグジュアリーカードの優待を使ってクルーズ旅行に出かけ、その様子を紹介してくれた動画が想像を超える反響でした」

なんと3時間という長さにもかかわらず、216万回も再生され(※2025年7月23日現在)、新規入会者の増加にもつながっている。なお、この動画は企業から依頼したものではなく、もともと本人がラグジュアリーカードのユーザーだったそう。

円安・物価高も、12月には過去最高の取扱高を記録

円安や物価高が続く中、ラグジュアリーカードは2024年12月に過去最高の取扱高を記録した。その背景について、児玉さんはこう語る。

「株価の変動や戦争などがあると、一時的に入会が減ることはありますが、数カ月単位や長期で見ると影響はほとんどありません。コロナ禍ではカード利用が一時3割減りましたが、4カ月目には回復し、入会も元に戻りました。景気や相場に左右されにくく、『楽しみたい』『外に出たい』という“人生をより良く楽しみたい”という前向きな価値観を持つの方々に、支持されていると考えています」(児玉さん)

(取材・記事/橋本岬、編集/荘司結有)

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