自分を「不細工」だと嘆く4歳の女の子。研究からわかった子どもを取り巻くボディイメージの問題

女性の「美しさ」を重視する傾向やソーシャルメディアは、幼い子どもにも影響しており、将来的に若い女性のキャリアを阻む可能性もある。
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Yuliya Taba via Getty Images
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友人の娘リリー(仮名)が、1年ほど前から自分のことを何度も「不細工だ」と言うようになりました。

歯を磨く時間になるとじっと鏡を見つめ、顔をしかめながらがっかりしたように自分の顔を観察するのです。リリーの髪はウェーブがかった濃い茶色ですが、ストレートの金髪がいいと言います。

ある朝、リリーが口の周りにピンクのマーカーを塗りました。前日に同級生に「不細工」と言われたリリーは、口紅を塗ればもっときれいに見えると思ったといいます。

たった4歳のリリーが、なぜ自分のことを不細工だと嘆き、「美しく見える」ことを気にかける必要があるのでしょうか。遠足のためのパートナーでも必要としているのでしょうか?

幼い女の子に広がる「美」の重視

近年ようやく、10代の若者のボディイメージやメンタルヘルスに、ソーシャルメディアが有害な影響を与えていることが注目されるようになってきました。

しかし、私たちの研究チームは、この問題の重要なピースを見落としていることに気づきました。

それは年齢です。私たちの2024年の調査から、女の子の場合、外見へのこだわりはわずか3歳から始まるということがわかりました。

この調査では、3〜5歳までの子ども170人に聞き取りを行い、いつ頃から「美しさ」に価値を置き始めるのかを調べました。

その結果、すべての測定項目で、女の子たちが外見を強く重視していることがわかりました。

子どもたちは「女の子であるためにはきれいでなければならない」「きれいに見えるのは重要だ」と回答しました。

また、服装や職業の選択では、女の子は華やかな衣装や、モデル、メイクアップアーティストなどの外見に関わる職業を多く選ぶ傾向がありました。

好きなキャラクターはプリンセスで、その理由として最も多かった回答は「プリンセスはみんなきれいだから好き」でした。

2017年の研究でも、幼い女の子が「化粧台セット」のような外見重視の玩具をおままごとで多く購入する傾向がありました。

2つの研究を通じてわかったのは、女の子は外見を非常に重視するだけでなく、その傾向が男の子よりも強いということです。

キャラクターを好きな理由として、「外見」を理由に挙げた女の子の割合は、男の子の約5倍にのぼりました。

一方、男の子の多くは「スパイダーマンは高く飛ぶことができ、壁を登れて、糸を出せるから好き」など「行動」を理由に挙げました。こうした研究から私たちは、「美しさ重視」に関する性差は、おそらく小学校に入学する前から始まっていると結論づけました。

幼い頃からの変革が重要である理由

世界中の女の子たちは、長年「美しさが最も重要」と教え込まれてきました。ジェンダー発達の専門家の間では、新たな「ガーリー・ガール」文化が生まれた2000年代初頭が重要な時期だったとも考えられています。

この文化を推し進めた要因のひとつが、2000年に始まったディズニープリンセスシリーズで、これは今もなお、幼い女の子たちを魅了し続けています。

私は幼い女の子2人の親ですが、ふたりともこの2年間でモアナの絵を1000枚以上描いてきました。

ディズニー映画は進化し、より主体性のある主人公を取り入れるようになってきていますが、それでも子どもたちが受け取る中心的なメッセージは、依然として「美しさ」にあるのです。

子どもたちは、思春期に入るころにはすでに「自分の見た目」にこだわるよう仕向けられています。それを巧みに利用しているのが、ビジュアル重視のソーシャルメディアです。

何十年にもわたる研究から、自尊心を容姿と結びつけたり、歪んだ身体イメージを持ったりすることは、多くの悪影響をもたらすことがわかっています

悪影響の中には、身体的な健康(摂食障害や薬物乱用など)や、メンタルヘルス(うつ病など)の悪化が含まれます。

外見への過度なこだわりは、学業への集中力をそぎ、成績に悪影響を与え、時には若い女性のキャリアへの志を制限することにもつながります。

容姿を重視する価値観が女の子を不幸、もしくはそれ以上に悪い状況にすることがわかっているのであれば、私たちはその価値観を植え付ける言葉や行動を見直さなければなりません。それは思春期を迎える前、ソーシャルメディアを利用する前に行う必要があります。

特に重要なのは、幼稚園や保育園の時期です。この時期、子どもたちは、生まれた時に割り当てられた性別であれ、自認している性別であれ、自身の性別と自分を強く重ね合わせるようになり、「その性別であることの意味」を知りたがります。

子どもたちは、与えられた情報をもとに性別に関するステレオタイプを形成し、断固としてそれに従おうとします。女の子は「見た目」で、男の子は「行動」で定義されると学んでいます。私たちは、この情報自体を変えていく必要があるのです。

私たちに何ができるのか

そのために、私たちには色々なことができます。

そのひとつは、子どもたちが日常的に目にする映像やおもちゃを(再)検討することです。極端な体型のプリンセスや人魚の人形は、達成不可能な内面的基準を生み出してしまいます。

大人は、スーパーヒーローを誇張して描くことの比喩的な意味を理解できますが、視覚的で、物や人の見た目に大きく影響される子どもたちは、こうしたイメージを文字通りに受け止めるのです。

私たちは、さまざまな体型や体格、顔立ち、髪質、肌の色のキャラクターのおもちゃを買ったり、作ったりする必要があります。

希望の光となる変化の兆しはあります。

私たち家族は映画『ミラベルと魔法だらけの家』に登場するマドリガル家の三姉妹が大好きです。

主人公のミラベルは眼鏡をかけ、くせ毛です。ルイーサは美しさではなく、腕力で知られています。イサベラは肌がやや濃く、体型も現実的です。子どもたちは人形を手にした時に、こういった特徴を感じ取れます。

三姉妹の目標は王子を魅了することではありません。3人は村の人々の助けとなることで評価されています。

バービー人形も、より多様性のあるものが増えています。しかし、こうした現実を反映したおもちゃはまだ少数です。

女の子たちが物やロボットを組み立てたり、問題解決能力やクリエイティビティを発揮したりできるおもちゃやゲームも存在します。

しかし、私たちの文化は依然としてジェンダーステレオタイプに強く影響されているため、幼い女の子たちはそうした玩具に触れる機会があまりありません。

ポジティブで多様性のある映像やおもちゃを選ぶだけではなく、現在市場を支配している有害なものから距離を置き、購入を控える必要もあります。

企業がもっと良い方向に変わるまでは、私たち自身ができることをやっていくしかありません。

自分が女の子に「外見重視」のおもちゃを選びそうになっていることに気づいたら、もっと幅広い活動を促すおもちゃを探してみましょう。

正直なところ、有害なイメージやメッセージを放つおもちゃは、友人や家族からのプレゼントという形で、ほぼ必ず子どもに与えられます。

だからこそ、親や教師はこの問題に積極的に介入する必要があります。不健康な外見のこだわりを助長するおもちゃに「ノー」と言うことに罪悪感を持たないでください。

子どもたちにかける言葉を変えることもできます。特に女の子に対しては、「かわいいね!」や「そのドレス素敵だね!」など外見ばかりを褒めるのではなく、他の良い点に目を向けて伝えるようにしてみましょう。

もっと広い視点では、女の子や男の子がなれる姿のイメージを広げることもできます。

自分の性別で何になれるかの具体例が子どもにもっと示されれば、みんなにとってプラスになるのです。

もちろん、自分の外見に自信を持たせることは大切です。しかし伝統的な評価(多くの場合、監視とも言える)のやり方をとらなくても、それは可能です。

特に白人以外の人種や低所得層の子どもにとっては、「見た目が良いこと」が、不公平かつ危険な形で「社会的な評価」と結びつけられてしまうことがあります。

こうした状況では、親たちはジェンダーステレオタイプだけでなく、知らぬ間に広がっている白人中心の美の基準を子どもが内面化しないよう闘っていることが多いのです。

また、一般的に女の子のほうがより外見を重視されがちですが、男の子も筋肉や力などについて、非現実的な基準にさらされています。

最近のある研究では、8〜12歳の男の子の49%が自分の外見に不満を感じていることがわかりました。別の研究では、6歳の幼い男の子でさえ、より痩せて筋肉質な体型を好む傾向が示されています。

自分の見た目に満足できない気持ちや、外見への執着による悪影響は、多くの人にとって共感できるものではないでしょうか。

私自身も、12歳の時に思春期で体重が増えたことに悩んでいました。15歳でバレーボールと陸上競技の代表チームに入り健康な体だったにもかかわらず、自分の体が嫌で、うつ状態や希死念慮を経験したのです。

そうした経験があるのは私ひとりではありませんでした。同じような悩みを抱えている女の子を、当時たくさん知っていました。

スタンフォード大学に進学すると、周りに素晴らしい実績を持つ女性たちが大勢いました。

中には世界レベルのアスリートもいましたが、それでも自分の体型や外見に悩み、摂食障害を抱えている人が少なくありませんでした。

多くの人が同じように苦しんでいる姿を目にし、外見や健康は自分ひとりだけではなく、もっと大きな問題なのだと気づきました。

私は最終的に、ジェンダー発達を専門に研究する道を選び、複雑で深刻なこの問題に17年間取り組んできました。

子育ての難しさ

自分の2人の子どもがティーンエイジャーになった時のことを考えると、とても不安です。今もなお、性差別と男尊女卑がはびこる社会だからです。

夫と私は、世界でも有数の外見重視の都市の一つとも言えるロサンゼルスを離れようかと考えたこともあります。

サンタモニカ・ブルバードを車で走れば、美容整形やインプラント、脂肪冷却の素晴らしさを謳う看板や広告が子どもたちの目に飛び込んできます。高級ショッピングエリアであるモンタナ・アベニューには、まつ毛サロンや美容院、ネイルサロン、ワックス脱毛サロン、シュガーリング脱毛サロン、スキンケアショップなどが、通り沿いにぎっしりと並んでいます。

引っ越したとしても、こうしたメッセージが必ず子どもたちに届くことを、私はわかっています。

これが私たちが生きている世界であり、私たちが「こう望むべき」と刷り込まれてきた文化であり、子どもたちが受け取っているメッセージなのです。

メッセージは住んでいる場所からだけでなく、テレビ番組や映画、音楽、友人関係、さらには学校からも入り込んできます。その状況をさらに悪化させているのが、ソーシャルメディアやAI技術、フィルター加工やフォトショップです。

だからこそ、私たちはこの状況に立ち向かうためにできる限りのことをしなければなりません。

私たちのチームの研究からも、問題の深刻さは明らかです。5歳の時点で、すでにこうしたジェンダーステレオタイプや歪んだ身体イメージに染められているとしたら、15歳になるころには一体どんな考えを抱くようになっているでしょうか。

女の子、男の子、そして人間であることについて、より健全な価値観と多様なイメージ、考え方を育むのは、私たちの責任です。

私は、自分の子を含むすべての子どもたちに、いつでも自分だけのユニークな美しさを認識するだけではなく、自分の価値は美しさに依存するものではないことを認識してほしいと思っています。

筆者:メイ・リン・ハリム博士。発達心理学者で、2人の子どもの母親。カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の心理学教授でカルチャー&ソーシャル・アイデンティティ発達研究室所長。多様なバックグラウンドを持つ幼い子どもたちのジェンダー・アイデンティティの発達を研究。研究結果は児童発達に関する学術誌に掲載されている

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。