年間100万トンもの服が捨てられている・・・。環境問題のカギは、アパレル産業?

日本では、不要になった衣類品の9割が、リサイクルされずに埋め立てまたは焼却処分されているという現実。
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連日続く、酷暑・・・。

これからの1か月、平均気温は全国的に平年よりも高い予想となっている。特に西日本や東日本は8月いっぱい、平年よりもかなり気温が高くなる予想だ。

このままいくと、早くて2030年には、産業革命前と比べて地球の平均気温が1.5°上昇を突破してしまうと言われている。

「1.5°」と聞くと、大したことないと思う人もいるかもしれない。その影響力はすさまじい。北極海の海氷が夏に消失する頻度で見ると、「100年に1回程度」と言われている。さらに「0.5°」上昇して「2°」になると、頻度は「少なくとも10年に1回」に跳ね上がる。

ところで、日本国内で捨てられている衣服は、毎年どのくらいの量か知っている人はいるだろうか?

答えは「年間100万トン」。およそ33億着にも上る。実は、この捨てられた服の話と、気温の話は、無関係ではないのだ。

衣服のうち9割は、リサイクルされることなく、埋め立て処分または焼却処分され、大量の温室効果ガスを排出。衣服製造は、“環境負荷の多い産業”だと言われている。

そんな状況を受けて国連では、ファッションを通じて環境問題を考える「#ActNow ファッションチャレンジ」キャンペーンを開始。

2019年8月8日(木)に、「持続可能なファッション」をテーマに3人の登壇者を招き、気候変動への具体的なアクションを考えるイベントを開催。ハフポスト日本版からは、ニュースエディターの小笠原遥が登壇した。

左から、日本環境設計株式会社・取締役会長の岩元美智彦さん、エル・ジャポン編集長の坂井佳奈子さん、ハフポスト日本版ニュースエディターの小笠原遥
国連広報センター
左から、日本環境設計株式会社・取締役会長の岩元美智彦さん、エル・ジャポン編集長の坂井佳奈子さん、ハフポスト日本版ニュースエディターの小笠原遥

“ファッション”は、気候変動を抑えるカギ

国連が始めた、“ファッション”を通じて環境問題を考える「#ActNow ファッションチャレンジ」キャンペーン。

とりわけ衣服の製造は、気候変動に大きく影響し、繊維産業は世界の温室効果ガス排出量の約10%を占有。全世界の廃水の約20%を生み、繊維素材のほとんどは再利用可能であるにも関わらず、その85%は最終的に埋め立て処分または焼却処分されている。

そうした繊維産業に対して、「テクノロジーによって循環する仕組みを作っていきたい」と話すのは、日本環境設計株式会社・取締役会長の岩元美智彦さん。

岩元さんの会社は、資源が循環する社会作りを目指し、リサイクルやテクノロジーだけではなく、メーカーや小売店などと共にリサイクルの仕組みの統一化を目指している。

《ファッションを循環させるためには、みんなが一緒に取り組む必要があります。まず、大手アパレルショップや小売店に、不要になった衣服の回収ボックスを置いてもらう。そして、リサイクルできる工場を研究開発し、建設し、メーカーにはそこで服を作ってもらう。その後、完成した商品を店頭に置き、消費者に買ってもらう。どこかが欠けると、循環しなくなってしまいます。

また、リサイクル商品とはいえファッションだから、かっこいい方が良い。素敵な商品、欲しい商品を作ることで、もっとみんなが循環させたくなる。リサイクルされてどんなモノに変換されているのかがわかれば、消費者も参加したくなると思います。

“仕組み作り”の面から、サスティナブル(持続可能)なアパレル業界の実現を目指しているという。

サスティナビリティな活動をしていないブランドにお金は動かない。

こうした、「“サスティナブルなファッション”の実現に向けた動きは、世界中で活発になっている」と話すのは、株式会社ハースト婦人画報社でエル・ジャポン編集長を務める坂井佳奈子さん。「世界のセレブたちは今、エコに積極的に目を向けている」という。

《例えば、セレブ女優のケイト・ブランシェット。これまでセレブたちの間では、公の場所で一度着たドレスは二度着ないという風潮があったんです。でも、彼女が第71回カンヌ国際映画祭で審査員長を務めた時、あえて以前着たことのあるドレスを着ることで、世界中に”サスティナブルなファッション”へのメッセージを伝えました。

また、ロイヤル(王室)の影響力、発信力も、イギリスでは注目されています。メーガン妃が2着目のウェディングドレスをオーダーしたのが、ステラ・マッカートニーというブランドです。ステラ・マッカートニーは、ビートルズのメンバーであるポール・マッカートニーの次女が立ち上げたブランド。彼女は環境問題に対してすごく真剣に取り組んでいることで有名です。ロイヤルがそうしたブランドを敢えて選んだことは、大きなメッセージとなったと思います。

他にも、サスティナビリティな取り組みをしていないと参加できないファッションショーが開催されるなど、サスティナビリティな活動に取り組んでいない企業にお金は動かないようになってきています。

世界のモード界、ファッション界は今、環境問題に積極的に取り組んでいる。

第71回カンヌ国際映画祭(2018年)のオープニングセレモニーで過去に着たドレスを再び着用しているケイト・ブランシェット
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第71回カンヌ国際映画祭(2018年)のオープニングセレモニーで過去に着たドレスを再び着用しているケイト・ブランシェット

企業も個人も、いかに自分ゴト化できるか。

メディアの立ち上げ以来、環境問題や多様性を大きなテーマとして発信を続けてきたハフポスト日本版。2019年6月には、はじめてのSDGsという特設サイトを作り、持続可能な世界の実現を目指してきた。

ニュースエディターを務める小笠原遥は、「サスティナビリティは、まだまだ日本では広がっていない」と話す。

《サスティナビリティについて、企業や個人がまだまだ自分事として捉えられていないと感じています。

その中で、その日のヘッドラインや大きなニュースを長い時間を掛けて扱うことを重視するマスメディアとは違う我々のようなネットメディアができることは、小さなことでも毎日伝え続けていくことだと思っています。

その際は、いかに自分事として身近に感じてもらえるかというのを意識しています。例えば、エディターのひとりが始めたゴミゼロ日記という企画。なるべくゴミを減らすべく、映画館にタンブラーを持っていき、飲み物を入れてもらおうとしたら断られた・・・など、自分に接点のあるところから伝えるというやり方で発信をしています。》

環境設計、ファッション誌、インターネットメディア・・・登壇者の3人は、それぞれの立場で、今後も「サスティナブルなファッション」をテーマに環境問題について取り組んでいきたいと話す。

《リサイクルファッションとはいえ、速乾とかUVカットなど、機能性も意識することが大事だと思っています。また、モノは良いけれど、PRがまだまだ不十分な現状があります。今後、有名スポーツ選手などに関わってもらうなどして、もっと広めていきたいですね。》(日本環境設計株式会社・取締役会長 岩元美智彦さん)

《弊社は、世界で一番古いモード誌と言われている雑誌やラグジュアリーブランドを取り扱う雑誌が多いです。つまり、私たちが発信することが読者や社会にとっても影響があると思っています。ファッション誌として情報を流すだけではなくて、編集者のクリエイティブなエッセンスを交えることでより多くの人に興味を持ってもらうこと。それをやることで社会に対して恩返しができるのではないかと思っています。》(株式会社ハースト婦人画報社 エル・ジャポン編集長 坂井佳奈子さん)

《弊社はアメリカに本社があるので、世界の動きをローカライズして伝えていくということは、ひとつできることだと思います。環境意識の高い海外の事例を紹介することで、日本人の意識を少しずつ変えていきたいですね。もうひとつは、メディアとして良い循環を作っていくこと。サスティナブルな動きを、海外から日本、企業から個人。循環を促す役割をメディアが担っていくべきなのかなと思いました。》(ハフポスト日本版 ニュースエディター 小笠原遥)

世界で広がりつつある“サスティナブル”でエコなファッション。日本ではまだまだ浸透しているとは言えないだろう。今後、広めていくためにも、企業として、メディアとして、個人として、できることを考えていきたいと思った。

健康な地球で、みんなが平等に平和に生きる。

2030年に、それを実現するための目標がSDGs(持続可能な開発目標)です。
ハフポスト「はじめてのSDGs 」では、日本をはじめ世界中の問題や取り組みを紹介。

私たちに何ができるんだろう... みんなで一緒に考えてみませんか?