台湾で、アジア初の同性婚スタート。婚姻届を出したカップル「とてもハッピー。でもこれは最初の一歩」

アジアには、素晴らしい伝統や文化があります。そこには“多様性”と”平等”も含まれています。
(左から)許秀雯さん、簡至潔さん、邱亮士さん、曹朝郷さん
TAPCPR / satoko yasuda
(左から)許秀雯さん、簡至潔さん、邱亮士さん、曹朝郷さん

「配偶者」の欄に互いの名前が書かれたIDカードを手にして、許秀雯さんと簡至潔さんは、弾けるような笑顔を見せた。

5月24日、台湾で同性同士の結婚登録がスタートした。アジアで初めて、同性カップルが結婚できるようになったのだ。

許さんと簡さんは、24日の朝8時半に台北中心部にある戸籍担当窓口に婚姻届を提出した。

IDカードを手にする許秀雯さんと簡至潔さん。台湾では14歳以上の市民は、父親や母親、配偶者、居住地などの情報が書かれたIDカードを持つ。
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IDカードを手にする許秀雯さんと簡至潔さん。台湾では14歳以上の市民は、父親や母親、配偶者、居住地などの情報が書かれたIDカードを持つ。

この日からちょうど2年前の2017年5月24日、台湾の司法最高機関にあたる司法院大法官会議が「同性同士での結婚を認めない民法は違憲だ」という判断を下した。そして、同性カップルが結婚できるよう、2年以内に法整備するよう政府に要請した。

この期限を迎える直前の2019年5月17日、同性カップルが結婚できる法案が成立した。

大勢のメディアに囲まれ、婚姻届を提出する許さんと簡さん
satoko yasuda
大勢のメディアに囲まれ、婚姻届を提出する許さんと簡さん

■ 許さんと簡さん「とても幸せ。だけどこれは最初の一歩です」

許さんと簡さんは、LGBTQの人たちの平等な婚姻の権利を訴える団体「Taiwan Alliance to Promote Civil Partnership Rights(TAPCPR)」の立ち上げを通して10年前に出会った。

ソーシャルワーカーの簡さんが団体のコーディネーターを、弁護士の許さんが法律部分を担当しながら、多くの人たちとともに平等な婚姻の権利獲得運動を進めてきた。

婚姻届を提出した24日も、TAPCPRの仲間たちが多数駆けつけて、結婚を祝福した。

結婚して家族になった気持ちを聞くと、許さんと簡さんは「とてもハッピーです」と笑顔で答えた後、こう付け加えた。「だけど、今の法律はまだ十分ではないんです。これは最初のステップ。まだやらなければいけないことがあります」

指輪の交換
TAPCPR
指輪の交換

今回成立した法律は、同性カップルの結婚を実現させた一方で、異性カップルの結婚と全く同じ権利を認めたわけではない。

例えば、血の繋がりのない子供は養子縁組できない(カップルのどちらかと血のつながりがあれば、養子縁組できる)。

また国際カップルの場合は、台湾国籍ではないパートナーの国で同性婚が認められていなければ、台湾でも結婚できない。

他にも、異性婚のカップルは結婚すると互いの親や親戚との間に姻戚関係ができるのに、同性カップルの場合は相手の親や親族とは法的な姻戚とはならない。

許さんは「結婚の権利を獲得するために妥協しなければならない面はあった。だけどこれは最初の一歩」と強調する。

「別々であるということは、平等ではないということです。私たちのゴールは、誰もが同じ結婚ができるようになること。本当の意味での平等を実現することです」

「同性カップルが男女のカップルと、同じ法律で結婚できるようするため、これからも活動を続けます」

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■ 邱さんと曹さん「同等な結婚の権利がないのはおかしい」

許さんと簡さんカップルに続いて婚姻届を提出したのは、邱亮士さんと曹朝郷さん。ふたりもまた、平等な結婚の権利を手にするために闘ってきた。

婚姻届の提出。笑顔が弾けた
satoko yasuda
婚姻届の提出。笑顔が弾けた

邱さんと曹さんがLGBTQの婚姻の権利を求める活動に携わるようになったのは、6年ほど前だ。

自分たちが結婚したかったからというより、LGBTQの当事者たちに平等な権利がないのはおかしいと思う気持ちが原動力になった。

「その頃、社会的にもそして私たちの中でも、LGBTQの人たちに同等な結婚の権利がないのはおかしい、という気持ちが強くなり始めていました。『同性カップルも結婚する権利がないのはおかしいのでは』という議論が、社会の中で広まりつつあったのです」とふたりは話す。

2014年、邱さんと曹さんを含む30組の同性カップルが、戸籍担当窓口に婚姻届を一斉提出した。しかし提出された婚姻届が受理されることはなかった。

「受理されないことはわかっていました。でも社会にもっとこの問題に目を向けて欲しいと、私たちはアクションを起こしたのです」と、曹さんは語る。

それから5年。その時に婚姻届を受け取ってもらえなかったのと同じ戸籍担当窓口で、二人の婚姻届は受理された。「ホッとしました」「夢が叶いました」と二人は嬉しそうな笑顔で語った。

曹朝郷(左)と邱亮士さん
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曹朝郷(左)と邱亮士さん

■他のアジアの国でも実現できる

これまで、世界25カ国で同性同士の結婚が認められてきた。台湾は26カ国目になる。アジアで初めて同性同士を実現させた背景には、許さんや簡さん、邱さん、曹さんたちをはじめ、闘い続けてきた大勢の人たちがいる。

日本でも、2019年2月に13組の同性カップルが平等な婚姻の権利を求めて国を訴える訴訟を起こした

台湾の同性婚が他のアジアの国々にどのような影響を与えると思うか尋ねると、許さんはこう答えた。

「台湾が実現したということは、他の国でもできるということです。他の国の人たちも『台湾でできるなら自分たちの国でも』と思うでしょう。次は『それはいつか?』という話になりますね」

「アジアには、素晴らしい伝統や文化があります。そこには“多様性”と”平等”も含まれています。そのことに多くの人に気づい欲しい。私たちLGBTQの人たちは、存在しています。それは現実。その現実に目を向けてほしい」

邱さんと曹さんは、こう訴える。

「どうか闘い続けて下さい。諦めないで。だって平等な権利は、全ての人が与えられるべきものなのですから!」

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<動画:これまで同性カップルの結婚を法制化してきた国、2001年から振り返ります>

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