『イコライザー』―道徳も大事 /宿輪純一のシネマ経済学(62)

筆者は、経済政策は「教育」と同じではないかと思っている。本人に永遠に借金してまで援助をすることではなく、辛くても、その本人の一生を生きて行く強さを身に付けさせることだと考える。

(2014/THE EQUALIZER)~equalizeとは「平等にする」の意味

主人公は、昼はホームセンターの従業員、夜は世の不正を完全抹消する闇の「仕事」請負人。元CIA工作員でどんな裏仕事も"19秒"で完遂する。しかも、銃を携帯せず、身の回りのもの全てを武器に変える。依頼を受けたからでも、報酬のためでもなく、自主的に道徳的に許されざる悪人を闇に葬っていく。

ホームセンターの従業員のマッコール(デンゼル・ワシントン)は、以前はCIAの敏腕工作員。引退して、ひっそりと目立たぬように生活していた。ある夜、少女の娼婦テリー(クロエ・グレース・モレッツ)がロシア・マフィア(最近、黒幕は"ロシア"が多いか)にひどい目を受けたのを知り、単身対決する。巨大なロシアマフィアは総攻撃をかけてくるというパターン。

なんとなく『タクシードライバー』に似たシチュエーションであるが、悪人をやっつけていくところは時代劇のようなスッキリ感がある。現代の「必殺仕事人」か。ストレス解消に最高な、痛快映画である。PG12というのも逆にいい!

監督は『トレーニング・デイ』でデンゼル・ワシントンにアカデミー賞を呼び込んだアントワン・フークワ。二人の久々のタッグ作品! 今年"60歳"になる演技派デンゼルのクールなアクションは相変わらず。『キック・アス』や『キャリー』で個性が光った、なんと"17歳"のクロエ・グレース・モレッツが娼婦役へ挑戦する。

最近、日本も凶悪事件も多く、街中や電車の中にモラルをなくしたひどい中年も、若い人も多い。治安の悪化、悪人の増加はなんとしても食い止めることが経済発展の大前提である。先日、アメリカに行ってきたが、日本の方がモラルをなくしつつある雰囲気がした。

筆者が好きな人物の一人に二宮尊徳(金次郎)がいる。まず、努力を惜しまず、忍耐して諦めず、実行力・ハングリー精神を持つという資質を、筆者は好きである。「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である」は、彼の言葉といわれている。また、その道徳的な精神に沿って、「金銭を下付したり、税を免除する方法では、この困窮を救えない」「まことに救済する秘訣は、彼らに与える金銭的援助をことごとく断ち切る事。かような援助は、貧欲と怠け癖を引き起こし、、、」とも言っている。

現在の量的金融緩和や最近のさらなる財政政策は短気的な経済政策は、この援助に近いのではないか。筆者は、経済政策は「教育」と同じではないかと思っている。本人に永遠に借金してまで援助をすることではなく、辛くても、その本人の一生を生きて行く強さを身に付けさせることだと考える。無責任なやさしさに基づき、短期的な景気対策で、世界最大の借金国になり、長期間問題を解決できない「日本病」とまで海外から揶揄される最近の事態は、やや悲しい。

二宮金次郎の薪を背負って歩きながら本を読んでいる像はかつて、小学校の校庭でよく見かけた。彼が読んでいる本は儒教の経書である四書「中庸」「論語」「孟子」「大学」の中の「大学」といわれている。この本は、自己修養から始めて多くの人を救済する政治へと段階的に発展していく儒者にとっての基本綱領が書かれていた。

最近、「歩きスマホ」の方を良く見かける。見た目は一緒であるが、現代では、道徳やモラルの点では逆であり、危ない。常識のある方はやめた方がいい。

「東京国際映画祭」が10月23日(木)~31日(金)の9日間開催されます。世界中から最新の話題作・注目作を一挙上映。映画を好きな方は参加してはいかがですか。詳しくは以下をご覧ください。筆者もプロの映画評論家として参加します。

「宿輪ゼミ」

経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで"9年目"に突入しました。第168回は10月22日(水)、第169回は11月5日(水)に開催!

Facebook経由の活動が中心となっており、以下からご参加下さい。会員は6400人を超えました。https://www.facebook.com/groups/shukuwaseminar/

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