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2019年09月10日 06時38分 JST | 更新 2019年10月17日 10時34分 JST

共感してくれるお客様の「円の中」。そこから敢えて一歩、踏み出してみる

【連載】マザーハウス・山口絵理子が歩む"ThirdWay”(第3話)

「途上国から世界に通用するブランドをつくる」––。こうしたビジョンを掲げて、バッグやジュエリーなどを生産・販売している「マザーハウス」。

コンセプトに共感して商品を買う人もいますし、お店にたまたま立ち寄って「いいな」と思ってペンケースやパスケースを手に取る人もいます。

買い物をしているときの気分や会社の成長ステージによっても変わっていく「お客さまの共感ポイント」。マザーハウスの山口絵理子さんはどのようにして、そうした「思い」と向き合ってきたのだろうか。 あえて「心地よい円」から踏み出す大切さについても語ります。

ハフポストブックスから出た山口絵理子さんの最新刊『ThirdWay 第3の道のつくり方』 (ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)の内容を再編集して、山口さんが実践する生き方・働き方「ThirdWay」の極意を伝える全13回連載。第3回は、「コンセプト消費」の限界についてお伝えします。

 
マザーハウス提供
マザーハウス提供
 

お客様には「色々な共感」がある 

お客様は様々な気持ちでマザーハウスの商品を手にとってくださる。

「途上国から世界に通用するブランドをつくる」というビジョンに共感をして買い物に来てくれる方もいる。たまたま気に入った商品を持ち帰った後にウェブサイトやメルマガを通じて途上国のストーリーを初めて知る方もいる。

いずれも大切なお客様だが、それぞれの「共感ポイント」は違うのだ。

起業したばかりの頃は、私のビジョンやストーリーに賛同してくれて、大切なお金を支払ってくれた方々が多かったように思う。しかし、あえて自分たちに厳しいことを言うと、それだけだと一つの小さな円の中で行われる商売に過ぎない。

店を増やしたときには、別の方法でお客様にアピールすることも必要だった。企業理念など「コンセプト共感」だけでなく、商品の力で買って頂く「モノ共感」も大切になってきた瞬間だ。

デパ地下でチーズケーキを買うときを考えてみる

私が好きなチーズケーキにたとえて説明してみよう。東京に1店舗しかない、オリジナリティのあるチーズを使った、チーズケーキ屋さんがあるとする。

マイナーなエリアにあり、駅から徒歩15分もかかるのに、長い列ができていつも満員。並ぶ人の全員が、そのチーズケーキを知ってわざわざ来ている「目的客」の方になる。

しかし、このお店が百貨店のデパ地下食品売り場のスイーツコーナーに出店する場合、お客様の多くは「通りすがり」の方になる。

路面店でやっていた情熱的なチーズのつくり方を説明する余裕もなく、「見ただけで美味しそうと思えるか?」が厳しく問われる。その時間は、2秒ぐらいかもしれない。

家路を急ぐお客様に瞬間的に伝わる情報ってなんだろう? サイズが限られたショーケースの中で、どうケーキを並べたらいいのか。

「競争に勝つ」ために考えなければならないことは山ほどある。迷っている間に、隣のライバル店にお客はどんどん流れていく。

しかし、この厳しさが本当の意味で「お客様に選ばれること」だと思っている。

一流の場所にあえて身を置く

私たちマザーハウスは、「コンセプトがいい」とよく言ってもらえる。とても嬉しいし、そこに共感していただくのは、私たちにとっても誇らしい。

しかし、それだけで商売が成り立つほど甘くない…ということも知っている。

背景のよさでモノを買えるには、お値段の限界がある。私たちの商品の単価は2万円から高いものは8万円程度。

それって自分に似合うのだろうか。生活のどんな場面で役に立つのだろうか。買ったら、テンションが上がるかな。誰かに褒められるかなぁ…。

様々なことをお客様は考えながら商品を買う。

ともすると、企業の創業期には、「共感してくれるお客様」の「円の中」に会社が留まってしまうことがある。それは心地よく、周りは味方ばかり。

けれども、本当にビジョンを達成したいならば、共感してくれるお客様を大切にしながら、そこからぐぐっと大きな外周へ出る勇気と覚悟も必要なんじゃないかなぁ、と思う。

そこで初めて個人商店から組織へ、単品からブランドの世界観へ、ぐるぐると「らせん階段」をのぼることができる。ときどき痛みを伴うが、社会へ発信したいメッセージがあるならば、避けてはいけないのかもしれない。

私の場合、「商品をよくしたい」という思いがその痛みを耐えさせてくれた。

コンセプトを大事にして活動をスタートさせ、ニッチなポジションでも個性を大事にする。個性あるお客様と強くつながる。

次に、通りすがりの人の目にさらされる環境にあえて飛び込んでいく。

そして次の段階では、さらに高みを目指して、一流の場所に自分たちの身を置く。

これが、私たちが選んできた道なのかもしれません。

(編集協力:宮本恵理子・竹下隆一郎/ 編集:大竹朝子)

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山口絵理子さんの著書名「Thirdway(第3の道)」というメッセージは、ハフポスト日本版が大切にしてきた理念と大変よく似ています。

これまで私たちは様々な人、企業、団体、世の中の出来事を取材してきました。多くの場合、そこには「対立」や「迷い」がありました。両方の立場や、いくつかの可能性を取材しつつ、どちらかに偏るわけでもなく、中途半端に妥協するわけでもなく、本気になって「新しい答え(道)」を探す。時には取材先の方と一緒に考えてきました。

ハフポストは「#私のThirdWay」という企画で、第3の道を歩もうとしている人や企業を取材します。ときどき本の抜粋を紹介したり、読者から寄せられた感想を掲載したりします。