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2019年08月14日 08時01分 JST | 更新 2019年09月22日 11時29分 JST

世の中には様々な対立がある。どちらかに「偏りたくない」と思っているあなたへ

【連載】マザーハウス・山口絵理子が歩む"ThirdWay”(プロローグ)

Eriko Kaji
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途上国で生産したバッグやジュエリーを東京など世界各地で販売している「マザーハウス」代表取締役兼チーフデザイナーの山口絵理子さん。起業から13年。途上国で雇用を生み出し、国の発展に貢献すると同時に、スタッフ600人を抱える企業を経営してきた。

途上国を豊かにしたいという<理想>。日々厳しいビジネスの現場に立ち、13年連続で売り上げを伸ばしてきたという<現実>。両方の目標の間で揺れ動きながら、どちらかに偏ったり、あきらめたりすることなく、自分の道を歩いてきた。

山口さんはその道を「Third Way(第3の道)」と呼ぶ。

仕事や人生で、私たちは多くの対立と向き合っている。選べない、偏りたくない。そんなときどう考えたら良いんだろう。山口さんに、「その歩き方」を語ってもらった。

ハフポストブックスから刊行された『ThirdWay 第3の道のつくり方』 の内容を抜粋したり一部編集しながら、山口さんが実践するThirdWayの極意を全13回の連載でお伝えします。まずはThirdWayがなぜ必要か? を問いかける「プロローグ」をお届けします。

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二項対立を超えて

男、女。右、左。西、東。先進国、途上国。都市、農村。論理、創造。組織、個人。家庭、仕事。そして理想と、現実。 

世の中には、ほとんどすべてのものごとに、二つの軸が存在する。

言葉を換えると、すべてのものごとには裏も表もある。

ときに、これらは反発する。〝両極〟として対立のポジションをとり、ものごとが前に進むことを阻む。

対立の解決のために、多くの人が悩む。

結果、導き出されてしまう答えは、「足して2で割る」といった妥協点だったり、あるいは「どちらかだけを取る」「どちらも捨てる」といったあきらめだったりする。 

でも。

本当にそれだけが答えだろうか?

なぜ世の中はこうも、二つに分断されているんだろう。一方のポジティブは、もう一方のネガティブを生み出さなければいけないのだろうか?

私は、そんなとき、「第3の道─サードウェイ(Third way)」を歩んでいく。

「サードウェイ」、この言葉は聞き慣れないかもしれない。

いわゆるコーヒーの世界や、ワインでサード「ウェーブ」と言われているものとは違う。私がこの本でお伝えしたいサードウェイは流行に関するものではなく、その真逆、生きるうえで、仕事をするうえでの考え方であり、思想である。

私はそれを「相反する二軸をかけ合わせて新しい道を創造する」と定義している。

もう少し詳しく説明をすると、たとえば、目の前にAとBという選択肢があるとする。それらは対立している、まったく異なる二つの選択肢だ。

その場合、私たちは、どちらか一方を取るか、または中間地点としての選択肢Cを見いだそうとしてきたと思う。選択肢Cは、多くの場合「バランスをとる」ことであり、ある意味では「妥協点」でもあり、ある意味では「最適解」と呼ばれることもある。

私が本書で提示するサードウェイは、そうではない。AとBのいいところを組み合わせて、新しいものをつくる。そして、ときにAに寄ったり、Bに寄ったりしながらも、らせん階段をのぼるように上昇させていく。

Mykyta Dolmatov via Getty Images
Buisnesswoman climbing career steps vector concept. Symbol of ambition, motivation, success in career promotion. Eps10 vector illustration. Business opportunity concept for feminism. Woman in business

サードウェイを実践した13年間

私は大学を卒業して、バングラデシュに単身で渡り、マザーハウスという会社を2006年に起業した。バングラデシュのほか5カ国の途上国でつくったバッグ、ジュエリー、アパレルなどを国内外38店舗で販売している。売り上げは13年間、一度も落としたことがない。日本にも海外にも、自慢の仲間たちがたくさんいる。 

途上国と先進国を行き来し、9カ国で仕事をしてきて、スタッフ約600名と共に輪をつくろうと挑戦していく中で、少しずつ、少しずつ自分の中で形づくられ、自分自身を支えてきてくれた考えが、「サードウェイ」だ。

25歳で起業したときから掲げてきた言葉は「途上国から世界に通用するブランドをつくる」だ。「途上国」と「世界」。そして「途上国から」と「ブランドをつくる」。それぞれ相反する二つのものを組み合わせている。

もともと、対立軸にはさまれているブランドだ。

そのミッションを掲げながらものづくりを必死で続けてきた道のりの中で、「中間地点を探るだけでは不十分だ」と何度も、何度も、涙し、苦しんできた。 

直面する問題、反発、軋轢、格差、それらを乗り越えて一歩先に進むとき、私にとっての「最適解」は「中間地点」ではなかった。

常に心がけてきたことは、「かけ離れたものだからこそ、組み合わせてみよう。離れていた二つが出会ったことをむしろ喜び、形にしてみよう。これまで隔たりがあった溝を埋めて、新しい地をつくろう」。つまり、バランスを取るのではなく、新しい創造をする思考だ。

ときには衝撃であった。ときには、衝突であった。ときには、反発を生んだ。しかし、その痛みがあるからこそ、それで終わらせたくないと思った。

衝突や反発を、解決することだけにとらわれてはいけない。

問題解決よりも、出会ったことによる新しい化学反応を生み出そう、そんな積極的な姿勢が、夢を追い続けさせてくれた。

「もしかしたら、これは生活でも役に立つかもしれないな」

「もしかしたら相反する二つの間で悩み、葛藤している人たちにとって、プラスになるかもしれないな」

そういう思いが湧き上がり、この本を書いた。 

1年ほど前、5カ国から職人を呼んで、松屋銀座さんの一階で実演販売をした。

セリーヌ、フェンディ、ルイ・ヴィトンの並ぶフロアで、ベンガル人がミシンを扱っていて、実際にお客様が安くない私たちのバッグを選んでくださる。

その光景は、私の挑戦を象徴するコンセプチュアルな一シーンだった。そこには「途上国」や「世界」といった対立軸では表せない、誰も見たことがないピカピカの価値が生まれていた。この瞬間が、たまらない。

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松屋銀座での催事の様子

 

サードウェイのつくり方

「サードウェイ」を絵でイメージするとしたら、こんな感じだ。

丸いものが集まるグループと、四角いものが集まるグループがあって、二つは遠くにあって交わろうとしない。

丸と四角を足して2で割って「丸っぽい四角」をつくっても、魅力的にはならない。

そうではなくて、「両者のいいところを組み合わせて、新しいものをつくる」という手法をとってみるのだ。

まず、目を凝らしてそれぞれを観察する。それぞれの素敵なところを見つける。

キラリと輝く魅力を持ち寄って、ベストな組み合わせで形をつくってみる。

縦一列に並べるのがいいか? ジグザグに配置するのがいいか? 積み木のように、四角のパーツと丸のパーツを使ってデザインしていく。

このときに大切なのは、「何をつくりたいのか?」「何を大切にするのか?」を自分に問い続けること。そして、面倒がらずに手を動かす。これらの試行錯誤を続けることによって、価値は高まり、上昇していく。

たとえば、大量生産と手仕事。

大量生産は途上国において負の側面もあるけれど、利点だっていくつもある。工場運営のノウハウ、効率的な素材管理、調達手法、人材育成手法、それらはいつだって役に立つ。

一方で、手仕事のよさは、高いレベルの職人技術が消えることなく開花され、人間の温もりが表現される部分、愛が商品に宿る部分にある。

ここでのサードウェイは「手仕事を〝効率的に〟やるには?」という問いから始まる。

一見、不可能に感じられたとしても、あきらめずにトライを続ければ、答えは必ず見つかる。少なくとも、私は複数の答えを見つけてきた(本章をお楽しみにしてほしい)。

そして、この問いの答えには、日本を含め、世界中の「伝統技術の未来」を守るヒントがあると思っている。

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この本の中で取り上げるのは、「社会性とビジネス」「デザインと経営」「個人と組織」「大量生産と手仕事」「グローバルとローカル」という5つの軸だが、日常生活を送る上で、日々直面するさまざまな二項対立は山ほどある。

若者と高齢者、禁煙と喫煙、労働と休息、管理する人とされる人、男性と女性……。

そういったものごとの間で、私たちは生きているし、揺さぶられ、一方に寄りすぎて、他方を無意識に傷つけたりするが、その反対もまたある。

その都度、私たちは、ついつい「妥協点を探る行為」を求めがちだけれど、きっとそれだけでは、消耗していく。

私は両者の交差点で生まれるアイディアや共感、相互作用が、もう一段高い次元での解決策を、広く社会に提供するものであると信じている。

何より、そのほうが楽しい。ワクワクする。無理がなくて、長続きする。だから、サードウェイという考え方を一人でも多くの人に知ってほしいと、強く思った。

この本は、私─山口絵理子という個人が体験してきた「サードウェイ」のエピソードとその概念、考え方をまとめたものだ。

会社の経営とプロダクトのデザインを担い、先進国と途上国を行き来し、大量生産と手仕事を組み合わせて、高い目標へと向かってきた13年の経験を、初めて「サードウェイ」という一つの軸で振り返ってみた。

私の短い経験だけがベースになっている。それでも、自分がやってきたことしか、書いていない。

この本を手に取ってくださったあなたの日常に、「サードウェイ」という思想が、実践的に、少しでも役に立つことがあれば、とてもうれしい。

(編集協力:宮本恵理子・竹下隆一郎/ 編集:大竹朝子)

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山口絵理子さんの『ThirdWay』をお読みいただき、感想をメールかTwitterでお寄せいただいた方の中から抽選で1名様に、山口さんが自らデザインしたThirdWay特製トートバッグを差し上げます。メールの場合には、book@huffingtonpost.jpまで感想をお送りください。
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ご応募は《10月11日17時》まで。まだ本をお持ちでない方は、全国の書店かAmazon(リンク)などのオンライン書店で!

皆さんのご応募をお待ちしております。

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山口絵理子さんの著書名「Thirdway(第3の道)」というメッセージは、ハフポスト日本版が大切にしてきた理念と大変よく似ています。

これまで私たちは様々な人、企業、団体、世の中の出来事を取材してきました。多くの場合、そこには「対立」や「迷い」がありました。両方の立場や、いくつかの可能性を取材しつつ、どちらかに偏るわけでもなく、中途半端に妥協するわけでもなく、本気になって「新しい答え(道)」を探す。時には取材先の方と一緒に考えてきました。

ハフポストは「#私のThirdWay」という企画で、第3の道を歩もうとしている人や企業を取材します。ときどき本の抜粋を紹介したり、読者から寄せられた感想を掲載したりします。