"3世代同居の促進"は介護離職・介護殺人予備軍を作る愚策 〜 子育て支援にはならない・・・

3世代同居を促進するということは、現役世代から介護保険料を取りながら、祖父母の介護を現役世代に押し付けることに他ならない。

今月17日付け共同通信ネット記事などによると、国土交通省が、省エネやバリアフリーに係るリフォーム減税制度の対象に3世代同居のための増設工事を加えることを検討しているとのこと。

《記事要旨》

・祖父母が同居して孫の面倒を見るといった世代間の支え合いにつなげる狙い。

・減税対象となる工事費は最大250万円。

・政府は「一億総活躍社会」を打ち出しており、国交省は住宅政策による後押しが必要と判断。

・国交省によると、3世代同居について、30~40代の約20%が理想的と考えている一方、実際にはこうした世帯は全体の5%。

一億総活躍社会の実現に向けて現在、一億総活躍国民会議などで検討が進められている。主要テーマは子育て支援の充実や介護離職ゼロ化など。これに関して、3世代同居の促進のための優遇措置は、住宅政策からの後押しであるとの触れ込み。しかし、この程度の金額で3世代同居が進むとは到底思えない。

というか、それ以前に、3世代同居は介護離職や介護殺人を増やす可能性を高める。

子育て支援の充実になるとも思えない。実際に子育てをしてみればわかるが、祖父母が我々を育てた時代と今とでは、子育てに関する知識や環境が大きく違っている。はっきり言えば、我々の親たちの助言は、我々の子育てには役立たないことが多い。

政府は3世代同居を本気で進めようとしているようだが、私は絶対反対。昔の3世代同居を現在に当てはめようというならば、時代錯誤も甚だしい。自分の曾祖父母や祖父母たちは、亡くなる直前まで働いていた。

今の高齢者は違う。だから介護保険法が2000年に施行されたわけだが、3世代同居を促進するということは、現役世代から介護保険料を取りながら、祖父母の介護を現役世代に押し付けることに他ならない。

介護保険財政が逼迫している事情も理解できる。であれば、公的介護保険サービス対象について、

①現役世代同居人のいる高齢者を財源の範囲内で優先する、

②同居人のいない高齢者はIT見守りに限定する、

③財源の範囲内で介護職賃金を極力引き上げる、

といったような介護保険制度大改革を行うべきだ。そうでないと、介護システムそのものが本当に壊死していくのではないだろうか。

自分の親の介護は、介護のプロに任せるべき時代に入っている。今も、介護人材確保難から介護事業から撤退する事業者が増えている。今日もそういう話を、某介護事業会社社長から直に聞いたばかりだ。大家族主義に回帰させようとしても、"世代間の支え合いを"などという美辞麗句っぽい精神論では全く通用しない。

介護離職ゼロの目標は、「介護殺人ゼロ化」と「介護殺人予備軍ゼロ化」であるはずだが、3世代同居の促進は、それとは完全に逆行する。

尚、3世代同居世帯の割合について、記事では「全体の5%」と書かれているが、総務省統計局の直近の調査結果〔下の資料〕によると、平成25年現在で約5.9%(50,112世帯中2,953世帯)。

<資料>

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