増える「Zoom飲み」や、自宅での「一人飲み」。 お酒に依存しないための3つのポイントを専門家に聞く

新型コロナの影響で、飲酒量は増えていませんか?アルコール依存症を中心に、依存症問題に取り組んできた斉藤章佳さんに、気をつけるべきポイントを聞きました。
Zoom飲みのイメージ
Zoom飲みのイメージ
mocha via Getty Images

「Zoom飲み、終電も閉店もないので、やめどきがわからず酒量が増えた」

「画面に向かってひたすら飲んでいたら、ピッチがあがっている」

「外出自粛のストレスで、お酒の量が増えている気がする」……

新型コロナの影響で、働き方や生活スタイルに変化が起きる中、SNSでは「お酒の量が増えた」という声が少なくない。

コロナとの闘いは長期化する可能性があるともいわれ、いつまでこの生活が続くかわからない。普段とは違う飲酒スタイルと、どう付き合えばいいのか。

アルコール依存症を中心に、様々な依存症問題に取り組んできた、大船榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳さん(精神保健福祉士・社会福祉士)に、コロナ禍でお酒に依存しないための「3つのポイント」を教えてもらった。

オンラインでのライブ配信インタビュー(#ハフポストLIVE)に応じた斉藤章佳さん
オンラインでのライブ配信インタビュー(#ハフポストLIVE)に応じた斉藤章佳さん
HuffPost Japan

① Zoom飲みは「時間」と「量」を決める

ポイントの1つめは、オンラインの飲み会に参加する際には、あらかじめ飲む時間と飲む量を決めておくこと。

個々人がお酒を持ち寄って、パソコンやスマホ越しにバーチャルな飲み会を楽しむ「Zoom飲み」。物理的に会えなくても、同僚や友人と楽しい時間を過ごし、ストレスを分かち合う上で効果的だが、「帰宅しなくてもいいという安堵感から泥酔するまで飲んでしまうという声もある」と斉藤さんは指摘する。

「そもそも在宅勤務になっている人は、人とのつながりを感じにくくなることで孤独な状態になります。孤独を感じれば、『この辺でやめておこう』というストッパーがききにくくなる。それに加えて、お店の閉店時間や終電などの制約がない状態というのは、問題飲酒になりやすい条件がそろってしまっているといえます」

イメージ写真
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Bobby Coutu via Getty Images

また、斉藤さんが指摘するのは「画面上では、他人と繋がっているようでも実態は『ひとり酒』『一人飲み』である」という点だ。

「一人飲み」というのは、アルコール依存症になりやすい飲酒習慣の1つであり、そういう意味でも注意が必要だという。

そこで重要になるのが、あらかじめ飲酒の予定を立てること。

Zoom飲みが始まる前に、何時から何時まで、量はこれだけ、と決めてからのぞむことで、自分の中に「ストッパー」を設定することができる。

全体の量を最初から決めておけば、ペースが早すぎた時に、ノンアルコール飲料やソフトドリンクを投入することもしやすくなる。

赤、青、黄色の3色で飲酒カレンダーをつけてみよう

2つめのポイントは、カレンダーを使って自分の飲酒パターンを把握しておくこと。

斉藤さんは、例えば、赤、青、黄色の3色のシールを使いながら、自分の飲酒記録をとっていく方法を提案する。

【赤:お酒をたくさん飲んだ日(目安は純アルコール40g以上)】

【黄色:お酒を少し飲んだ日(目安は純アルコール20〜40g)】

【青:飲まなかった、或いはほぼ飲まなかった日】

といった具合だ。

「純アルコール20g」というのは、500mlの缶ビール1本程度に相当する。

このように色分けしてみると、自分の飲酒パターンが把握しやすいという。
このように色分けしてみると、自分の飲酒パターンが把握しやすいという。
ハフポスト日本版で作成

これは依存症の人たちが、酒量を減らしていくために最も効果的だとされる「レコーディング」と呼ばれる手法に基づくもの。

しばらくシールを貼り続けていくと、「仕事で失敗した日によく飲んでいる」、「家で一人きりの日に飲んでいる」など、自分の飲酒傾向が見えてくる。

「人間、何の因果もなく急に飲酒量が増えるということは考えにくく、何か生活に密接に関わる出来事が起きているはず(斉藤さん)」なので、その「何か」とは何か、を知ることがまずは大事だ。

③困ったら専門家に相談しよう

最後に覚えておきたいことは、困ったら専門家に相談するということだ。

お酒によって人間関係に問題が起きるなど、社会的損失や身体的損失が出てきてしまったら、無理をせずに専門家に相談すること。

斉藤さんによれば、「専門家に相談」といっても様々な選択肢がある。お酒の量を減らすための「減酒外来」などもあり、その人の状況によって「段階的にアルコールの相談ができるようになっている」という。

異変を感じたら無理に抱え込まずに、自分にあった向き合い方を探すためにも、まずは専門家に相談をしてみるのが適当だ。

(記事の最後に相談窓口を記載しています)

いつまで続くかわからないウイルスとの闘いの中で、ストレスや不安を抱えてしまうのは当然だ。

そうした不安感や焦燥感を、お酒を飲むことで解消しようとすることは「逆効果になるので本当に気をつけて欲しい」と斉藤さんは念押しする。

「否定的な感情をお酒で解決しようとすると、酔いが覚めた後、さらなる自己否定につながりやすいと言われています。こうした不安な状況ではありますが、飲酒=悪ではないので、個々人が自分の飲酒習慣をマネージメントしながら楽しく付き合っていくのが大事ではないでしょうか」

まずは、今日から、飲む量の計画を立ててみるのはどうだろうか。

<「自分が/家族がお酒を飲みすぎている…」と感じた際の相談窓口>

・全国の「精神保健福祉センター」

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/mhcenter.html

・全国の「保健所」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hokenjo/

・「依存症対策全国センター」

https://www.ncasa-japan.jp/

・「大船榎本クリニック」

http://www.enomoto-clinic.jp/hp-list/ohfuna/

斉藤章佳さんの「しくじらない飲み方-酒に逃げずに生きるには」(集英社)より一部抜粋

※新型コロナウイルス感染拡大の影響で運営時間・方法などに影響が出ている可能性があります。

斉藤章佳さんにお話を聞いたライブインタビュー「 #ハフポストLIVE」は、以下から全編ご覧いただけます。

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