「なんでこの人が自分より上なの?」って葛藤、イヤじゃないですか――あえて失敗しながら深めたTokyo Otaku Modeのユルめチーム観

Facebookページの「いいね!」は1300万を突破! アニメやマンガのオタクコンテンツを世界に発信し、世界中のファンを魅了する「Tokyo Otaku Mode」。今回は、世界規模で脚光を浴びるTOMのチームの作り方について、ベストチーム・オブ・ザ・イヤーが聞きます。

Facebookページの「いいね!」は1300万を突破! アニメやマンガのオタクコンテンツを世界に発信し、世界中のファンを魅了する「Tokyo Otaku Mode」(以下、TOM)。前編ではTOMの立ち上げやプロジェクトの快進撃をたっぷりと話してもらいました(オタクカルチャー発信源「Tokyo Otaku Mode」に1300万いいね!――「やりたい」を追求、シリコンバレーも世界も巻き込めた)。

後編では、世界規模で脚光を浴びるTOMのチームの作り方について、CEOの亀井智英さん、COOの安宅基さん、CTOの関根雅史さんにベストチーム・オブ・ザ・イヤーが聞きます。

■「Googleよりも、TOMで経験を積みたい」、世界中から集まるオタクコンテンツへの愛

――現在のTOMの収益源は?

亀井:現状、広告とEコマースの2つです。広告はある程度売り上げが立ち始めていて、主に企業とのタイアップですね。Eコマースはまだまだこれからです。

安宅:「Otaku Camera」というスマートフォンアプリも出しています。マンガのような背景で写真撮影できる無料アプリで、全世界で400万ダウンロードされており、TOMの認知度向上につながっています。

(企業タイアップではDeNAや観光庁と組み、ソーシャルゲームの紹介や訪日外国人向けのページ制作を手掛ける。東南アジアへの出店を強化するローソンとは、TOMのサイト内にスペシャルページ経由で、日本アニメとのコラボキャンペーンやオリジナルグッズを紹介した)

――米国と日本にあるTOMチームの陣容は?

亀井:創業メンバーは6人で、今は米国で10人、日本で30人程度が働いています。創業当初はほとんどがインターンやボランティアで、コストを極力抑えてやってきましたが、今は社員やアルバイトの方が中心です。

安宅:「やっていることが面白いから」ということで来てくれた人ばかりですね。「海外で日本のアニメにハマって、こういう仕事がしたかった」という帰国子女や、アメリカの大学に通う日本人の留学生もいますね。

亀井:スタンフォード大学の女の子もいますね。TOMで仕事をする理由は「Googleにはいつでも入れるけど、日本のコンテンツに触れる機会はなかなかないから」だそうです。

■「なんでこの人が自分より上のポジションにいるの?」っていうチーム、イヤじゃないですか

――組織体制ってありますか?

安宅:「EC」「メディア(広告)」「開発」と3つのユニットはありますが、きっちりした階層はつくっていないですね。基本的にプロジェクトリーダーがいて、あとはみんなフラットという感じです。

亀井:サラリーマンをしていると「なんでこの人が自分より上のポジションにいるの?」って人が必ずいるじゃないですか(笑)。そういうの僕はあまりしっくりこないんです。

TOMのリーダーにも「あなたをリーダーに選んだのは偉いからではなく、メンバーの中で一番リーダーという役割に適しているからだよ」と伝えています。

(Tokyo Otaku Modeというチームについて考える)

安宅:組織の作り方として、あえてあまりかっちりした組織にしないようにしている面もあります。ベンチャーは、ある事業を突然やめることもあれば、逆に成長事業には人員を厚くしようということもある。とにかく変化のスピードが速いので、組織変更も頻繁に起こるんです。

そんな時、ガチガチの組織だと変化に対応できませんよね。だからユルめの組織にして、その時々の状況に応じて柔軟に配置を変えられるようにしています。

亀井:人数が増えると「自分や会社が今、どんな目的でこの動きをしているのか」が分かりにくくなります。だからボードメンバーでやるべきことを決め、「TOMが目指すミッションやビジョン」を、全スタッフにきちんと説明することにも心を砕いています。

■同じ船に乗れるか、苦楽をともにできるか――メンバーの選び方

――TOMのメンバーの選定条件はありますか?

亀井:価値観が近かったり、志を一つにできる人でしょうか。感覚的には「一緒にいて苦痛じゃない人」ですね。長く一緒に仕事をするわけなので、なるべく価値観が近い方がいいですよね。

安宅:考え方や価値観が近い人とする仕事は、コミュニケーションコストがかからないんです。「一を聞いて十を知る」ではないですが、説明に割く時間が少なくてすむ。スタートアップはスピードがとても大切なので、コミュニケーションに時間を取られると、本当にやるべきことができなくなる。もちろん今後、組織が大きくなれば、そうも言ってられないのかもしれませんが。

亀井:チームを作る時は「ずっと同じ船に乗っていられるか」が大事。結婚相手と同じように、苦楽を共にできるか、精神的な部分でつながりを持てるか、ですね。

その点、TOMは最初の出発点が"友達"だったことが大きいですね。基本的に僕と気の合う人が集まっていて、メンバー同士もそりが合わないことはなかった。もちろん、侃々諤々の議論は年中していますが、そこで意見が合わなかったからと言って仲違いすることはありません。

――「非常に優秀で、スキルも高いけど、人間的にちょっと合わない」という人がいたらどうしますか?

安宅:外部スタッフとして仕事をお願いするでしょうね。中に入ってもらうとなるといろいろな意味でストレスがかかるので。

■立ち止まるよりも「あえて失敗すること」を選ぶ

(Tokyo Otaku Mode)

――チームでプロジェクトを進める上で大事なことは?

安宅:スタートアップはとにかく忙しく、長時間働くのも当たり前。だからこそ、楽しんで仕事ができる環境が大事です。ツライと長く続かないし、特にクリエイティブな仕事に悪影響が出ますから。その点、亀井は率先して社内の雰囲気を明るくしていますよね。

亀井:笑いを取るのは割りと得意なので(笑)。あとはやはり情報共有ですね。特に会社を作った際は、全部の仕事を一人で抱え込みたくなります。僕もその傾向がありますが。この仕事の適任は誰かを把握して、任せられることは人に任せることが重要です。

安宅:「失敗を恐れない」ことも大切かなと。一番怖いのは立ち止まってしまうことです。「これは失敗するかも」と思っても、あえて動いて失敗してみることもあります。

亀井:一度失敗したら次はそれをしなければいいわけですから。そうやって失敗を1つずつつぶしていくと。成功に近づく。その意味ではむしろ早く失敗したほうがいいかもしれませんね。

■リーダーシップ? 状況に応じてベストな人が発揮すればいい

――リーダーシップについてはどう考えていますか?

亀井:うーん、難しいですね。ただ僕はリーダーの人だけがリーダーシップを持つのではなく、メンバー全員にリーダーシップを求めています。10人メンバーがいれば、タイミングや状況に応じてベストの人がリーダーの役割を担う。そのためには、メンバー全員がリーダーシップを発揮できるようになっていてほしいと思います。

――そんな亀井さんって、皆さんから見るとどんなリーダーですか?

関根:「かつがれるタイプ」の「かつぎたくなるリーダー」ですね。

安宅:「ミラクルを起こすリーダー」かな(笑)。亀井さんといるとありえないことが起きる。500 Startupsに選ばれたのもその1つです。

メンバーを信用するリーダーでもありますね。亀井さんからあれをやれ、これをやれと言われたことはありません。任せたらとことん任せてくれますね。

――チームでの仕事の進め方も独創性があふれますね。最後に、TOMの今後の展開を教えてください。

亀井:短期的には、まだヨチヨチ歩きの状態のEコマース事業を、独り立ちさせることが目標です。日本の魅力的な商品を海外にできるだけたくさん届けたいので、商品調達に力を入れていきます。また、様々なクリエイターの作品とコラボしていきたいですね。

一番できたらいいのは、TOM発の世界的クリエイターの輩出です。クリエイターの方々がTOMでつながって創作して、TOMという場で作品を発表してくれている。そういうクリエイターに海外からオファーが来て世界的にブレイクすると、僕らの存在意義が出てくる。1年以内にそういうモデルケースを生み出したいと考えています。

(取材・執筆:荒濱一/撮影:橋本直己/企画・編集:藤村能光)

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