2021年10月18日 16時32分 JST | 更新 2021年10月18日 16時32分 JST

「地域コミュニティが災害弱者を支える」阪神・淡路大震災を経験したコミュニティデザイナーが語る、人のつながりと防災

さまざまな視点から、#これからの防災を考える連載。第二回は阪神・淡路大震災を経験したコミュニティデザイナー 山崎亮さんと、人のつながりと防災について考えた。

Asuka Ito

自然災害が多いと言われる日本。国土交通白書2020によると、大雨や土砂災害をはじめとした自然災害の発生頻度はさらに増加傾向にある。防災は他人ごとではなく、日本に生きる私たちに深く関わる問題だ。

防災において欠かせない視点の一つが「コミュニティ」。本記事では、阪神・淡路大震災を経験したコミュニティデザイナー 山崎亮さんと、人のつながりと防災について考える。

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山崎亮(コミュニティデザイナー/株式会社studio-L代表)

人と人がつながる“えも言われぬ感覚”。「災害ユートピア」を日常に

阪神・淡路大震災が起こった1995年、大学でランドスケープデザインを勉強していた僕は災害対応の現場に携わりました。当時、慣れ親しんだ街がものすごい勢いで崩れている状況にショックを受けたのを覚えています。同時に、建物や都市をつくる勉強をしていたので、建物が倒れて人が亡くなるという事実にかなり悩みました。

一方で、震災を通じて被災者同士が支え合う姿も目にしました。子どもを亡くしてしまった人と、両親を亡くしてしまった人が励まし合う。公園でお互いの経験や思いを語り合う。そんな姿を見たとき、これは後にレベッカ・ソルニット(ノンフィクション作家)が「災害ユートピア」と名付けるのですが、非常事態において人と人のつながりはすごく大きな支えになると感じました。

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そこには、本質的に人と人がつながる“えも言われぬ感覚”があって…。これを大災害のときだけに思い出すのは、もったいないと感じたんです。その感覚は、阪神・淡路大震災の印象として今も強烈に残っています。

 

日本初「コミュニティデザイン学科」設立。東日本大震災の復興に貢献する人材育成を

大学卒業後は、建築設計事務所で公共建築を中心に設計をしました。公共建築は住宅と異なり、発注者(行政)とユーザー(地域住民)が必ずしも一致しないんです。そんななか「発注者の意見を聞くだけでは、ちゃんと設計できないのでは?」と疑問を抱くようになった。それならばユーザーの話を聞こうと思い立ち、ワークショップを始めました。

そこからワークショップの仕事が楽しくなって、2005年に独立。以降15年ほど、コミュニティの方々と一緒にデザインする「コミュニティデザイン」の仕事をしています。東日本大震災の際には東北芸術工科大学から相談を受けて、復興とまちづくりに貢献する人材育成を目指す、日本初の「コミュニティデザイン学科」を立ち上げました。

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学生たちにはとにかく現場に足を運び学んでもらいたい。被災地に貢献できる人材として、卒業後も東北で働いてほしい。そんな思いを込めてカリキュラムを組み立てました。今年で、一期生が卒業して3年経ちます。社会人経験を積んだ卒業生が、今度は教員として「コミュニティデザイン学科」に戻ってきてくれたらいいなと思います。

 

「地縁型コミュニティが災害弱者を支える」復興住宅での孤独死をいかに防ぐか

復興や防災において、その土地に縁のある人同士がつながる「地縁型コミュニティ」の存在はとても重要です。阪神・淡路大震災での反省の一つは、この地縁型コミュニティの欠如でした。当時、避難所は地域ごとに人が集まり運営されていましたが、復興住宅への入居は“抽選”にされました。戸数が限られるので、障がいがある人や高齢の人の抽選確率を上げることで、配慮がなされていたんですね。 

しかし、災害弱者が早く入居できるこの仕組みは、結果的に地縁型コミュニティをバラバラにしてしまいました。高齢者や障がい者の方たちは、地縁型コミュニティと共に生きてきた背景がある。「あの人困っているだろうな」と支えてくれる地域の人の存在が大切だった。けれど、コミュニティを解体して住宅に入れてしまったものだから、誰も助けに来てくれない、声もかけに来てくれないという事態が起きてしまった。

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その後、震災から約3年で、200人にのぼる人びとが兵庫と大阪にある仮設住宅や避難施設で、誰にも看取られることなく息を引き取りました。そういった経緯から「コミュニティ避難」が重要だと言われるようになったんです。つまり、地縁型コミュニティを「避難」というテーマ型コミュニティと一致させることが必要なのです。

 

限界集落での防災は、「世帯」よりも「家族」のつながりを

一方、現代の人口減少社会において、過疎地域での防災をどう考えるかも大切な論点です。熊本大学の徳野貞雄名誉教授は、血縁型コミュニティを中心とした「家族」のつながりが、一世帯の周りにどれくらいあるか可視化する研究をしています。

その調査によると、30分で移動できる圏域に、集落に属する人の家族の4割が住んでいる。60分圏域には8割、120分圏域だと9割が入ってくる。つまり、有事のときに9割の家族が2時間程度で集落へ駆け付けられるということです。

徳野貞雄氏の論文を元にstudio-Lが作成
集落に残る家族だけでなく外に出た家族にも着目する「T型集落点検」

一つ屋根の下で生計を共にする世帯だけではなく、家族や血縁の広がりまで見てみると、意外と近いところに住んでいることが多いんです。限界集落化しているような地域の防災を考える際、その集落に住む人たちだけでやろうとしないことも大切だと思います。地縁型コミュニティに閉じず、家族/血縁型コミュニティも考慮するといいのではないでしょうか。

 

企業と地域住民、行政の連携は社会を勇気づける

地縁型コミュニティを基盤にした防災のあり方を拡張するには、「企業」の存在も欠かせません。昨今は、「企業市民」という言葉があるように、企業も地域に根差す市民であるという考え方が一般的になっていますよね。

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例えば、トヨタ自動車は東日本大震災からの復興を目指し、岩手工場を拠点にハイブリッド車アクアの生産を開始したそうですね。アクアのような給電車を各地域で集め、避難訓練を定期的に催すのもいいと思います。給電機能を使ってできること・できないことを、地域住民同士が確認し合うことは安心にもつながります。

また、ライフラインである電力をみんなで分かち合い、共助することはコミュニティの力にもなる。企業が地域住民、行政と共にその力を活かすことができれば、社会を勇気づけられるのではないでしょうか。

トヨタ自動車のハイブリッド車アクアが誕生したのは2011年12月26日。東日本大震災が起きた年に、「メイド・イン・東北」を掲げて発表された。「東北復興の光になる」という願いのもと生産を開始したアクアは、今年7月にフルモデルチェンジ。給電機能を全車に標準搭載している。

さらに8月末からは、LINE上で防災に役立つ豆知識や、給電車の使い方の情報などが得られる「防災給電サポーター」をスタート。アクアをはじめ、給電車を持っている人びとの防災知識を深めることで、日本中に「助け合いの輪」を広げていこうとする取り組みだ。

これらのトヨタ自動車の活動が、社会を明るく勇気づけることを期待したい。

 

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