2021年09月16日 13時00分 JST | 更新 2021年10月05日 19時15分 JST

犬山紙子さん「女性だけがおにぎりを握るのは疑問」防災に“女性の視点”が必要な理由

9月は防災月間。東日本大震災で実家・宮城県が被災した犬山紙子さんと、女性の視点から防災について考えました。

Kaori Nishida

自然災害が多いと言われる日本。国土交通白書2020によると、大雨や土砂災害をはじめとした自然災害の発生頻度はさらに増加傾向にあります。防災は他人ごとではなく、日本に生きる私たちに深く関わる問題です。

防災において昨今とくに重視されているのが「女性の視点」。本記事では、東日本大震災で実家のある宮城県が被災した犬山紙子さんと、女性の視点から防災について考えます。

Kaori Nishida
犬山紙子(いぬやま・かみこ):エッセイスト、コメンテーター

「みるみる津波にのまれていく」実家のある宮城県が被災

私の実家は東日本大震災で被災した宮城県名取市にあります。大学卒業後は地元の出版社に就職して、23歳で退職。その後は10年ほど、自宅で難病の母の介護をしていました。 

東日本大震災が起きたのは29歳のとき。自分の本を初めて出版する年で、ブログなど原稿を頑張っていたころです。宮城と東京を行ったり来たりする生活で、3.11当日も私は東京のアパートにいました。

 

Kaori Nishida

震災が起きたことをテレビで知って、びっくりしました。「本当なのかな」と思いつつニュースを見ていると、名取がみるみる津波にのまれていく。昔、学校の授業で行った場所もどんどん流されていく…。最初は現実味がありませんでした。

 

「孤立してしまった姉と難病の母」緊急時に弱者が追いやられてしまう

当時すごく心配だったのがライフライン。というのも、実家は津波の被害は免れましたが、難病を患う母が自宅で酸素を吸入している状態だったのです。だから水や電気、ガスが止まってしまうと生きていくのが難しい。それが本当に怖かった。

父と私は宮城県外にいて、ずっと姉一人で母を支えてくれました。危機的な状況にもかかわらず、姉とは電話がつながらない。SNSでなんとかやりとりしましたが、姉の携帯電話の充電も長くは持たない…。「誰かに助けを求めたいけど、繋がらない」。そんな不安が、孤立してしまった姉にとって一番つらかったと思います。

Kaori Nishida

そのときに痛感したのが、弱い立場の人は緊急時にさらに弱い立場に追いやられてしまうということ。障がいのある人や高齢の人、女性といった弱い立場にいる人たちの権利を、緊急時にどうやって守るか。それがすごく大切だと感じました。

 

「女性だから、おにぎりを握る」のは疑問

私たち女性には生理があるので生理用品が必要。ですが緊急時には、女性用備品が不足しがちです。さらに、私自身は在宅避難でしたが、「避難所では、女性だからつらいことがある」という話も聞きます。

たとえば、女性だけが避難所のおにぎりを用意したり、炊事当番を任されたりした話。大切な仕事だからこそ性別役割分業が前提であってはいけないし、無償であることにも疑問を感じます。日ごろから女性は無償でケア労働をするもの、という前提ありきなんですよね。

Kaori Nishida

また、プライバシーの問題もあります。一部の避難所では衝立(ついたて)がない環境で、女性が着替えや授乳をすることを余儀なくされていた。これは酷ですよね。さらにトイレが必要数確保されない問題(※)もありました。

 
※スフィア基準(災害や紛争などの被災者すべてに対する人道支援活動を行う各種機関や個人が、被災当事者であるという意識をもって現場で守るべき最低基準の通称)では、「女性のトイレは男性トイレの3倍必要」とされている
 

このような避難所の環境づくりは、自治体によって多様性への配慮に差があります。そういった地域格差があることは問題です。緊急時、どこにいても安心して自分の人権や尊厳が守られることは最低限必要だと思います。

Kaori Nishida

 

弱者の主張を「生意気」と切り捨てる空気を変えたい

さらに悲しいと感じるのは、避難所での性暴力。たとえば、支援を必要とする女性に対して、「物資を分けてあげる」代わりに性行為を迫り、受け入れざるを得ない状況をつくるなど。このような権力を利用した性暴力は被災地でもありました。

他方で、被災地での性暴力は「でっちあげだ」とバッシングの対象となってしまうことも(※)。弱者の声が掻き消されてしまうのは、本当に悲しいことです。そもそも傷ついた被災者の方に追い討ちをかけるように、悲しみを増やすことはあってはならない。すべての人の権利が尊重され、守られることを徹底しないといけない。

※阪神淡路大震災(1995年)の被災地で発生した性被害は「デマ」だとする記事が、1997年に「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」を受賞。NHK「クロ現+」によると、警察への被害届が少なかったことなどで客観的資料が乏しいとされ、一部のメディアが「デマ」と報じたという。これによって、被害を訴えた女性たちはバッシングに晒された
Kaori Nishida

緊急時こそ、平時のジェンダー不平等が可視化されると思います。たとえば、防災マニュアル策定や避難所運営に参画するのは男性が多く、リーダーを担うのもほとんどが男性。そういった状況では、緊急時は女性が弱い立場に追いやられ、搾取されてしまいますよね。まさに普段の人権意識の低さと地続きだと感じます。

避難所の衝立やトイレもそうですが、女性が女性の権利を主張したり、マイノリティがマイノリティの権利を主張したりすると、「生意気だ」「贅沢だ」といった扱いを受けることもしばしば。けれど、自分の権利を主張するのは当たり前のことです。周囲からの非難を恐れて主張できなかったり、主張することに罪悪感を抱かせてしまったりする社会の空気は、本当に変えていかなければならないと思います。

Kaori Nishida

 

「車は命を守ってくれる」企業の取り組みは、社会の変化につながる

社会を変えていくには、企業の取り組みも重要です。たとえば、トヨタ自動車のアクアは、給電機能を全車標準搭載したそうですね。 

私自身、東日本大震災でライフラインの大切さを痛感しました。たとえば連絡手段である携帯電話を車で充電することで、連絡が途絶えて孤立する不安や恐怖を軽減することができる。

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一方、避難所で生活する人にとっても大容量の電源があれば助かるはずです。たとえば、暑さや寒さをストーブや扇風機で防げる。また小さなお子さんがいる家庭では、乳児用ミルクをつくるお湯を沸かすときも、給電可能な車があると便利ですよね。さらにそれが多くの家庭に普及している車に実装されているのは素晴らしいことです。

これまで車は移動手段だと思っていましたが、生きるために必要な電源になる。車は命を守ってくれる箱なんですね。

Kaori Nishida

これらの取り組みからは、「非常時に人々が困難を乗り越える一助になりたい」というトヨタ自動車の真摯な思いが伝わってきます。日本とは切っても切り離せない防災領域でのトヨタ自動車の努力は、社会全体に連鎖するものがあると思います。  

トヨタ自動車のハイブリッド車アクアが誕生したのは2011年12月26日。東日本大震災が起きた年に、「メイド・イン・東北」を掲げて発表されました。

「東北復興の光になる」という願いのもと生産を開始したアクアは、今年7月にリニューアル。給電機能を全車に標準搭載しました。

 

防災に役立つ車として、さらなる進化を遂げるアクアの情報はこちら。