クーデターはネット中継の中で起きている

トルコで起きた、軍部によるクーデターと見られる動きが、フェイスブック・ライブやツイッターのペリスコープを通じて、リアルタイムで、次々とライブ中継されていった。

トルコで15日夜(日本時間16日朝)に起きた、軍部によるクーデターと見られる動きが、フェイスブック・ライブやツイッターのペリスコープを通じて、リアルタイムで、ネットに次々とライブ中継されていった。

しかも、面的に広がりのあるクーデターような動きでも、それぞれが影響する"ライブ中継マップ"を見れば、首都アンカラや最大都市イスタンブールといった現場から、数多くの中継が行われていることが、ひと目でわかる。

現場のリアルタイムの様子を、世界地図から"神の目"で見ることが、当たり前の時代になった。

米国で、警官による射殺事件や警官に対する狙撃事件など、相次ぐ銃撃事件をネットのリアルタイム中継が生々しく映しだしたことを紹介したばかりだ。

この流れはますます加速している。

●スマホを手にした群衆

軍部が「全権掌握」との声明を出したのは、現地時間15日夜のようだ

そして、トルコと欧州をつなぐ、ボスポラス海峡の二つの橋や空港を封鎖した、と伝えられた。

そしてまさに、それらの現場から、リアルタイムのビデオ中継が次々に行われていた。

ペリスコープの中継マップを見ると、現地時間16日午前2時半の時点でも、イスタンブールで86人、アンカラで36人がリアルタイム中継をしていた。

現地時間16日午前0時32分、イスタンブールのアタチュルク国際空港が戦車などによって封鎖された様子を、ツイッターのペリスコープで中継したのはオマー・サッグさん

中継から7時間で22万人が視聴している。

ファーティフ・テズカンさんも午前1時6分、イスタンブールの空港付近を軍部の戦車が行き交う様子や、それを大勢の市民が取り囲み、挑みかかる様子を中継している。こちらも7時間で16万人が視聴した。

ギョクハン・デミレルさんは午前1時半、アンカラの市街に押し寄せた群衆が国旗を掲げ、混乱する様子を中継。こちらも中継から6時間で11万4000人以上が視聴した。

与党・公正発展党(AKP)の国会議員、アイセ・スラ・コセオグルさんは午前2時33分、ロケット弾がアンカラの国会議事堂に着弾する瞬間を、国会内から中継。6万人以上が視聴している。

フェイスブック・ライブにも、リアルタイム中継は続々と投稿されていった。

エルソイ・バイハンさんも午前2時、アンカラ北部の街、ボルの市街に押し寄せた市民の様子を中継。

アンカラ在住のムサ・サフパズさんは16日午前4時4分に市街の様子を撮影している。

●占拠された様子をライブ中継する

ただ中でも注目を集めたのは、CNNトルコ支局だ

軍部の兵士たちが局内に押し寄せ、一時的に占拠される状況を、フェイスブック・ライブで中継を続けたのだ

●ネットは遮断されたか

トルコのネット遮断を監視している「トルコ・ブロックス」は、クーデターの動きの最中の15日午後10時50分ごろから、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブの3つのサービスが、遮断、もしくは制限をかけられた、としている。

ただ、事態が進む中、依然として各地からのライブ中継は続いており、完全な遮断ではなかったようだ。16日の午前1時34分には、こうツイートしている。

我々のデータによると、2時間ほどのソーシャルメディアの制限はあったが、トルコにおけるインターネットの完全な遮断があったという証拠はない。

ツイッターの公式アカウントも、同様にこう述べている。

トルコにおいて完全な遮断を受けたわけではないが、我々のトラフィックを意図的に遅延させた疑いはある。

●大統領がフェイスタイムとツイッターで語る

渦中のエルドアン大統領も、クーデターの最中、ソーシャルメディアの中にいた。

16日午前零時29分、CNNトルコのツイッターは、エルドアン大統領が、フェイスタイムでのインタビューに答え、国民に対し、軍部が制圧した広場や空港に集まるよう呼びかけた、と伝えている。

16日午前4時21分には、ツイッターにこんな投稿をしている。

アラーの許しにより、このクーデターは掃討される。

そして午前6時41分には、「鎮圧した」とのツイートを流している。

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■ダン・ギルモア著『あなたがメディア ソーシャル新時代の情報術』全文公開中

(2016年7月16日「新聞紙学的」より転載)

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