2019年12月02日 10時54分 JST | 更新 2019年12月02日 10時54分 JST

「人工流れ星」でビッグデータ取得へ 12億円を調達したベンチャー、次の一手とは

世界初『人工流れ星』の実現を目指すALEが、宇宙の謎の解明に向けて、新たな一歩を踏み出す。COO藤田智明さんが事業構想を語った。

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人工の「流れ星」が夜空を駆けるーーそんな未来が近くまで来ているかもしれない。今回取材したのが、世界初『人工流れ星』の実現を目指す「ALE」COO藤田智明さん(29)。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2018年に同社へ。そこには「ビジネスで宇宙研究に貢献したい」という強い想いがあったーー。

人工流れ星事業『Sky Canvas』
「人工衛星を使って、流れ星をつくりだす」世界初の人工流れ星事業。軌道上の人工衛星から、特殊な素材の粒を放出し、大気圏に突入させることで、流れ星を人工的に再現する。流れ星の色や明るさ、光る時間の調整など、人工ならではのエンターテインメント性の開発も進めている。流れ星は最大で半径100kmという範囲で観測可能。たとえば関東地方では、3000万人が同時に、夜空に人工流れ星を見ることができる。スポーツイベントやシティプロモーションといった大型イベントでの活用など、新たな体験型エンターテインメントの実現が期待される。

日本発、宇宙ベンチャー「ALE」。世界初、人工流れ星実現へ

2019年1月、流れ星の素となる粒を載せた人工衛星「ALE-1」が宇宙へーー。

2011年の設立から8年、「人工流れ星を、夜空に輝かせる」という壮大なチャレンジの実現へ、ALEは大きな一歩を踏み出した。

さらに2019年11月にも、2号機の打ち上げを計画。2020年内に、世界初の人工流れ星が実現される見込みだ。
そして彼らが見据えるのは、エンターテインメントのその先にある未来。

「人工流れ星は、エンターテインメント以上の、非常に大きな価値を秘めています」

こう語ってくれたのが、ALE COO藤田智明さん(29)。彼らの挑戦に迫った。

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藤田 智明(29) 東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 卒業後、ボストン・コンサルティング・グループでコンサルタントとして勤務。2018年、ALEにCOOとして参画、全社の経営全般を担う。宇宙エンターテインメント領域の事業開発に加え、人工流れ星から得られる データを活用したサイエンス領域への貢献を目指す。

「人工流れ星」で宇宙データを取得、異常気象を解明へ

「宇宙の研究、科学に貢献していきたい」

藤田さんの口から語られたのが、これからの事業構想だ。今後、人工流れ星を使ったデータ事業が計画されているという。

「たとえば、人工流れ星が光る高度50キロ~80キロの『中間圏』は定常的な観測が難しく、これまで研究が進んでこなかった領域でした。人工流れ星を流すことで、ここの地球・宇宙のデータを観測できる。これまで得られなかったデータを取得できるようになります。”持続可能な地球” を作っていくためにも、こうしたデータは有効で。特に地球温暖化や、それに伴う異常気象などの予測や現象の解明に貢献できることもわかってきました」

実際にデータが観測できれば、世界各国の気象予測機関や研究機関、更には農家や食品企業といった需要予測が必須となる企業などが顧客となる。

ビジネスとサイエンスをつなぐ、架け橋になりたい

遡れば、少年時代から宇宙が大好きだったという藤田さん。

東京大学・大学院では、地球惑星科学を専攻。そこで目の当たりにしたのが、厳しい研究現場の実情だったという。

「宇宙や惑星科学の研究は、時に膨大なお金がかかる。たとえば、大きな望遠鏡を打ち上げたら、何百億円が必要になる世界。そのために研究を断念した人たちも多くいます。寝る間も惜しんでどれだけ素晴らしい研究に取り組んでいても、『お金』という理由でたち消えてしまう」

そして彼の中に芽生えたのが、ビジネスを通じて宇宙惑星科学の研究に貢献したいという想い。

「研究がいつ私たちの暮らしの役に立つのかは、わかりません。もしかしたら長い時間がかかるかもしれない。ただ、こういった基礎研究こそが、人類の文明を大きく変えると思うんです。ビジネスと研究をつなぐことができれば、多くの研究、そして研究者に光を当てられるんじゃないか。その架け橋になりたいと思ったんです」

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ここでしか味わえない、高揚感がある

大学院卒業後、ボストン・コンサルティング・グループでコンサルタントとして従事。培った経験値をもとに、2018年にALEへ。COOとして、12億円の資金調達などを手掛けてきた。

「正直に言って、過ごしている時間の100分の90は、大変なことかもしれません。ただ、ふとしたとき、100分の10ぐらい、ここでしか味わえない高揚感があります」

2019年1月、ALEの人工衛星を搭載した、ロケット打ち上げでの体験を語ってくれた。

「実は…ロケットが発射された瞬間、あまりに感動的で涙が出てしまったんです(笑)ロケットの打ち上げを直接見たのははじめてだったんですが、遠くの方で発射されたかと思うと、少し遅れて『ドドドドド』とすごい音がして。あっという間に消えてなくなっていった。ただただ人間ってすごいなと、今まで味わったことがない感覚がありました」

そして、こう続けてくれた。

「ただ、本当に何かを成し遂げたと言えるのは、流れ星が見えた瞬間なんですよね。もしかしたら、その時も泣いてしまうかもしれない(笑)。でも、その涙は、今回とは違ったものなんだろうなと思います。実はALEに入って1年程経った時、初めて夢の中でその瞬間に立ち会いました。その時の涙が溢れ出て止まらない感覚は、今でも思い出せます」

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メーカー、コンサル、銀行…様々なバックグラウンドを持つメンバーがALEには集っているという。彼らの共通項として、「今までになかったものを見たい、つくりたいという好奇心がある」と語ってくれた藤田さん。

「いつか、宇宙に行ってみたい」

取材終盤に伺えたのが、「宇宙ビジネス」に掛ける藤田さんの覚悟。

「宇宙全体から見たら、地球は本当に小さな存在かもしれない。だからこそ、今を生きる僕たちが、地球を守らなきゃいけない。宇宙を知ることで、地球をより知れると思うんです。そのキッカケを僕らが作りたい。だからなんとしてもビジネスにしないといけないんですよね」

そして最後に伺えたのが、彼の実現したい未来について。

「科学がもっと身近になれば、もっと世の中はおもしろくなるんじゃないか。たとえば、テレビのワイドショーや情報番組でも、当たり前に研究の成果が共有される。科学によって暮らしがどう変わるのか、伝えてくれる。そうなったら、もっと世の中は良い方に変われるんじゃないかと思うんです」

藤田さんは続ける。

「また将来、宇宙に行って、自分の目で宇宙を見てみたい。そこに少しでも自分の仕事がつながっているとすれば、これほどうれしいことはないですよね」

そう言って少年のように笑った、彼の姿が印象的だった。

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人工流れ星事業『Sky Canvas』
「人工衛星を使って、流れ星をつくりだす」世界初の人工流れ星事業。軌道上の人工衛星から、特殊な素材の粒を放出し、大気圏に突入させることで、流れ星を人工的に再現する。流れ星の色や明るさ、光る時間の調整など、人工ならではのエンターテインメント性の開発も進めている。流れ星は最大で半径100kmという範囲で観測可能。たとえば関東地方では、3000万人が同時に、夜空に人工流れ星を見ることができる。スポーツイベントやシティプロモーションといった大型イベントでの活用など、新たな体験型エンターテインメントの実現が期待される。