世界遺産"シギリヤロック"の麓に暮らす家族の食卓。名前のない家庭料理に出会いました。[世界の食卓を実際に訪ねてみた vol.8 スリランカ編]|KitchHike

こんにちわ、KitchHike/食卓探検家の山本です。前回のブルネイ編からクアラルンプール経由でひとっ飛び、スリランカにやってきました。お腹が空いたら、人とつながるいいチャンス!

● 住所/スリランカ・シギリヤ

● 家族/母(42歳)、長女(19歳)、次女(18歳)、伯父(35歳)

● 住まい/RC造2階建て一軒家

● キッチン/かまど、独立プロパンガス

● 得意料理/カレー味なら何でも!

● 今日のメニュー/チキンカレー、ジャガイモのカレー煮込み、フクロタケのカレー炒め、タマネギとニンジンの和え物、蜂の巣のカレー炒め、いんげんのカレー炒め、野パセリとココナッツのサラダ

● コメント/料理の名前?特にないけど。

こんにちわ、KitchHike/食卓探検家の山本です。

前回のブルネイ編からクアラルンプール経由でひとっ飛び、スリランカにやってきました。お腹が空いたら、人とつながるいいチャンス!

スリランカってどんな国?

インドの東南に位置するセイロン島。これがスリランカの領土のすべて。北海道の3/4ほどの国土です。スリランカの多数派は、仏教徒のシンハラ人。食べ物のタブーは特にないと言われています。

16世紀からポルトガルやオランダなどヨーロッパ諸国が、シナモンやスパイスを求めて、セイロン島を訪れ始めました。国名の語源は、シンハラ語で「光り輝く島」。最近では、東洋医学の秘術"アーユルヴェーダ"の処方を求めて、世界中から人が訪れています。

美談が多く神秘的なイメージがありますが、実は2009年まで多数派のシンハラ人と少数派のタミル人が激しく内戦をしていたという悲しい歴史も。

そんなスリランカで、はたして、どんなおいしい出会いがあるのやら。

スリランカの玄関口、とにかく交通量が多く居心地の良くない商業都市コロンボから、バスで約4時間。世界遺産であるシギリヤロックに辿り着きました。

窓ガラスもない朽ちかけたボロボロのローカルバスでしたが、モサモサの緑が続く細道を荒々しく駆け抜けるのはクセになりそう。

お腹が減った状態で遠目から見るシギリヤの大岩は、まるで巨大なステーキ肉の塊。

岩山の頂上に造られた王都、実は11年と超短期間で幕を閉じています。弟に王位を奪われることを恐れた兄が父親を殺し、弟をインドに追放したのです。罪を償うために寺院を建て、良き国作りに励みます。その後、インドから戦いを挑んできた弟にあっさりと降伏し、最後は自決したと言われています。

世界遺産シギリヤロックの麓に住む家庭におじゃまします。

今回おじゃましたのは、世界遺産シギリヤロックの麓、鬱蒼と繁る深い緑に佇む一軒家。トゥクトゥクの運転手に、「料理を作ってくれて、あわよくば泊めてくれる家を教えてくれ!」と依頼すると、「OK,no ploblem.」と迷うことなく、連れて行ってくれました。

あれ?人の家でごはんを食べるのって、こんなに簡単だったっけ?

出迎えてくれたのは、優しそうなお母さんと2人の娘。流暢な英語で対応してくれたのは、写真左の長女ナヤナさん。コロンボの大学でエンジニアリングの勉強をしていたそう。今は職探し中。

普段は家族で旅行者に、自宅の部屋を貸して生計を立てているとのこと。でもネットも電話もないからあんまりお客が来ないんだよね~と。大通り沿いにあるわけでもなく、もちろん看板も出していない。隠れ家のごとく宿をやっている、なかなかのツワモノ家族。

連れてきてくれたトゥクトゥクの運転手、実はこの家に同居する伯父さん。なるほど、迷いがなかったわけです。

PCもケータイもない生活。溢れんばかりのマイナスイオンがある生活。

PCもケータイもない生活だけど、皆さんとても気分よく穏やかに暮らしているように見えるのは、360°囲まれたモサモサの緑から出るマイナスイオンのおかげかもしれない。

謎のウェルカムドリンクは、キウイと柑橘系の果物を搾ったジュースに多めの塩を入れたようなテイスト。「おいしいの?ねぇ、おいしいの?」と笑いながらしつこく聞いてくる姉妹。おいしくなくはないけど、おいしいこともなく、ハの字眉毛で小鼻の横に力の入った表情をしていると、2人とも大満足そうに爆笑していました。

久しぶりの来客、しかも手料理まで要求する日本人にちょっと驚きながらも楽しんでくれている様子。ドヤ顔の次女に、こちらのテンションも上がります。

いよいよ調理スタート。なんと、かまどです。

料理は、なんとかまどで!まずは火を起こすところから。薪から火をおこす台所は、この旅で初めて。生まれながらにガスキッチン育ち、下手すると火を見ることもないIH育ちになってしまう日本人の自分としては、見ているだけで興奮するし、それでいて落ち着きます。

かまどや囲炉裏のある家は、自然と火を囲むことで、家族の絆が深くなるという文化人類学的な話がありますが、確かにそんな気がしてくるのです。

名前の無い料理たち。それは生活に溶け込んでいる証拠。

英語を話す長女を見て、なにやら自慢げなお母さん。普段は見ない長女の一面を見て嬉しそうです。仲良く3人でいんげんのスジ取りを始めました。

今日は何を作ってくれるの?と聞くと、「う〜ん、料理名は特にないんだよね!いつも食べてるやつ。」と長女のナヤナさん。

出ました!料理名のない料理!実は、KitchHikeの旅の中でよく出会うんです。レストランやストリートフードではあり得ない、家庭料理ならではの料理。強いていうなら、「クミンやマサラなど数種類のスパイスで炒めたジャガイモ」とか教えてくれるんですが、そのまますぎて、こっちは「あー、、、へー。」としか言えなくなります。

でも、個人的にはそんなアノニマスな料理に出会うと嬉しくなります。観光客向けではない、まさに根付きすぎてもはや名前を付ける必要もないよね、みたいな雰囲気がたまらないのです。料理がしっかりと生活に溶け込んでいるとポジティブに捉えましょう。

見たことのない調理器具が登場。でも、使いやすそう。

続いて登場したのは、見たことのない調理器具。木板の先端に金属がくっついています。どうやら木板の部分に座って固定して、先端の金属で野菜や果物を削ったり、砕いたりするよう。

確かに楽そうですが、この器具を単体で見たらとても調理用とは気付けない。

お母さんが削った野パセリに、次女がココナッツを砕いて入れていきます。果たして一家に一台この調理器具があるのだろうか?と思い、ナヤナさんに聞いてみると、「他の家の台所のことはよくわからないね〜」とのこと。もしかして、ナヤナ家のオリジナル?

いよいよスリランカの家庭料理をいただきます!

手際よくシンプルな調理法。スパイスをふんだんに使って炒めていました。

お米はなにやらハイテクな炊飯器で固めに炊いたジャスミンライス。盛り付けから、楽しく食べようという気持ちが伝わってきますね!

それでは、いよいよ実食!いただきます!

チキンカレー、ジャガイモのカレー煮込み、フクロタケのカレー炒め、蜂の巣のカレー炒め、いんげんのカレー炒め、タマネギとニンジンの和え物、野パセリとココナッツのサラダ。

何かしらカレー味の料理が出てくるだろうと思っていましたが、予想の斜め上をいく、他のおかずも全てカレー味というオチ。どれもスパイスががっつり効いていて、舌と脳にピリピリと刺し込んできます。カレー尽くしの食卓に添えられた、野パセリとココナッツのサラダが唯一の救い。

濃い味付けのおかずが、ジャスミンライスによく合う!お腹いっぱいまで食べてしまいました。

朝ごはんは、スリランカのソウルフード。

薄いクレープ生地で胡椒を利かせた目玉焼きを包んだ、ドサ。潰した豆の揚げドーナツ、ワデー。

どちらも、スリランカのお手軽なストリートフードとして愛されています。朝にピッタリ。チャイにも良く合います。いくらでも食べられてしまいそう。

最後まで、穏やかで明るく居心地の良い家族でした。刺激的な出来事はなさそうだけど、鬱蒼とした深い緑に囲まれて、歴史が紡がれたシギリヤロックを眺めながら、ゆるやかに静かに暮らすのは悪くないかもしれない。

便利とはとても言えない生活の中でも楽しそうに暮らす家族を見て、"今日が昨日と同じであること"の稀有さと素晴らしさに気付けた、ありがたいKitchHike体験。足りていることを知っている人の空気感は、一緒にいてホッとしますね。スリランカとシギリヤが大好きになりました。

お腹が空いたら人とつながるいいチャンス!世界の食卓を巡る旅は続きます!

KitchHikeについて

KitchHikeは、世界中の食卓で料理を作る人と食べる人をつなぐマッチングサイトです。

【関連記事】

(2014年10月14日「KitchHike マガジン」より転載)

注目記事