旧統一教会も「結婚は子を生み育てるもの」と主張。自民党のLGBTQ政策への影響は?専門家に聞いた

「結婚は男女間に限定されるべきもので、同性婚は決して認めるべきではない」。こういった主張は、旧統一教会系の新聞・世界日報にも多数掲載されている
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「結婚は男女のカップルが子を生み育てるためのものなので、同性カップルに認めるべきではない」

これは、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)系の新聞「世界日報」に、繰り返し掲載されている主張だ。

同様の主張を、国も「結婚の平等(法律上の性別が同じ2人の婚姻)」の実現を求めた訴訟で展開

同性カップルの結婚が認められない理由として「婚姻制度の目的が、一般的に、夫婦がその間に生まれた子供を産み育てながら、共同生活を送るという関係に対して、法的保護を与えることにあるとされているため」などと訴えている

「結婚の自由をすべての人に」裁判で国側が提出した準備書面
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安倍元首相銃撃事件をきっかけに注目されている、旧統一教会と政治家との関係。

多くの国会議員・地方議員が、旧統一教会系のイベントに参加したり祝電を送る一方で、旧統一教会側から選挙支援や献金を受けていたことなどが明らかになっている

その関係の中で、旧統一教会などの宗教右派が、与党として国政をリードしてきた自民党の政治家と緊密な関係を築いて、政治に取り入ってきたとみられている。

中でも注目されるのが、性的マイノリティの権利擁護やジェンダー政策に与えたとされる影響だ。

この問題について、宗教右派とジェンダーやセクシュアリティをめぐる問題を研究する米国モンタナ州立大学の山口智美准教授(文化人類学、ジェンダー研究)に聞いた。

山口智美モンタナ州立大学准教授
山口智美モンタナ州立大学准教授

旧統一教会「同性婚は決して認めるべきではない」

山口氏によると、旧統一教会は同性婚に反対する立場をとっている。

旧統一教会は2016年、山口氏と富山大学非常勤講師の斉藤正美氏の取材に、こう回答したという。

「成熟した男女が神の祝福の下に結婚し家庭を築いて子供を産み育てること、家庭生活を通して真の愛の人格と家庭を築くことが人生の基本的な目的である」

「したがって『結婚』は男女間に限定されるべきもので、『同性婚』は決して認めるべきではないと考えます」

これと類似の主張は、世界日報にも多数掲載されている。

例えば2019年2月17日の社説では「結婚制度とは主に、子供を生み、育てるための仕組みである。従って、自然には出産が想定されない同性カップルを制度の対象外とするのは当然である」と論じている。

また、同年12月14日の「記者の視点」は「子供を生み育てることを前提にしているのが婚姻制度であり、正当な結婚観からすれば自然には子供が生まれない同性カップルの関係は『結婚』ではないし『家族の中核』を破壊することになるから、社会にとって非常に危険である」と、主張している。

世界平和統一家庭連合 日本本部
世界平和統一家庭連合 日本本部
時事通信社

なぜ反対するのか

結婚は子を生み育てるためのものと主張し、同性婚が社会を破壊するかのように伝える社説や記事の数々。

山口氏は、旧統一教会関係の団体が、同性愛や両性愛、結婚平等に反対する理由を「教団が重視する『一夫一婦制』を壊すものと捉えているからだ」と指摘する。

山口氏によると、世界日報が男女共同参画への反発(バックラッシュ)を本格化させたきっかけは、2004年の宮崎県都城市の男女共同参画条例だ。

この条例の中に「性別または性的指向にかかわらずすべての人の人権が保障され」という文章が含まれ、性的マイノリティの権利を守ろうとしたことが大きな反対理由になったという。

世界日報には条例に反対する記事が多数掲載され、統一教会系の団体が都城市で反対のビラ配りをした。

このほか、性的少数者への配慮を明記した福岡県八女市などの条例に対しても、世界日報が紙面で反対したと山口氏は説明する。

そういったバックラッシュは2005年末頃を境に一旦は収束に向かい始めた。第二次男女共同参画基本計画が比較的保守にとって満足のいく内容になったことや、自民党「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」の座長を務めるなど、バックラッシュの動きに深く関わってきた安倍晋三氏が2006年に首相に就任し、反動の必要がなくなったことが背景にあったという。

パートナーシップ制度に強く反発

その世界日報が、再び反LGBTQキャンペーンに力を入れるようになったのは2015年。日本で初めて東京・渋谷区と世田谷区で導入されたパートナーシップ制度がきっかけだった、と山口氏は指摘する。

例えば、2015年4月3日に掲載された世界日報の社説は、パートナーシップ制度を「自治体の“暴走”」と批判。

ここでも「婚姻の本質的な目的は、生まれてくる子供の身分の安定、福祉である。それを自覚していれば、同性カップルを夫婦同等とする条例を成立させることはなかったはずである」 と述べている。

他にも「渋谷区同性カップル条例案の波紋」という連続記事で、「他の自治体に広がる可能性がある。そうなれば日本の家族制度は根幹から崩れることになる」と主張している。

さらに、この時も統一教会系の団体が、渋谷でパートナーシップ制度反対のビラ配りを実施したという。

山口氏は「渋谷のパートナーシップ条例に危機感を覚えた理由の1つは、彼らが反対する同性婚につながりかねない制度だったからです。また、渋谷は旧統一教会の本部がある場所。地元でそんなことをやられてはたまらないという思いがあったと思います」と話す。

政治家と宗教右派。お互いに利用し合う関係

一貫して、同性婚に反対してきた旧統一教会。世界日報では、他にも選択的夫婦別姓や、LGBT差別禁止法に反対する記事も多数掲載されている。

そして、その旧統一教会の関係者は、政治家と強い関係を築いてきた。

例えば富山チューリップテレビによると、旧統一教会の関連団体・国際勝共連合の幹部が、富山市議会の自民党会派で繰り返し勉強会を開催してきた。

こういった勉強会では、同性婚やパートナーシップへの反対、家庭教育支援条例促進などについて話されたという。

山口氏は「このテーマがいかに旧統一教会関係者にとって重要かがわかります」と指摘する。

また、自民党の「性的マイノリティに関する特命委員会」は7月、有識者ヒアリングに麗澤大の八木秀次教授(憲法学)を招いた。

八木氏は、世界日報の記事や、同メディアの読者でつくる「世日クラブ」の講演で、同性婚に反対し続けてきた人物だ。

世界日報の記事によると、2021年6月の講演では、婚姻平等訴訟やLGBT理解増進法案などについて「多様性という名の下に人間の秩序感が混乱すれば、国家の衰退・崩壊にまでつながってしまう」と主張。

さらに「英語圏では、同性愛は先天的ではないという見解が有力とされている」「子供を産み育てるという世代間継承という見方が欠落すれば、それは婚姻とは言えないだろう」とも語っている。

八木氏は、7月の自民党の有識者ヒアリングでは「(性的指向について)先天的だという意見もあるし、最近の学説では後天的だという意見もだんだん有力になってきている」「社会制度を設計するにあたっては、新しい学問的な科学的な見解に基づいてすべきであって、かつての見解をそのまま使って制度設計したとしたら、多くの人にとって幸せな結果にならないのではないか」という内容の話をしたと述べている

結婚の平等やパートナーシップ制度に反対し、政治に影響を与えてきた右派宗教団体は、旧統一教会系に限らない。

6月には、多くの自民党議員が参加する「神道政治連盟国会議員懇談会」の会合で、「同性愛は精神障害で依存症」と書かれた冊子が配られ、問題になった。

政治家と宗教右派団体が親密な関係を築いていることについて、山口氏は「お互いに、使えるところは使う」という側面があるのではと話す。

「旧統一教会としては、選択的夫婦別姓や同性婚を阻止し、家庭教育を推進したい。そういう部分は自民党右派や日本会議などと合致できるので、そこでつながっていく」

この政治家と宗教右派、右派識者とのつながりの中で、性的マイノリティの権利擁護やジェンダー平等が蔑ろにされているということはあるのだろうか。

例えば、1990年代後半から議論されている選択的夫婦別姓は、いまだに実現していない。

2021年には、東京オリンピックを前に、与野党が「LGBT理解増進法案」をまとめたが、自民党の一部議員が反対したことで、国会への提出が見送られた。

2019年に野党が提出した婚姻平等法案が国会で一向に審議される気配はない。安倍晋三氏菅義偉氏らは、首相時代に婚姻平等について「憲法上想定されていない」「我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要する」と述べ、平等な権利を求める性的マイノリティの声に耳を傾けようとしなかった。

そして、結婚の平等裁判で国は旧統一教会や世界日報、八木氏と同じように「結婚は子を生み育てるもの」と主張している。

山口氏は「旧統一教会を含む宗教右派勢力の影響があることは、まったく否定できないと思う」と話す。

「国の主張を作る上で、参考にはされると思います。例えばLGBTの人権などは、差別禁止どころか理解増進法という生ぬるい法律でさえ通らない。選択的夫婦別姓なんて、なんでこんなものが何十年も通らないのかというレベルで実現していないですよね」

「勉強会をするということは、情報を議員に伝えるということで、そういうものをベースにして議会質問も作ったり、これからの活動方針を立てたりすると思います。そういう形で地方から国政まで影響を与えているのではないかと思います」

実際、山口氏は、八木氏が世日クラブの講演で「自民党の『LGBTに関するわが党の考え方』を最終段階でチェックし、危なそうな文言を全部取った」「理解増進法案の反対に安倍総理とともに関わった」などと話すのを聞いたという。

また、この点について、朝日新聞の二階堂友紀記者は、雑誌『世界』2021年8月号に掲載された「これは闘争、ではない LGBT理解増進法案見送り」という寄稿の中で、八木氏が「わが党の考え方」の中にあった「性的指向や性自認に関わらず」という文言について「同性愛と異性愛を同等に扱えという主張につながる危険性がある」と指摘し、その結果文言が削除されたと書いている。

山口氏は、宗教右派が自民党の政策に与えた影響を無視してはいけないと訴える。

「今回の旧統一教会問題では、宗教右派が政策にどのような影響を与えてきたかに目を向けなければいけないと思います。他の政策にもおそらく影響を与えてきたと思いますが、ジェンダー、LGBT関係はものすごく大きな影響を受けてきたと思います。そこを見逃してはいけないと思います」