2019年06月18日 10時31分 JST | 更新 2019年06月27日 13時37分 JST

「なんで今、社長になってやらないの」大企業USEN-NEXT GROUPで35歳の社長が生まれたわけ

若手活躍を加速させるUSEN-NEXT GROUPの企業カルチャーとは

有線放送最大手の株式会社 USENや映像配信会社、株式会社 U-NEXTなどを傘下に抱える、株式会社 USEN-NEXT HOLDINGSのグループ内に、35歳の社長が誕生した。

大下 幸一郎氏。クラウドサービスを導入する企業を支援する新会社「株式会社 USEN Smart Works」の初代トップに就任した。

USEN-NEXT GROUPはなぜ、異例の抜擢に踏み切ったのか。大下氏に話を聞いた。

Masanori Sugiura
大下 幸一郎(おおした こういちろう)株式会社 USEN Smart Works 代表取締役社長2006年入社。新卒で人事部に配属。3年目で法人営業部に異動。グループリーダー、部長を歴任し、2019年3月新会社の社長に就任

■予想外の発言が背中を押した

──35歳の若さで新しい子会社の社長に抜擢されました。

きっかけは、USEN-NEXT GROUPが経営統合した2017年12月にあったマネージャー以上が参加する経営戦略会議「マネジメントフォーラム」でした。

株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS社長の宇野をはじめ、グループ各社のトップがそれぞれの事業の方向性などを話すプレゼンがありました。

当時、株式会社 USEN ICT Solutionsのクラウドサービス部 部長だった私も出席していて、今後USEN-NEXT GROUPは全社的に「こういう未来を目指します!」と掲げていました。

そのとき、自分が担当する事業はどれくらい伸びていないといけないのかと目標値をぼんやりと作ったことがあって。

しばらくしてから宇野と話す機会があったんですね。

いま部長として毎月の数字をがんばっていて、今後はこんな数字を目指していきたいと伝えたら、宇野から「なんで今、社長になってそれをやらないの」って言われたんです。

はっとしましたね。

予想外の発言で一瞬とまどったんですが、「確かに日々がんばっているものの、挑戦をしていないのかもしれない」と思って、「やらせてください」と。そしたら本当に新会社の社長になっちゃった。

この歳で社長になれたのは、USEN-NEXT GROUPの独特な社風のおかげです。年齢に関係なく、新しい挑戦を応援してくれる企業カルチャーがあるからこそ就任できたんだと思います。

会社を作るということはルールを決めるところから全て、自分でやることになります。

新しいものを作っていくという点では面白くもあるんですが、その分大変で、社内の助けには本当に感謝しています。

例えば、わからないことがあっても、社内の経理や法務の担当者、ほかの関連会社の社長たちからすぐにアドバイスが聞けました。社内起業の強みですよね。

──そうは言っても、35歳で社長就任。道のりまでには様々な「壁」があったと思います。どう乗り越えたのですか。

まずは当事者意識をもつ「範囲」を決めることですね。

「ここまでできる、ここまでやりたい」という範囲を決め、目標を明確にします。

それを達成するまでには、もちろん自分が経験したことのない壁にぶつかります。
まずは壁にぶつかっている自分を認めて、その道のプロフェッショナルに力を貸してもらう。これが大事かなと思います。

本当にたくさんの方々に支えられて一歩一歩進むことができています。

Masanori Sugiura
「成長するために、厳しい環境に自分からつっこむことを大切にしてきた」

──担当していた事業が「スピンオフ」して新会社が実現したわけですが、元々は営業ではなく、人事部にいらっしゃったとか。

そうなんです。入社後、最初に配属されたのは人事部でした。配属面談でガッツリ営業の法人事業部と、仕事量が多そうな人事部の2つ、どちらも成長速度が速そうだったので希望したところ、人事部への配属となりました。

人事部には丸2年いましたが、仕事はあえて、自分の「スペック」に合わないぐらいの量を受けるようにしていました。

誰がやるか決まっていないものは率先して受けてきましたね。

本当に大変でしたけど、いろんな業務を経験することができてよかったです。

その後、法人営業部に異動希望を出したんです。

人事部の仕事も楽しかったのですが、やっぱりUSENに入ったからには、営業の仕事にもチャレンジしてみたいなと思って。

──営業の仕事に慣れるのは大変でしたか。

人事部で話をする相手というのは、社内の人や学生の方々がメインで、人事部としての自分と話をする必要がある人たちですよね。

それが法人営業だと、相手は外部の人。

当然ですが、中には私の話を聞きたいと思っていない人もいるんですよね。

だからこそ、そういう人たちと話をし、認められれば達成感が大きい。

それまでとは大きく違いましたね。

ただ、会社の環境にだいぶ助けられました。

先輩社員やマネージャーの方から仕事を丁寧に教えてもらえるし、根気強く指導いただけたことは今でもすごく財産になっています。

何より挑戦させてもらえる企業文化ということも大きいですね。 

■株式会社 USEN Smart Worksが目指す未来

──ご自身が率いる新会社 USEN Smart Worksはどんな事業をやっているのですか。

10年以上前から株式会社 USEN、そして株式会社 USEN ICT Solutionsとして長らくやってきた、クラウドサービスを導入しようとする企業支援がメインです。

でも、私たちがテーマとしているのは「B to B to Employee」で、顧客である企業だけでなく、そこで働く人たちまでも見据えています。

つまり、お客様企業の先にいらっしゃる従業員の皆様がいかに快適に働けるようになるか、そのサポートこそが「本丸」です。

まさに「働き方改革」のお手伝いですね。

例えば、ある企業で女性社員が産休に入るタイミングで、リモートワークができる環境が整っておらず遠方からの出勤か、有休消化かという状況でした。そこで急遽、クラウドサービスをはじめとするシステムの導入を提案しました。

それから約1カ月で仕組みを実現することができました。かなりスピーディーだったと思います。

クラウドサービスと言っても様々で、顧客の企業や従業員ごとに向き不向きがあります。そこを見極めて提案できることが、強みです。

クラウドサービスには、たくさんの種類がありますし、どう組み合わせて使っていけば良いのかわからない企業も多いでしょう。

その点、私たちはクラウドサービスを知り尽くしたプロであり、言ってみれば相談役のような役割を担っていると思っています。

Masanori Sugiura
新卒(人事部)から企業がいかに快適に働くことができるのかを追求してきた

ほかにも、飲食店を経営する企業に対しては、アルバイトスタッフも含めてLINE WORKSの導入を手助けした例があります。

飲食業や小売業の現場では、従業員の離職問題は深刻です。

いったん雇用した人材をどうやってつなぎとめるかに、企業は悩んでいます。

そんな課題の解決にも、弊社は一役買っています。

LINE WORKSは、このシステム自体がユーザーマニュアルにも社員名簿にもなりますから、ノウハウの体系化が進み、店長とアルバイトのコミュニケーションがスムーズになったことで、離職する人がぐっと減ったようです。

一方で、スマートフォンを業務ツールのメインにしている企業の中には、チャットができればよいというところもあります。それに応じた提案も可能です。

要はそれぞれのスタイルに合ったワークスタイルに導くことができます。

デジタルツールは、従業員が抱える働き方の問題を解決する手段の一つになると思っています。

弊社は、そのための良質なツールを提案することが使命であり、クラウドシステムを提供するGoogle社やサイボウズ社、LINE WORKS提供元のワークスモバイルジャパン社などから「最上位パートナー」の認定を受けています。

導入の時には、社内の役員の方に対して実演しながら使い方を教えるほか、セキュリティについてもケアをします。

時代や企業のフェーズに合わせて、ツールが適切かどうか、見直す作業も手伝います。

もちろん企業全体ではなく、その部門だけにツールを導入するということもあります。

ただ、クラウドサービスに対する企業の向き合い方は本当に様々です。

FAXを駆使されている企業に対してはチャットを導入するだけでイノベーションになりますし、すべてをIT化する企業もあります。

新しい商品やサービスを初期の段階で取り入れようとする「アーリーアダプター」の企業から、AI搭載したコミュニケーションを必要とし、システムを導入される 「レイトマジョリティ」の企業まで、各社の目標は様々です。

それぞれに合った「デジタルトランスフォーメーション」を提案していきます。

──今後の目標を教えてください。

自分の組織から社長2人を輩出することですね。

USEN-NEXT GROUPも、全社で100億の事業規模の会社を100社作ることを目標の1つにしているので、それともマッチすると思います。

そのためにも、後輩の育成には力を入れています。育成というか谷へ落とすイメージかも(笑)。

Masanori Sugiura
「自分も先輩に育ててもらった。その伝統を次の世代に引き継いでいきたい」と語る大下氏

厳しいかもしれませんが、社長になるということは、「やる」ということを先に決めなければならない、強い意志が必要になってきます。

それにあった人材を育てるためには、厳しさは必要です。

具体的には、昔の資料や自分が事業を思いついたきっかけなどをチームのメンバーに共有しています。

さらにその中で志が高い人には、さらに深い知見も共有するようにしています。

自分はたくさんの先輩に支えられて社長にまでなり、今こうして仕事ができています。

そんな流れを次の世代にも引き継ぎたいです。