VAIO待望の新モデル「VAIO A12」は、従来の2 in 1 PCの使いにくさを払拭し、クラムシェルタイプと同等の使い勝手をもたらす製品です。本日(11月13日)予約受付が開始され、最短で11月22日受け取りとなっています。価格は12万1800円(税別)から。
短時間ながら実機に触れることができたので、製品情報に加えて使い勝手に関してもレビューします。
画面を開いても後ろに倒れない秘密
まず、なんと言ってもこのモデルの特徴は、最大130度まで液晶画面を開いても倒れないこと。これまでの2 in 1 PCでは、天板側についたてのようなものが出てくる構造だったり、キーボードの手前側パームレスト部分に重りを入れてバランスを取ったりと、2 in 1 PCならではの対策が取られてきました。
しかし、VAIO A12はクラムシェルタイプと同等の使い勝手を追求した結果、ちょっとしたアイデアで液晶画面を開いても、倒れない製品を実現しています。それは特許も取得している「Stabilizer Flap」と呼ばれる、たった1枚の板を加えるアイデアでした。
2 in 1 PCの場合、クラムシェルPCならキーボードの下に入っているバッテリーやCPU、ストレージといった部材が面側(タブレット部)に入っています。VAIO A12のタブレット部は、最小構成時約607gとかなり軽量に作られているものの、それでも、VAIO Sシリーズのような構造では、キーボード側の重量だけで支えきれません。
もともとVAIO Sシリーズは、液晶画面を開くとオーナメント部分が机に接地して、キーボード部分が傾き、「無限パームレスト」として手首の負担を低減し、タイピングがしやすくなるのも特徴でした。
この特徴をVAIO A12でもうまく活かし、1枚のフラップをオーナメントの下に入れることで、2 in 1 PCでも倒れないようなバランスの取れた設計になっています。
このフラップはマグネシウム合金製で、軽量かつ強度を上げるために試行錯誤した結果、薄くして曲加工することで、それほど重量を増やさずにこの機構を実現したと言います。背面を見ても実にシンプルで、マグネシウム合金のシルバーが逆にアクセントのよう。もちろん、閉じた状態では無駄な出っ張りも生まれませんので、クラムシェルと同じ感覚で持ち運べます。
2 in 1モデルには、より軽さを求めてキーボードを簡易的なものを採用する製品もありますが、やはり長時間使ったり、膝の上で使うとなると、しっかりしたキーボードにはかないません。VAIO A12は、そういった不満の残る2 in 1ではなく、クラムシェルタイプのような使い勝手で、2 in 1 PCならではのタブレットとしても使える、そんないいとこ取りのマシンを目指しています。
キーボード側には、バッテリーがないタイプと搭載タイプが選択できます。バッテリーなしだと重量は約1.099kgで、持ち運んだときの軽さを重視したい人向き。バッテリーありの場合は、重量は110gほど増えてしまいますが、バッテリー駆動時間が8時間から14.7時間へ伸びます。さらに、ワイヤレスキーボードとしても利用できるので、分離した状態での使い方が広がります。
ワイヤレスキーボードは、Bluetooth接続ではなく2.4GHz帯の独自形式を採用。暗号化通信なのでセキュリティ的に安心です。また充電時は、タブレット側優先で充電するようになっており、ドッキングするとキーボード側のバッテリーからタブレット側へ充電する仕様にもなっています。
ドッキング機構に関してもこだわって作り込まれています。極力軽くかつ強度を確保しなければならないため、一枚の金属板を採用しています。その他の部分は樹脂製にし、箱状構造にすることで、強度と軽さを両立しています。また、コネクター部分は接点が汚れて接触不良を起こさないよう、端子部分が着脱時にスライドして接点をきれいにする機構になっており、掃除せずとも長く使い込めるそうです。
リリーススイッチは、キーボード側と背面側のそれぞれに1つずつ。これにより、わざわざ画面を開かずとも脱着が可能です。たとえば、電車のなかでカバンからタブレット部だけ取り出したいとき、背面側のリリーススイッチを操作するだけで簡単に外せます。
またリリース時は、スイッチをスライドさせるとロックされるため、スチッチを抑えながら取り外すという動作は不要です。装着時も吸着するように自然にロック機構が働くので、かなりスムーズに行えます。意外と脱着しづらいものもあったりしますが、VAIO A12に関してはかなり使い勝手がいいと感じました。
ファンレス仕様で第8世代のCoreプロセッサーを採用
画面サイズは12.5インチのフルHD液晶を搭載。13.3インチのVAIO S13と同じキーボードを採用しており、S13より一回り小さいフットプリント(305.5×211.9mm)ながらも、19mmのフルピッチを実現しています。キーボードやタッチパッドの性能、フラットアルミのパームレストといった仕様は、従来のVAIO Sシリーズ同様です。
従来のVAIO Sシリーズと違うのはインターフェース。VGAやHDMI、LANといった端子は継承されていますが、USB 3.0端子が1つとなり、残り2つはUSB 2.0端子になっています。これは、ドッキングコネクターでUSB 3.0を利用しているためで、致し方ないところ。
その代わり、PD対応のUSB 3.0 Type-C端子をタブレット側に搭載しています。これにより、減ってしまったUSB 3.0ポートを補える以上のパフォーマンスを提供します。充電はもちろん、別売りのドッキングステーションと組み合わせれば4KディスプレーやLANとの接続が可能です。
USB Type-Cポート経由での充電は、PD対応充電器であれば、キーボードにも本体バッテリーにも充電可能です。PD対応モバイルバッテリーなら、出力24Wの場合で約5時間、出力27W~30Wのアダプターなら約4時間でフル充電できます。また、5V/1.5Aタイプの一般的なスマホ用充電器でも充電可能で、その場合はキーボード内蔵バッテリーへの充電はできないものの、タブレット側のバッテリーは5.5時間でフル充電となります。
CPUは第8世代Coreプロセッサーを採用。省電力性に優れたYプロセッサーラインでCore i7、Core i5、Core m3、Celeronの中から選択可能です。ストレージは、SATA接続のSSDもしくはPCI-e接続の第3世代ハイスピードSSD、メモリはLPDDR3の4GB、8GB、16GBから選択できます。
タブレットとして利用するため、アルミとステンレスによるシールド兼放熱機構によるファンレス仕様を採用。ファンによる不快なノイズもなく快適に使えます。
液晶のガラスにはAGCの強化ガラス「Dragontrail PRO」を採用。角は丸みをつけ、樹脂で覆い割れにくくする構造になっています。タブレットの厚さは7.4mm。別売りのワコム製デジタイザースタイラス(税別7980円)による4096階調の筆圧に対応した手書き入力も行えます。
カメラは、フロント207万画素、リア799万画素の2つを搭載。Windows Helloによる顔認証にも対応しました。また、指紋センサーもタブレットの右サイドに搭載できるので、指紋認証も利用できます。また、液晶画面の左右にステレオスピーカーを内蔵しているので、音もクリアに聞こえます。
3キャリアに対応した、SIMフリーLTEモジュールが内蔵でき、モバイル作業する際の強い味方となります。体験版のSIMも同梱(販路によっては同梱されず)されるので、購入後すぐにどこでも通信できる便利さを体感できるようになっています。
そんなわけで、「VAIO A12」の仕様を駆け足で紹介しましたが、これまでにない2 in 1 PCを体験できるはず。「Stabilizer Flap」の効果は絶大で、普通のクラムシェルタイプとして違和感なく利用できます。もちろん膝上でも利用でき、キーボードの質は従来のSシリーズと同様なので非常に快適です。
筆者はVAIO S11を持っていますが、電源の位置がタブレット側になってしまうものの、A12はサイズ的にもクラムシェルとして使っても違和感ありませんでした。しかもタッチ操作ができるので、ウェブ閲覧などはタッチパッドより直感的かつ軽快に操作できます。
キーボードとの脱着もスムーズで、キーボードにバッテリーを搭載したモデルにすれば、ワイヤレスキーボードとして使えるのがとても便利に感じました。重量は約1.209kgと約110g増になってしまいますが、駆動時間が伸びるのと、ワイヤレスキーボードとして利用できるメリットを考えるとバッテリーありがオススメです。
あと、梱包がかなり小さくなったのも今回の特徴です。外箱って結構かさばりますので、極力小さいほうがありがたいもの。こういう細かいところでも進化しているのがうれしいですね。
ちなみに今回は、「ALL BLACK EDITION」も同時に発売されます。Core i7-8500Y限定で、ストレージも第3世代ハイスピードSSDのみ、メモリーは8GB以上になります。フリップもブラックで統一されるので、結構格好いいと思います。VAIO A12は新世代の2 in 1 PCとして、かなりオススメです。
(2018年11月10日Engadget日本版「VAIO A12」発表。2 in 1 PCの弱点を克服し、クラムシェルのような快適さを追求」より転載)
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