2021年07月28日 10時04分 JST | 更新 2021年08月06日 09時33分 JST

コラボレーションで新しい価値を生み出す。かつてない商業施設「VISON」が三重県多気町にオープン

「本来あるべき理想や、大事にしたい想いを盛り込んだこれまでにない施設です。」商業施設「VISON」は、地方創生モデルとなり得るのか?VISONプロジェクトを立ち上げた立花哲也さんに話を聞く。

日本一の地方創生モデルを目指す、かつてない商業施設「VISON」。2021年4月より段階的に開業していたが、7月20日にすべての施設がオープンした。

舞台は、三重県のほぼ中央に位置する多気町。熊野古道や伊勢神宮などの観光地へのアクセスのよい、自然が豊かな町だ。

魅力的な場所ながら、課題も多い。若年層の都市部への流出、過疎化による地域経済の衰退など、多くの地方で見られる課題を多気町も抱えている。

そんな課題を、VISONはどう解決するのか?VISONプロジェクトを立ち上げた株式会社アクアイグニス代表取締役 立花哲也さんに話を聞いた。

アクアイグニス代表取締役 立花哲也さん

式年遷宮のように、修繕することで継続していく

VISONの画期的なポイントとして、持続可能性を考慮した設計がまず挙げられると立花さんは話す。

「建物にはびっくりするくらい木材を使っています。これは、伊勢神宮が式年遷宮で新しい社殿を建てるように、20年ごとに修繕する計画のためです。20年、40年、100年と続けていきたい。だからあえて木を使い、腐ったところを直していく設計にしています」

木と森の体験施設「kiond(キオンド)」。木を使ったワークショップや、森で のアクティビティを体験できる。

多くの商業施設は、定期借家契約で、20年程度で建物を壊し、土地を返す前提で設計しているという。一方、VISONは、土地を購入し、地元の木材を使って建築を修繕しながら、継続していく。

この数年でサステナビリティの話題が盛り上がっているが、計画がスタートした7年前からVISONは持続可能性をコンセプトとして掲げていた。

VISONだけが良くなればいいという考えは全くない

三重県産の食材が並ぶ「マルシェ ヴィソン」。

VISONのもう1つの特徴は、単なる商業施設だけではなく、プラットフォームであることだ。

VISONだけが良くなればいいという考えは全くないです。ここを拠点に、色々な場所にお出かけして、泊まっていただきたい。VISONには、三重県中のバスが乗り入れることになりました。VISONに来てもらうことも嬉しいが、ぜひここから三重県中に出ていただきたい」

VISONの想定の訪問客数は日に1万人。しかし、VISONの宿泊施設は200室程度で、多くの訪問客はVISONに留まることができない。このことからも、施設外に観光客が出ていく設計であることがわかる。

地元の宝である食材は、大都市ではなく、三重で消費する

マルシェ ヴィソンに出店する「若竹」で販売される松阪牛。

食の神様も祀られる伊勢神宮からほど近いVISONは、大きなテーマとして「食」が掲げる。立花さんの「食」への想いも、一層強い。

「三重の宝物である食材の多くが、大都市で消費されています。三重の人や、三重に来た人に、もっと食べてほしい。それが本来の姿だと思うのです。その想いを、施設内の『マルシェ ヴィソン』に反映しています。例えば、マルシェには高級食材も取り揃え、プロも利用する場所を目指しています。地域の料理人が地元の食材をもっと使うことで、県全体で三重産の食材のブランディングにつなげたい

ブランディングが成功し、食材が高く売れるようになれば、地元の農業、漁業の活性化にもつながる。地方創生のモデルの1つになるのではないかと立花さんは展望を語る。

余った魚は、はんぺん屋さんに。規格外野菜はレストランに 

マルシェ ヴィソンに出店する「第十八甚昇丸」で販売されている魚介類。

VISONに出店する店舗は、驚くほどバラエティ豊かだ。そして、1つ1つが専門性をもつ。その多様性と専門性が、VISONの可能性を広げる。

「みりんの製造過程を見せる施設があります。しかし、それで終わりではありません。そのみりんを使って、レストランのシェフが料理を考える。コンセプトや想いが同じ異業種の人々が集まることで、領域を超えたコラボレーションが生まれています

多様な店舗をもつ効果は、他にも見られる。

「産直市場で余った魚は、はんぺん屋さんで加工する。マルシェで売れ残った形の悪い野菜も、買い取って施設内レストランに使う。生産者と料理人のマッチングをしてフードロスを減らす試みもしています

コラボレーションによって新しい価値が生まれ、無駄もなくなる。そんな好循環がVISONでは生まれているのだ。 

「三重大学」と「ロート製薬株式会社」が産学連携で取り組む「本草湯」。

企業のみならず、自治体、大学も参加した産学官連携もVISONの特徴だ。

例えば、民間施設初認可のスマートインターチェンジの導入、遠隔医療サービスの導入など、最先端の取り組みが、産学官連携によっておこなわれている。

VISONを中心に生まれるコラボレーションが、「食」をはじめ、多様な領域での新しい挑戦を可能にしているのだ。

喫煙しなくても見てみたい喫煙所。建築へのこだわりは細部まで

アート性と機能性が融合したこだわりの喫煙所。

木造で建てられた日本最大級の産直市場など、建築にもかなりこだわったのでぜひ見てほしいと立花さんは熱く語る。そのこだわりは喫煙所のエピソードからも感じることができた。

「デザインチームからは、景観を乱す喫煙所の設置に反対の声もありました。しかし、それでは喫煙される方は困ってしまう。では、アートのような喫煙所にしてはどうかと発案し、現在の形になりました。設置にあたっては、JTの分煙コンサルタントに相談しました」

使用するのは、伊賀の酒蔵にあった古いタンク。もともとアート作品に使う予定だったものを喫煙所にした。地元の資源を用いた価値の創生が、細部にも生まれている。

1000回打ち合わせをした。多様性を貫くコンセプトと想い

スウィーツ ヴィレッジに出店する「コンフィチュール アッシュ」。

理想が詰め込まれたVISON。それだけに、店舗や企業の誘致には苦労したという。 

「わざわざ三重に出店するメリットがないメーカー、通常は商業施設への出店は断っているお店もあり、説得には時間がかかりました」

最終的には、立花さんの想いが込められたコンセプトに共感し、出店を許諾してくれたという。現在までで、約100の事業者が参画し、オープンまでに、それぞれ10回ずつ、つまり1000回もの打ち合わせをしたと振り返り、「よくやったと思う」と立花さんは笑顔を見せた。 

「100年、120年と続けていくというコンセプトに共感してくれたお店です。だからこそコロナ禍でも、ほとんどのみなさんが無事にオープンしてくれました」

VISONのコンセプト、そして立花さんの妥協を許さない強い想いによって、VISONに関わる人々が同じ方向を見ている。それが、新たな価値の創出につながっているのだろう。

ぜひ何度でも、来てほしい

 「本来あるべき理想や、大事にしたい想いを盛り込んだこれまでにない施設です。そういう視点でも、お越しいただけると面白いと思います。一度では回りきれないと思うので、ぜひ何度もきていただければ」

地方創生の効果は、早くも現れ始めている。VISONによって、1000人ほどの雇用が創出された。Uターンの就職が多いということだ。

これからVISONを中心に、多気町、そして三重県がどんな発展を見せるのか。ぜひ何度も足を運びながら、注目していきたい。

なんとなく受け入れてきた日常の中のできごと。本当はモヤモヤ、イライラしている…ということはありませんか?「お盆にパートナーの実家に帰る?帰らない?」「満員電車に乗ってまで出社する必要って?」「東京に住み続ける意味あるのかな?」今日の小さな気づきから、新しい明日が生まれるはず。日頃思っていたことを「#Rethinkしよう」で声に出してみませんか。