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2020年10月28日 12時28分 JST | 更新 2020年11月03日 11時42分 JST

「それでもトランプ」派に聞いた投票する理由。「言動は許せない。でも…」

アメリカ大統領選でトランプ氏を支持する人たち。彼らはなぜ分断を招いている“暴君”に投票するのか

Mark Makela via Getty Images
ペンシルベニア州で開催されたトランプ大統領の選挙集会。「投票に行くか」と聞かれ、手を振って応える支持者たち(2020年10月26日)

「批判されるのは分かっています。でも、今回はトランプ大統領に投票すると決めました」

アメリカの大統領選挙の激戦州とされるペンシルベニア州の都市フィラデルフィアに住むボブさん(61歳)。「親日家」だという、白人の男性だ。

投票日は11月3日。最新の世論調査(リアル・クリア・ポリティクス)では、バイデン氏が50.6%、トランプ氏が43.5%。バイデン氏が7ポイントのリードを保っている。

一方、世論調査では「トランプ支持」を表明しにくいという指摘もあり、表に現れない「隠れトランプ」の動向も焦点となっている。

ボブさんの周りの知人や家族は「反トランプ」。それでも、「4年間たったあとも、トランプ氏に期待している人は少なくない」と話す。

差別的な言動を繰り返し、分断を招いている“暴君”でもあるトランプ氏を支持する理由は何なのか。彼のようなアメリカの有権者と話してみると、「社会の分断」の根深さを感じる。

HuffPost Japan
ボブさん

理髪店でも政治の話

ボブさんはアメリカのペンシルベニア州の地元の広告関係の会社で働いてきた。いまは姉の家族とともにフィラデルフィアに住んでいる。

住んでいるペンシルベニア州は大統領選挙の「激戦州」。バイデン氏の出身地でもあり、前回の選挙は民主党が勝つともみられたが、共和党のトランプ氏が同州を制した。

今回の選挙について、予測サイト「ファイブサーティーエイト」はトランプ氏がペンシルベニア州を制した場合の当選確率を84%、バイデン氏の場合は96%としている。両候補とも夏以降、少なくとも6回は現地入りしている。

「すべてが政治的になってきました」とボブさんは話す。理髪店に行っても、「トランプ批判」を聞く。ボブさんが「トランプ氏に投票したいと思っているのだけど…」と口にすれば、「お前は差別主義者なのか」と言われる恐れもあるという。

そのため、話す時は、これは「自分のopinion(意見)ではなく、ニュースで聞いた話なんだけど」と前置きをして政治の問題をするようにしている。 

aimintang via Getty Images
フィラデルフィアのダウンタウン

複雑な感情を持って投票する人たち

「夢は日本で仕事を見つけて永住すること」と語るボブさん。10年以上前から毎年のように日本に旅行で来ている。

「あくまで私が知り合った限りですが、日本人はまずじっと話を聞いてくれる印象があるんですよね。日本の人には『アメリカのディベート文化』を褒めてもらえることが多いのですが、私は激しい話し合いが苦手なんです。今のアメリカは、トランプ氏本人への批判、熱烈な支持者への批判、迷いながらトランプに投票する人への批判が、一緒になってしまって、会話しづらい」

「陰謀論や差別を公然と唱えるトランプ支持者は論外ですが、それ以外の複雑な感情をもって投票をする人も多いんです。そのグレーゾーンの人たちの意見がもっとメディアに取り上げられ、知人同士で話せれば良いのですが…」

ボブさん自身は、トランプ大統領の差別的な言動に批判的だ。実際、前回の4年前の選挙は「トランプ氏に期待できない」と棄権した。

それなのに、どうして今回はトランプに入れるのだろうか?ボブさんは次のように話す。

ASSOCIATED PRESS
ペンシルベニア州のランカスター空港で開かれたトランプ大統領の選挙集会(2020年10月26日)

心が動かされる自分に気づいた

「トランプ氏に投票する私でさえ、彼の言動は許せない。Twitterの投稿はウソが交じっている。対立する人たちを見下し、差別発言も多い。もし彼が隣人だったら心底軽蔑します。

でも、この4年間、トランプ氏は、今までの政治家が出来なかったことをやろうとしているように見えてきました」

「たとえば、北朝鮮の金正恩委員長を板門店に訪ねたように『想定外の行動』が何回かに1回出てくるときに、『よくやった』と心が動かされる自分に気付きました。目立ちたいという動機だとしても、『思いがこもったファイター』としての彼を応援したくなる。4年たっても『自分を曲げない姿勢』にも思えてきてしまって…」

「バイデン氏は紳士だと思います。(4年前の大統領選でトランプ氏と争った)ヒラリー・クリントン氏と違って、私の周りの保守派からも嫌われてもいません。でも、アメリカの未来をバイデン氏に託したいかと言えば、NO。彼は『トランプ氏を排除したい』というネガティブな感情だけを集めて、取り繕っているだけのように見えてしまうんですよね」

「民主党自身も変わり、労働者の味方ではなくなった、と私は感じます。金融業界とのつながりが見え隠れしたオバマ大統領への失望と似ています」

Anadolu Agency via Getty Images
トランプ大統領が出演している生番組の収録場所近くで、支持者と抗議者が衝突した(2020年9月15日)

はっきり物を言うトランプ氏に期待してしまう

ボブさんが住むペンシルベニア州は、鉄鋼業が栄えたピッツバーグの街などを中心に発展してきた。労働者も少なくなく、ボブさんの父親も高校を卒業して一生懸命働き続けた。

しかし、グローバル化の影響もあり、経済成長から取り残された人たちもいる。また、アメリカでは白人が2040年代ごろには人口の半数以下になってマイノリティが多数派になることが予想され、ボブさん自身も自分が「多数派(マジョリティ)」という意識はない。

「バイデン氏のように40年(上院議員36年、副大統領8年)もワシントンで政治をやっていた人には社会を変えられない。教育、医療、経済。やっぱり土台を壊す人が必要なんです。トランプ大統領にもう一度やってもらって、いままでの仕組みがまったく変わったあとに、ちゃんとした大統領に託したい」

「かつては不安でしたが、4年間でアメリカの問題が可視化され、いまはこういう人が必要なんだと気付いた。なにより『経済をよくしたい』『アメリカの雇用を取り戻したい』という意見をはっきり言います。私はそんなとき『アメリカのことが好きで、そのためにファイターであってくれるのだ』と、最後は期待してしまうんです。そして、彼の激しい言動は『そうやって生きてきた人なので、もう治らないものだ』と自分に言い聞かせています」

「トランプ氏の『アメリカ第一』というのは自国中心的ですが、その分、国際政治から距離を置き、暴力的な言動の割には、無用な戦争をしかけることはしないと私は思います。トランプ氏と同じ共和党で、イラク戦争に突き進んだブッシュ元大統領とは違うという期待がある。イラク戦争は本当に泥沼で、アメリカにああいうことは繰り返し欲しくないですから」

「トランプ氏とバイデン氏。どちらが勝利するか、私にはわかりません。もし前回の2016年から学ぶべることがあるとすれば、世論調査は意味がないということ、そして“専門家”たちは、アメリカの人たちの心のことを、相変わらず何もわかっていないということです」

最後に「メディアは『隠れトランプ支持者』という言葉を使うが、あなたはそうですか」とボブさんに聞いた。

「トランプ支持を言いにくいことは確かですが、自分が『隠れている』とは思いません」と答えた。

続きを11月5日夜9時〜のハフライブで話します

「友人に、トランプを支持する人はいますか?」。ハフポストの拠点があるニューヨークに住む人に聞くと「何を馬鹿なことを…」という顔をされることがある。

移民、異なる宗教の人、女性など様々な人たちを傷つけてきたトランプ氏。この4年間、大統領に就任する前の不安が現実になるばかりか、それ以上の「暴君ぶり」を示してきた。黒人差別問題に対しても、向き合うどころか、むしろ煽っている時もあったようにもみえた。

しかし、それでもなお4割の一定の支持率を保ち、大統領選挙も接戦のもようだ。いま、トランプ氏を支持する人はどのような心境なのか。

そして、トランプ氏がたとえ敗れたとしても、彼はTwitter上に居続けるのだろうか。彼を支持した人の心は変わらず、アメリカの分断は続くのだろうか。

アメリカに住む人たちの大統領選挙後の「心の変化」を読み解き、日本にとっても他人ごとではない「分断社会の今後」について話し合います。

Maya Nakata / Huffpost Japan
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11月5日夜9時(日本時間)から、モーリー・ロバートソンさん、長野智子さんとともに議論します。また、これまでアメリカの「ラストベルト(さびついた工業地帯)」を訪ね歩き、今回も現地で取材をしている朝日新聞機動特派員の金成隆一さんと中継をつなぎ、投票直後の「アメリカ」を伝えていただきます。

番組はこちらから⇒ https://twitter.com/i/broadcasts/1lDGLylbnRQJm

(時間になったら自動的にはじまります。視聴は無料です)