水は最も誤嚥しやすい――汁物には「とろみ」。でもつけ過ぎも危険!

ただし、注意すべき点もあります。
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1月に最も発生件数が増えるもの――それは、餅を喉に詰まらせる事故です。今年も元旦から、餅をのどに詰まらせた高齢者の救急搬送のニュースが相次ぎました。餅に限らず、加齢と共に、食べ物を呑み込む際にむせたり喉にひっかかったりして、ヒヤッとすることが増えていませんか? 対策としてよく行われるのが、調理の際に食品に「とろみ」をつけること。とろみには保温性を高める効果もあって、冬にはぴったりですね。ただし、注意すべき点もあります。

堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員

月別の救急搬送人員(過去5年間餅をのどに詰まらせたもの)

(東京消防庁HPより)

歳を重ねると、呑み込んだ食べ物が誤って気道に入る「誤嚥」の危険が高まります。

実際、誤嚥で気道を詰まらせる窒息事故は、ほとんどが高齢者によるもの。65歳以上の救急搬送数は全体の9割以上を占め、65歳未満の約7倍に上ります。

年齢層別の救急搬送人員(過去5年間餅をのどに詰まらせたもの)

(東京消防庁HPより)

原因食品は、断トツ1位の餅と、こんにゃく入りミニカップゼリーや飴を誤って丸呑みした場合の他、通常の食事であるご飯やパン、肉、野菜も多く、決して特別な食品ではありません。

汁物にすれば、どんな食材でも流し込んでしまうから大丈夫じゃない? と思われがちですが、そこに落とし穴があります。

摂食嚥下障害者はスプーン一杯の水で溺れる」という言葉があるそうです。摂食嚥下障害の人にとって誤嚥リスクが最も高い食品が水なのです。

8020運動のHPによると、私たちの喉は、普段は呼吸をするために気道へと開いていますが、食べ物・飲み物が流入してくるタイミングで気管の入り口にあるフタを閉じ、同時に食道を開いて飲み込みます。ただ、水は口~喉の中で素早く動き、瞬時にばらばらになる性質を持っていますから、一瞬でも気道のフタを閉じるタイミングが遅れれば、簡単に誤嚥してしまうのです。

摂食嚥下障害と診断されるまで至らなくても、人は加齢と共に呑み込む機能が衰えてきます。体の機能の衰えと同時に、あるいはそれに先駆けて、口から喉の食べ物を咬んで呑み込む機能が低下した状態を「オーラル・フレイル」と言います(詳しくはこちら

そこで重要なのが、「とろみ」付け(半固形化)です。とろみがつくと、口から喉にかけてまとまりよく、ゆっくり流れるので、誤嚥リスクが低減します。汁物をサラサラでなくトロトロにするのはもちろん、口の中でまとまりづらく呑み込みづらいおかずなどもあんかけ風にすれば、食べやすくなります。しかも、とろみがついていると、温かいものが冷めにくくて、この時期には体もあったまりますね。

薄すぎるとろみでは期待する効果が得られないのは想像に難くないと思いますが、逆にとろみをつけすぎるとかえって呑み込みづらくなり、窒息の危険を高めることになってしまいます。ねっとりし過ぎて流れにくく、口~喉にくっ付きやすくなるためです。

明らかにとろみがあることを感じるが、「drink」するという表現が適切なとろみの程度である。口腔内での動態は、ゆっくりですぐには広がらず、舌の上でまとめやすい。スプーンで混ぜると、少しだけ表面に混ぜ跡が残る。スプーンですくってもあまりこぼれないが、フォークでは歯の間から落ちてすくえない。コップから飲むこともできるが、細いストローで吸うには力が必要なため、ストローで 飲む場合には太いものを用意しなければならない

と解説しています。(3段階あるうち、基本となる中間のとろみの場合)

ちなみに、とろみがついて冷めにくくなる分、温度確認も重要。「アツアツだったけれど、時間が経ったし大丈夫でしょ」といきなりたくさん口に入れると、ヤケドの危険があります。特に高齢者は口の中の温度の感度も下がっていますから、ヤケドしても気づかないことも。十分気を付けてくださいね!

(2018年1月24日ロバスト・ヘルスより転載)

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