2020年12月21日 12時00分 JST | 更新 2020年12月21日 18時31分 JST

AI研究の松尾豊教授「今がチャンスだ」ポストコロナ、日本が進むべき道とは?

AI研究の第一人者・東大の松尾豊教授と、世界のデータインフラを支えるウエスタンデジタルジャパンの小池淳義社長が、それぞれの最前線から日本の未来を語り合った。

「今こそDXやAI活用が広がるチャンスです」

AI研究の第一人者である東大の松尾教授はポストコロナのAI活用に期待を膨らませていると言う。

ウエスタンデジタルジャパンの小池社長も、「今、日本のものづくりの根本が変わろうとしています」と実際の変化を目の当たりにしている。

ポストコロナ時代、日本が今後進むべき道とは?これからの時代を生きる人に必要なマインドセットとは?AIディープラーニング研究の第一人者である東大の松尾豊教授と、世界のデータインフラを支えるウエスタンデジタルジャパンの小池淳義社長が、それぞれの最前線から日本の未来を語り合った。

左:東大の松尾豊教授。右:ウエスタンデジタルジャパンの小池淳義社長 

新型コロナ、日本のAI活用に変化は?

─2006年にディープラーニングが登場して第三次AIブームに火をつけ、新型コロナウイルスの影響でさらに世界のデジタル化が進んでいます。ポストコロナを見据えた日本の状況をどう捉えていますか? 

松尾 新型コロナウイルスの影響で、テレワークが広がったり、政府の委員会が軒並みオンラインになったりしていますよね。他にも建設や工事現場での勤怠管理や体調管理の自動化が急激に広がるなど様々な変化が起きています。

そういう変化が“強制”されて、変化が社会全体で起こっているということは、AI活用の面から見ればとてもプラスではないかと思います。

松尾豊(まつお・ゆたか)日本ディープラーニング協会理事長/東京大学大学院工学系研究科教授。ディープラーニング(深層学習)をはじめとするAI研究の第一人者として知られる。

小池 まさにテレワークが増えたことで、現場のエンジニアにも変化が生まれています。テレワークで仕事の効率が上がったことで、生産開発やプロセス開発を経験しているエンジニアたちがディープランニングに真面目に取り組みだして、本格的に活用するプロジェクトを始めたんです。

すると、結構面白いデータを発見して、今までと違う知見を得たり、新たなアプローチが分かったりしてきました。各エンジニアが「非常にこれはいい」と。今までは埋もれていた、あるいはどうしていいか分からなかった課題が、一つ違う方向に動き始めています。

先が読めない不確実な時代を迎えて、世の中は大きく変わっていきます。会社として新たなテクノロジーを活用してさらに挑戦していきたいです。

小池淳義(こいけ・あつよし)ウエスタンデジタルジャパン プレジデント。日立製作所の半導体部門にて生産技術を統括、その後トレセンティテクノロジーズ社長、ルネサステクノロジ技師長を経て現職。国内外で多数の講演をおこなっているほか、東京大学などで講師も務める。工学博士。

松尾 ウエスタンデジタルの事業では、AI、IoT、ディープラーニング、マシンラーニングなどを、様々な部分で取り入れていますよね。非常に重要なことだと思います。

ウエスタンデジタルが取り組んできた半導体の技術の発展はA Iやデジタル製品の発展とも密接につながっていますし、5G、6Gが登場してデータ活用が拡大する社会において、ますます活躍の場が広がっていくのではないでしょうか。

そしておっしゃるように、テクノロジーを活用できないと、生き残れないと思いますね。そういう意識が世の中全体で広がってきたという意味では、ポストコロナはDXを進め、AI活用を広げるチャンスです。 

ポストコロナ、AI活用のチャンスを生かすために必要なことは?

─AI活用のチャンスがきている、と言いますが、そのチャンスを生かすためには何をすべきとお考えですか?

小池 これまでの「日本のものづくりはすごい」という時代の根本にあった「現場主義」を超越した、新しい価値やノウハウを構築していくべきではないかと考えています。

日本のものづくりは、良くも悪くも「現場主義」が支えてきました。現場に行って、実物を見て把握し、現場で判断することによって、確実かつち密な発展を可能にしてきたのです。

しかし、新たなテクノロジーを活用すれば、必ずしも現場に行かなくてもいいし、むしろ現場で得られるもの以上の情報が入ってくるようになる。データの活用や分析といったディープラーニングを通して、場所を選ばずに総合的な判断やさらに奥深い開発ができるように変わってきます。この発想の転換は、日本のものづくりにイノベーションと、新たな価値観をもたらしてくれるのではないかと期待しています。

この変化は以前からあったのですが、新型コロナによって加速しています。これを好機と捉えて新たな日本のものづくりの土壌を築きたいですね。

三重県四日市市の半導体工場 第六製造棟

松尾 たしかに従来現場に行って見て感じていたことが、センサーを使ってできるようになったり、それがリアルタイムでできたり、俯瞰(ふかん)的に見られるようになったりして、「現場主義」の考え方は大きく変わってくる可能性がありますね。

そもそも日本のAI活用が遅れているのは、 SIer に代表される特異な業態の存在や、IT人材の不足、日本企業の人事制度など様々な要因が複雑に絡まっています。何か1つを解決すれば、遅れを取り戻せるというわけではありません。

突破口は、若い人ならばとにかく新しいことにチャレンジして、イノベーションを起こしていくこと。そして経営者の方は、ぜひ技術を勉強していただきたいです。経営層で知見が深まれば、会社を変え、産業や社会に大きな変化をもたらす近道になります。

働き方はどう変わる?松尾教授の「昼の研究、夜の研究」

─新型コロナで「働き方が変わった」と実感する人が多いのではないかと思います。

小池 今、経営者の立場としては、「会社経営のあり方」を再定義する必要があると思います。「企業業績を上げる」だけでは評価を得られないですし、今後ますます、「世の中に役に立つ」ことに重きを置いた製品や事業を求められるでしょう。よって働き手も、本当の意味での社会貢献を考えていくような働き方になるのではないでしょうか。

ところで働き方といえば、仕事と人生がどれくらい重なっているかは人それぞれだと思います。個人的に「仕事=人生」という教授が多い印象ですが、松尾教授はいかがですか?

松尾 興味深い質問ですね。僕は15年ぐらい前から、昼の研究、夜の研究という考え方をしています。昼の研究というのは、要するに「職業研究者として、社会から求められている役割をちゃんと果たせ」ということです。

一方夜の研究というのは、夜、自分の知的好奇心のままにやる研究です。

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実は、本当にいい研究というものはそもそも社会から理解されないんですよ。5年後10年後、あるいは自分が死んでから理解される。いい研究ほどそういう傾向があるんです。それでも、自分が色んな経験と知識と洞察に基づいて信じるのであれば、「やればいいじゃん」と思っています。

そういう意味では、仕事の部分と人生の趣味のような部分があるということなのかもしれないですね。 

社会を変革する「ビジネスの役割」とは?

──松尾教授は研究以外に、スタートアップなどビジネスの分野にも積極的に取り組んでいますよね。社会を変革する上でビジネスの役割をどう考えていますか?

松尾 ビジネスは重要な役割を担っていると思います。やはり新たな事業が立ち上がり、拡大するという営みが、われわれの社会を豊かにしていますよね。

特に新しいテクノロジーが世に出ると、それを活用するスタートアップが生まれ、既存企業を刺激し、急激に成長する企業が出てくる。それが積み重なって産業が大きくなっていきます。スタートアップを増やすことは、今の日本にとって本当に大事なことだと思います。

小池 我々としては、目先の利益をただ追うのではなく、豊かな社会をつくるために「最先端のテクノロジーで社会をイノベーションする」というミッションを実行していくことが重要だと考えています。

今、改めて日本の半導体の強さを実感しています。世界的なテレワークの普及によって、逆に世界との繋がりを身近に感じることも増えました。軸足を日本から離してみたら、一個体として日本の強さをよく考えることも出来ます。

ウエスタンデジタルは、現在、米国本社のグローバル企業として最大といってよいほど、日本の生産拠点に巨額の投資をおこなっています。「日本のものづくり」へのリスペクトが可能にしているといっても過言ではありません。グローバル企業の立場から見える日本の強さを世界に展開していきたいと思います。

◇◇◇

テクノロジーが社会を変革していくこれからの時代。ウエスタンデジタルジャパンは、ポストコロナのテクノロジーの進化をリードし、世界のデータインフラを支えていきます。