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2019年04月06日 12時20分 JST | 更新 2019年06月11日 12時07分 JST

61歳の祖母が、息子ふうふのために孫娘を出産。「全ての人に家族を持つ権利がある」

家族をもつ機会が、平等に与えられて欲しい。両親の願いが奇跡を生んだ

ARIEL PANOWICZ
マシュー・エレッジさんとエリオット・ドハティさんの「子供を持ちたい」という夢は、3月25日にマシューさんの母のセシルさんが、ユマちゃんを出産したことで実現した

マシュー・エレッジさんと夫のエリオット・ドハティさんが、子供を持ちたいと考え始めたのは3年前だ。

しかし男性同士のカップルであるマシューさんとエリオットさんにとって、子供を作るのは簡単ではない。

「手伝おうか」と冗談めかして言ったマシューさんの母、セシル・エレッジさんの言葉が、奇跡的な共同作業を生むことになる。

3月25日、セシルさんは代理母として、マシューさんとエリオットさんの娘ユマちゃんを出産した。卵子はエリオットさんの姉妹のリア・ウリーブさんが、精子はマシューさんが提供した。

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セシル・エレッジさんと孫娘のユマちゃん。奇跡的な共同作業で命が誕生した

母親に代理母になってもらうと決めた後、マシューさんは周りの人からありとあらゆることを聞かれた。

「近親相姦ではないかと聞かれることがあります。とても賢い人からも『遺伝的な異常は怖くないの?』と質問されました。でも、聞きたくなる気持ちは十分理解できます。これはとても珍しいケースですから」

「誰でもわかるように説明するため、母は子宮を貸してくれるだけ、と伝えています」

セシルさんは61歳。代理母の候補になった時にはすでに閉経していた。それでもセシルさんが代理母になれたのは、彼女がとても健康体だったからだ。代理母の候補に挙がった後、セシルさんは心臓や肺、体力などいくつもの健康チェックを受けた。

「全てに合格したら奇跡だろうって、頭のどこかで考えていました。でももし自分が完全な健康体でなければ、代理母になって赤ちゃんを危険にさらすようなことは決してしまいと誓っていました。しかし心臓医や内科医、様々な医師から『あなたが代理母をできない理由は、見当たりません』と言われました」

セシルさんの妊娠を担当した医師は、ネブラスカ州オマハのメソジスト女性病院の不妊治療専門医、キャロリン・ドハーティ博士だ。

ドハーティ博士は「61歳で代理母になれる人はほぼ皆無です」とハフポストUS版に話す。高齢の人は、高血圧や心不全など、様々な健康上のリスクを抱えていることが多いからだ。しかしセシルさんはそれらの健康リスクを調べるテストを全てパスし、代理母として孫を妊娠することが許可された。

代理母で妊娠する場合、多額の資金が必要となる。妊娠から出産まで、かかる費用は4万ドル(約446万円)になるだろうと、マシューさんとエリオットさんは見積もった。セシルさんを代理母にすることで、代理母に払う費用、2万5000(約280万円)〜3万5000(約390万円)ドルと、代理母の健康に関連する費用を節約できる、とドハーティ氏は説明する。

「あまり知られていませんが、代理母には高額な費用がかかります。保険は適用されません。もし代理母の医療費をすべて払い、そして代理母が入院するようなことがあれば、破産する人もいるかもしれません」

生理を再開させるために、セシルさんは女性ホルモンを体に注入した。そして、彼女曰く「30年前に最後の子供を産んでから、こんなことが起きるとは夢にも思わなかった」と言う出来事が起きた。妊娠したのだ。

「『ちょっとした冒険をすることになったね』と夫に言いました」とセシルさんは話す。

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ユマちゃんを抱くセシルさんと、ふたりを見守るマシューさん、エリオットさん

幸運にも、受精卵の着床は1回目で成功した。ドハーティ博士は、卵子の年齢が若かったのが幸いしたと説明する。

「エリオットさんの姉妹が提供した、とても若い卵子を使ったことが、セシルさんにとって幸いしたと言えます。さらに、彼らは異数生(染色体異常)の着床前遺伝子診断をしていました。最新の科学技術を使って、赤ちゃんに遺伝的に問題がないとわかっていたことも役立ちました」

30年前の妊娠と比べて、違うこともあった。妊婦にとって何が良くて何が良くないかを示すガイドラインは30年前と比べて変わっていたし、つわりも30年前よりつらかったという。しかし、「特に大きな問題は何もなく、不満に感じることは何もありませんでした」とセシルさんは話す。

大変だったのは、周りからの質問攻めだった。

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ユマちゃんが生まれた。感動的な時間をシェアする、エリオット・ドハティさん、マシュー・エレッジさん、カーク・エレッジさん

「みんなを困惑させていたようですが、周りからの質問で、気分を害するようなものは何もありませんでした。この妊娠はとても珍しく特別なものです。周りの人たちは、本気で興味を持っていました。説明すると、『それはすごい、君のお母さんはロックスターだ』と言われました」とマシューさんは言った。

61歳という年齢で代理母になることも、ロックスターのような行為だといえるだろう。大抵の場合、医師は50歳を過ぎた人に体外受精を認めない。判断は医師によって異なるが、ドハーティ博士の場合は、代理母になる人が45歳以上であれば入念に健康状態を調べるという。

セシルさんは「決め手となったのは、私の健康状態がとてもよかったことだと思います」と話す。

「私は、今の60代は新しい40代だと思っています。40代の人が子供を産むこともあるでしょう。61というのはただの数字です。大切なのは自分がどう感じているか。良好な健康状態は、若い気持ちを保つためのモチベーションになります」

セシルさんの血圧が高くなったため、医者は予定より早く彼女を入院させた。しかしセシルさんは自然分娩でユマちゃんを出産した。生まれてきたユマちゃんは健康体だった。

セシルさんは出産後、重要な役目を果たすことができたとわかりホッとした、と話した。

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ユマちゃんを抱く、マシュー・エレッジさんとエリオット・ドハティさん

セシルさんは妊娠中、お腹にいる赤ちゃんに親心がうまれてしまうのでは?と聞かれたそうだ。

「多くの人たちに『お腹に9カ月もいた子供を、誰かに渡せる?』と聞かれました。でも私は、超音波検査をするたびに『この子は私の子供ではなく孫なんだ』と思っていました。いつも想像していたのは、赤ちゃんを産んで、マットとエリオットに手渡す場面です。二人は必死になって、子供を持つ夢を実現しようしてきましたから」

マシューさんによると、分娩室にはパーテーションがあって、出産の一部始終は見えなかった。「全てを見る必要はないでしょ?」とマシューさんは冗談めかして話す。

しかし、出産するときの母親は、戦士だったと説明する。「母がこれほどまでに奮闘して、そしてこんなに美しく、健康で素晴らしい赤ちゃんを産む瞬間に立ち会ったことは、私たち二人にとってとても素晴らしい経験でした」

一家は、ユマちゃんが生まれるまでのストーリーを多くの人に知ってもらいたいと思っている。その理由は、一人一人違う。

セシルさんは、男性ふたりのカップルがなんとか子供を持とうとしていたことに、深い感銘を受けたそうだ。彼らは、子宮移植も考えていたという。

同性カップルが子供を持つための手段の多くには、保険が適用されない。それを変えて欲しいと訴える。

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ユマちゃん

「私は、子供を持ちたいと願うゲイカップルが差別されているのを直に見てきました。彼らが子供を持つための手段には、保険が適用されません。それは私にとってもつらいことです。差別を見るのは心が痛みます。彼らも、保険を使えるようにして欲しい。それを訴えたいのです」

セシルさんの夫カーク・エレッジさんは、全てのふうふが家族をもつ機会を平等に与えられることの大切さを、多くの人たちにわかって欲しいと願っている。エリオットとマシューと、ほぼ同じDNAと血を引く孫娘ができたからだ。

「今回の出来事が、それを実現させたのです。ふたりには、私たちと同じように家族を持つ権利があります」

マシューさんはハフポストUS版に、ユマを一目見てメロメロになったと話す。ユマはまだ理解できないと思うが、彼女が生まれてくるまでの奇跡的なストーリーの全てを話して聞かせるつもりだ。

パパとなったマシューさんとエリオットさん。ユマが生まれて生活はすっかり変わった。すっかり親モード入っているマシューさんは、ユマの世話に夢中で、サンダルを片方しか履かずに玄関にでたり、何日間も歯を磨くのも忘れてしまったりしている。

しかし、家族に対する深い愛は変わらない。マシューさんはこう話す。

「ありきたりの言葉ですが、こんな気持ちを感じるなんて想像もしていなかったです」

「ふたりでこれほどまでに何か切望し、それを叶えるために情熱を持って取り組んだことで、夫に対して、さらに深い敬意と愛を感じています」

「毎日がワクワクしています。ユマを初めて家に連れて帰った日に、タイ料理を注文して、お気に入りのテレビ番組を見ました。今までと同じことをしているんですが、ユマがいることで、何もかもが変わりました」

ARIEL PANOWICZ
3月25日に孫娘を出産したセシル・エレッジさんと、彼女を囲む家族

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。

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