女性の関心は世代で移り変わる?――30代は保育、40代はPTA、分析で見えた傾向

20代女性が知りたい意外なテーマとは?
アフロ

毎日4000本を超える記事の中から、「公共性」と「社会的関心」を2大柱に厳選したニュースを配信しているYahoo!ニュース トピックス。より価値ある情報をユーザーに届けるため、Yahoo!ニュース トピックス編集部ではログインユーザーを対象に「年代・性別ごとにどの記事がどれだけ読まれているか」のデータを収集・分析し、サービス改善に役立てています。

連載「Yahoo!ニュースの作り方」では前回、男性読者のアクセスデータを「スポーツ」カテゴリーに絞って分析し、他の世代に比べて、20代は野球、30代はサッカー、そして40代はF1やプロレスに高い関心を示すという興味深い事実が明らかになりました。

そこで今度は女性読者に対象を絞り、アクセスデータを分析。すると、男性とは明確に異なるアクセス傾向が見えてきたのです。

取材・文/友清 哲

編集/ノオト

30〜40代女性の関心は「子育て」に集中し、子どもとともに関心も成長していく

今回は2018年3月1日から31日までの1カ月間のデータから、独自の「特徴スコア」を元にランキングを作成。これは純粋なPV数ではなく、世代ごとのユーザー数の違いを考慮のうえ、他の世代と比較したアクセス数の偏り具合から算出した指標です。

まず20〜40代女性でそれぞれスコアが高かった上位10本をピックアップ。すると「女性の世代ごとの生活の違いをそのまま表す、興味深い結果が出ました」とYahoo!ニュース トピックス編集部でデータ分析を担当する中上芳子さんは話します。

「このランキングを見ると、エンタメ関連の話題に興味がある20代に比べ、30代になると育児や保育の話題に関心が変化することが分かります。また、40代も30代と同様に子育てへの関心が高いのですが、話題の対象が乳幼児から小学生に"成長"しているのが特徴です」

また30代と比べ、40代ではエンタメ関連の話題がいくつかランクインしていることから、子育ての負担が少し軽減している様子もうかがえます。

「つまり女性ユーザーの関心の対象は、ライフステージに合わせて変わっているわけです。これは年代が上がっても好むスポーツのトレンドが維持されていた男性ユーザーの傾向に比べると、対照的な結果といえるでしょう」(中上さん)

ほかにも、保育園の認可を巡る行政の方針を伝える記事や、特定の地域を対象とした内容の記事であっても、子育て関連の内容であれば、30代女性ユーザーは広く高い関心を示す傾向が明らかになったのだそう。

「30代の女性ユーザーは、男性のようにスポーツジャンルへの興味が強いというより、『子育て』にまつわる話題はオールジャンルで何でも関心が高いということが分かりました。例えば、特定の地域でインフルエンザが大流行しているという話題にしても、地域を問わずに読まれています。30代女性は婦人科系のがんなど自分に関係しそうな病気より、子どもがかかりそうな病気、といったように、世のお母さんたちにとって、今まさに子どもの周囲で起きている事象全般に非常に高いニーズがあるということですね」(中上さん)

なお同じ子育て世代の30~40代のデータでも、男性ユーザーのランキングに育児関連トピックは見当たりません。中上さんによれば、「男性の育休などを扱ったトピックスですら、女性ユーザーを中心に読まれている」とのこと。これは子育てがまだまだ女性に委ねられがちな事実を示しているのかもしれません。

20代女性が知りたい意外なテーマ

一方、上の世代と比べて育児の当事者が少ない20代では、エンタメ関連のトピックが中心となっています。しかし、そこには意外な傾向が......。

「芸能人の動向などの話題に混じって、『耳が聞こえない被災者の7年』といった感情に訴えかける切り口、新聞記事で言うと『人もの』と言われるような記事がランクインしているのも、この世代の特徴です。20代女性は集計期間を問わず、常にこうした話題が上位にあがることが多く、これは集計してみて初めてわかった事実です」(同・桃井晴康さん)

傾向としてファクトベースの記事よりも、当事者の心情や状況を描いた記事がよく読まれているのだとか。

「たとえば今回ランクインしているオウム真理教関連の話題にしても、事件を直接知らない世代にもかかわらず、高い関心を集めています。上位トピックの内容から、20代が知りたがっているのは、やはり被害者の胸の内であることがわかります。この傾向は、東日本大震災や熊本地震など、風化させないために若い世代にどう伝えるか、のヒントになったと思っています」(中上さん)

やや難しい政治・経済のニュースであっても、切り口や表現によっては20代の関心を集められることを、今回のデータは示しています。これはデータを元に可視化しなければ把握できない傾向でした。

女性ユーザーにより価値の高い情報を届けるために

編集部によれば、Yahoo!ニュース トピックス読者の男女比は、およそ男性6.5:女性3.5。今回の女性ユーザーの分析は、「そもそも女性の興味、関心が高い情報をYahoo!ニュース トピックスは届けられているのか?」という疑問から始まった取り組みなのだそう。

では、こうしたデータは今後のYahoo!ニュース トピックス編成に、どのような影響を与えるのでしょうか?

「この結果をもってすぐに、30代女性に向けて育児関連ニュースの掲載本数を増やしたり、40代女性に向けていじめ問題やPTAの話題を積極的に探したりといったことはしませんが、これまで取りこぼした記事がなかったか、検証と反省の材料として活用することになります。その上で強化すべきジャンルは強化し、女性ユーザーにとってもより価値のあるトピックス編成を心掛けていきます」(桃井さん)

取り上げたYahoo!ニュース トピックスが「これは女性ユーザーの反響が大きそう」と予想しても、意外なほど無反応に終わることもあります。だからこそ、確かなデータを元にユーザー傾向を俯瞰(ふかん)する意義は大きく、それが今後のトピックス編成の糧となるのです。

こうしたデータを受けた取り組みの1つが、Yahoo!ニュースのアプリ内に反映されています。それが「話題のニュースの流れを見る」というコーナーの「子育て支援・待機児童問題」というカテゴリ。

これは1つの事件や話題に関する記事を時系列でまとめたコーナー。どうしても"点"で見られがちなネットニュースを、時間軸ごとの"線"で見せることで、次々に情報が更新される時事的な話題や長く続く問題への理解を促そうという取り組みです。

通常は旬の話題に合わせて掲載カテゴリは次々に入れ替わりますが、「子育て支援・待機児童問題」は常設の固定カテゴリに。これも、Yahoo!ニュースにアクセスする女性ユーザーのボリュームゾーン(30代)を意識した施策で、Yahoo!ニュースのさらなる価値向上を意識してのこと。

「ただ、Yahoo!ニュースは、決してアクセス数だけを重視しているわけではありません。PVにつながらなくても重要な話題は世代ごとにたくさんあるはずで、私たちとしてはそこをできるかぎりカバーしていきたいと思っています。そのためには、今どのような記事が読まれているのかを正確につかむ必要があり、そのための試行錯誤は今後も続けていくつもりです」(桃井さん)

この先も、時代や世相に合わせてユーザーの興味や関心、必要とする情報はどんどん移り変わっていくでしょう。そこで編集部がどのような手を講じるのか? それもまた、Yahoo!ニュースを読む興味深いポイントと言えるかもしれません。

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