地元の食材で新しいレシピを。ファッションアイコンと被災地を支援する「YOUR RESTAURANT」が全国各地に届けたモノ

紗栄子、YOSHI...ティーンのアイコンたちが、台風19号の被災地を巡った

2019年10月の台風19号。千葉県、長野県、宮城県など全国各地に、河川の決壊や浸水・建物倒壊など甚大な被害をもたらした。それから半年近く経った今も、被害を受けた地域では倒壊家屋のあと片付けや、地元の農産業の活性化など復興の途上にある。
そんな状況を少しでも応援したいとスタートしたのが、『YOUR RESTAURANT』だ。

社団法人「Think The day」を運営し、積極的に支援活動を行うモデルで女優の紗栄子さんと、ミレニアルズのアイコンとして注目を集めるモデル・俳優・アーティストのYOSHIさんが中心となって、同世代のインフルエンサーたちと台風19号の被災地を巡るイベントを開催するこの取り組み。ケータリングサービス『GlobeCaravan』のシェフ、寺脇加恵さんが考案した、各地のみずみずしい食材を使ったメニューを、地元の方々と彼らが一緒に楽しむ、たった1日だけのレストラン。

3地区での開催をすべて終えた活動報告会が3月、東京都内で行われた。

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ティーンのアイコンたちが台風19号の被災地へ

台風19合の被災地である千葉県館山市、長野県佐久市、宮城県角田市の3地区で開催された1日限定のレストラン『YOUR RESTAURANT』。紗栄子さんやYOSHIさん、モデルのミチさん、よしあきさん、重川茉弥さん、仲本愛美さんらが、地元の方々やティーンたちと一緒に、地元の食材を使ったオリジナルメニューを楽しみ、復興を応援する企画だ。

『GlobeCaravan』の寺脇シェフは地元の農家や生産者たちと交流しながら、各地の食材を見て回り、それぞれのイベントで提供するレシピを考案。土地土地によって採れる食材や土壌などに大きな特徴があったと振り返る。

ケータリングサービス『GlobeCaravan』のシェフ、寺脇加恵さん
ケータリングサービス『GlobeCaravan』のシェフ、寺脇加恵さん
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鯉やエディブルフラワーなど各地の食材がフルコースに

1カ所目の千葉県館山市では、穏やかな気候と海に面した立地を生かしたメニューを開発。朝採れいちごとエディブルフラワーを使った『いちごとトレヴィスのサラダ』や、採れたての『アジとフェンネルのパスタ』などを提供。

千葉県館山市のメニュー、苺と花のサラダ バルサミコのソース
千葉県館山市のメニュー、苺と花のサラダ バルサミコのソース
YOUR RESTAURANT

「館山は土壌が豊かで気候が穏やか。イタリアンのお店がたくさんあるせいか、今までにない野菜を生産しようと意気込む若い生産者が多かったですね。カラフルな野菜が多く、柑橘類がよく採れる。はちみつや地元のブランド牛など調達できる食材が幅広いのも特徴です」と寺脇シェフ。

2カ所目の長野県佐久市で寺脇シェフにとって驚きだったのは、鯉を食べる習慣があったことだとか。どのように調理しようか考えあぐねたそう。

「佐久鯉は、匂いが強く骨が多かったため以前は若い方たちに敬遠されがちだったそうですが、最近では新しい調理方法が開発されて時間が経つほど美味しく食べられます。長野は発酵食材の種類が豊富。すべてのメニューに発酵食材を用いました」

長野県佐久市のメニュー、鯉と荏胡麻のカルパッチョ望月高原のヨーグルトソース ふきのとうのフリット添え
長野県佐久市のメニュー、鯉と荏胡麻のカルパッチョ望月高原のヨーグルトソース ふきのとうのフリット添え
your restaurant

佐久市の野沢南高校の生徒たちは、2019年に開催された「全日本高校生WASHOKUグランプリ」で佐久鯉の唐揚げなどのメニューを披露して、全国優勝。当日はその時の優勝メンバーがイベントに参加、料理の仕込みからサーブまでのすべてを寺脇シェフと一緒に行い、充実した時間を過ごせたそうだ。

3カ所目の宮城県角田市では、『秘伝豆とネギのスープ』やほぼ野菜だけでできている『赤鶏と長芋のラザニア仕立て』といった新しいメニューが誕生。

「メイン料理の『鴨ロースの焦がし葱包み』で使った野田鴨は、肉厚でさっぱりしているのにジューシー。あまりのすばらしさに、イベントが終わったあと私自身が使おうと仕入れることを決めました」

宮城県角田市のメニュー、鴨ロースの焦がし葱包みごぼうの蜂蜜焼き カリフラワーのソース
宮城県角田市のメニュー、鴨ロースの焦がし葱包みごぼうの蜂蜜焼き カリフラワーのソース
your restaurant

全国各地の生産者やティーンたちとコミュニケーションした寺脇シェフは、温かい人々に囲まれ、もっと復興を支援したいという気持ちが高まったと話す。

「多くの生産者と直接触れ合うことで、強くインスパイアされ新しい料理のイメージがたくさん湧きました。紗栄子さんやYOSHIさんなど影響力のある方々が各地へ出向くことで、“復興”や“支援”にそれほど馴染みがないかもしれない、ティーンも積極的に参加してくれます。復興には、いろんな人の力が必要なんだなと実感しました」

避難所だった体育館を、笑顔あふれるレストランに

報告会の後半は、紗栄子さんとYOSHIさんが登場。各地で行われた『YOUR RESTAURANT』の様子を伝えた。

館山市や佐久市では、被災当時避難所だった体育館をイベントの会場として利用。その時の参加者の笑顔が印象に残っているとYOSHIさん。

「避難所として使われていた場所だから、みんな当時のつらい思い出や悲しい気持ちが残っているはず。だけど同じ場所でこういうワクワクするイベントを行えば、楽しい記憶に塗り替えられる。そのお手伝いができたならいいなと思います」

千葉県館山市で、地元の方々との食事会の様子
千葉県館山市で、地元の方々との食事会の様子
your restaurant

紗栄子さんは「私も避難所に炊き出しへ何度も伺いました。みんなでこうしてもう一度集まって避難所を笑顔のあふれる場所へと生まれ変わらせることができたら、とてもすてきですよね」と話す。

3カ所すべての『YOUR RESTAURANT』に参加したYOSHIさんは、各地の共通点として「みんなとにかく元気だった!」とうれしそうに振り返った。「大きな被害に遭って、みなさん凹んでいるのかなと思ったけれど、全然そんなことはありませんでした。何事もなかったんじゃないかと勘違いするくらい、みんな前向きで新しい農産物や食材を作ろうと意気込んでいました。そういう方たちを笑顔にしたいですね」

角田市の回に参加した紗栄子さんは、「イベントに参加したおかげで、料理のレパートリーが増えました」と笑う。「寺脇シェフがアロエサイダーを考えてくれたんですよ。それを家でも再現して、楽しみました。残ったアロエは保湿のためにバスタイムで使いましたよ(笑)」と、トップモデルならではのアイデアも。

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各地で地元の生産者や高校生たちと触れ合い、被災状況やその後の生活、日々の暮らしなどについて話し、親交を深めた2人は、このイベントを通じて感じたことをこうまとめた。

「僕たちはどうしてもSNSのつながりばかりを大事にしすぎてしまうし、それももちろん大切です。だけど人と人が心の傷を癒やし合いたいのなら、直接会うというリアルなつながりも、これからは大事にしていきたいと感じました」(YOSHIさん)

「生産者のみなさんが大変な時期を乗り越え、手塩にかけて育てた食材がこうしてテーブルに上るのはすごいこと。日本中に温かいつながりが生まれたらいいなと思っています」(紗栄子さん)

2人はお揃いの特製スウェットで場を盛り上げ、これからも被災地を支援していくことを誓った。


(取材・執筆 石川香苗子)

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