政府が平成26年版「子ども・若者白書」を発表した。子ども・若者白書とは、子ども・若者育成支援推進法に基づいた年次報告書として毎年国会に提出されるものである。日本経済新聞ではその発表を受け、記事「ニート、60万人に減少 子ども・若者白書」を出している。ここで着目したいのは若者の年齢として15歳から34歳までが使われていることだ。「若者」という呼称は法律上規定された年齢区分はないものの、この15歳から34歳が使われてきた。

政府が平成26年版「子ども・若者白書」を発表した。子ども・若者白書とは、子ども・若者育成支援推進法に基づいた年次報告書として毎年国会に提出されるものである。

日本経済新聞ではその発表を受け、記事「ニート、60万人に減少 子ども・若者白書」を出している。

政府は3日、2014年版「子ども・若者白書」を閣議決定した。15~34歳の若者で仕事も通学も求職もしていない「ニート」は13年に60万人で、前年に比べ3万人減少したことが明らかになった。この年代の人口に占める割合は0.1ポイント減の2.2%だった。

内閣府は「景気が改善傾向にあることに加え、ニートや引きこもりの就業、教育の支援拠点『地域若者サポートステーション』の数が増えたことが減少の要因ではないか」と分析している。

年代別のニート数は15~19歳が9万人、20~24歳が15万人、25~29歳が17万人、30~34歳は18万人だった。

ニートが求職活動や就業を希望しない理由に関し、15~19歳は「学校以外で進学や資格取得の勉強をしているため」、それ以外の年代は「病気やけがのため」が最も多かった。

:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG03005_T00C14A6000000/|日本経済新聞

ここで着目したいのは若者の年齢として15歳から34歳までが使われていることだ。「若者」という呼称は法律上規定された年齢区分はないものの、この15歳から34歳が使われてきた。しかし、政府や行政の政策においては、「子ども・若者育成支援推進法」ができて以来、「概ね30代」「40歳未満」など、その対象年齢の上限を39歳と位置づけるものが多くなった。

法律上規定されたものがない以上、明確な理由はわからないが、39歳から40歳に年齢が変わるからといって急激に心身に変化が生まれるようなことはなく、”とりあえず”的な要素が強いのではないだろうか。

可能性として耳にしたことがあるのは、年金受給資格期間との関係性であり、原則として国民年金に加入している被保険者期間が合計で25年以上の必要があるが、受給開始年齢が60歳から65歳へと引き上げることに関連して、若者の年齢も34歳から39歳になったのではないか、という仮説だ。

話を戻すと、そもそも若者という呼称が示す年齢が39歳までであることに意味があるのか。これは何らかの政策的枠組みを活用しないひとにとって意味はないだろう。しかし、若者対象の行政事業によるサポートを必要とするひとにとっては大きな意味を持つ。40歳を越えた時点で対象者から外れてしまうからだ。

特に、「無業」状態で、かつ、「求職型(いわゆる失業者)」でない場合、日本では「若年無業者」対策はあっても、「無業者」対策はほとんどない。平成25年に ができ、これは特に年齢要件を定めていないようであるが、あくまでも生活に困窮されている方であり、その運用は自治体に任されているため、準備期間の現在、どのような形で各地試行されているのかまとまった資料はまだ見ていない(専門分野の方はお持ちかもしれない)。

ちなみに、呼称における年齢区分でよく出てくるのが「18歳の壁」と言われる児童福祉法における対象「児童」の連麗が18歳未満であることから、対象年齢という大きな「壁」の前に、継続的な支援が原則的にできないことを指している。事業を始めた頃はまったく知らなかったのだが、社会福祉士の方々と情報交換をするようになってから、非常に大きな課題であると、現場でおきている実情などをお聞きして認識を新たにした。

内閣府では「法律の名称」「呼称等」「年齢区分」でその対象者がどのようになっているのかをまとめたサイト「各種法令等による青少年の年齢区分 」が公開されている。

例えば、同じ「児童」でも年齢区分はかなり異なる。

・児童福祉法:18歳未満の者

・児童手当法:18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者

・母子及び寡婦福祉法:20歳未満の者、労働基準法では15歳に

・労働基準法:15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの者

・道路交通法:6歳以上13歳未満の者

・インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律:18歳未満の者

・児童の権利に関する条約(参考):18歳未満の者

このなかで興味深いのが、勤労青少年福祉法における「勤労青少年」については、法律上の年齢区分規定はないものの、第8次勤労青少年福祉対策基本法(平成18年10月厚生労働省)において、「おおむね35歳未満」としていると書いてあることだ。時間軸は多少前後するものの、2000年代半ば以降に作られた若者対象の事業の多くが、その対象年齢を35歳未満とおいてきた理由のひとつとして、この方針の存在があった可能性があることを示唆している。

※個人的には「若者対象事業」と「対象年齢」がしっかりわかれている必要はないと考える。本来はある事業が効果を発揮し得る対象者がいるだけだからだ。ただし、15歳と50歳を同じ事業枠内でうまくサポートするには、相応の体制を構築しなければならない。むしろ、民間事業者としてチカラを発揮しやすい対象者を定めればいいだけのことだ(もちろん年齢を含む)。ただし、法律上の規定、または、”雰囲気としての規定”は、行政サービス(制度、政策など)の仕様に大きな影響を与えることは事実のため、その意味においては新たに法律上の規定を作るのか、それとも制度や政策ごとに対象年齢を見直す動きを起こしていくのか、どちらにしても国民個人にネガティブな影響を及ぼすのであれば声をあげていく必要はある。

注目記事