#CHANGEDESTINY
2021年03月24日 07時32分 JST | 更新 2021年04月22日 14時50分 JST

「女性起業家」「ママ社長」の強烈な違和感。起業家が「令和の女性のロールモデルになる」と決意するまで

なぜ男性は「男性社長」と言われないのに私だけ…。DeNAを辞めて起業したYOUTRUST代表の岩崎由夏さんが「令和の女性のロールモデルになる」と腹をくくるまで。

Kazuhiro Matsubara/ハフポスト日本版
YOUTRUST代表の岩崎由夏さん

私は「女性」起業家なのかーー? 

「美人だから応援してるよ」「女性なのにすごいね」・・・そうした声をかけられ続けていたら、ある時、強烈な違和感を感じた

新卒で入社したDeNAを辞め、2017年に起業した岩崎由夏さん、31歳。メディアに出れば「女性を売り物にしている」と言われるなど、心ない言葉にさらされ、「それが嫌で“女性色”を消すのに必死になっていた」という。

そんな彼女が一転。「私は、令和の女性のロールモデルになる」と宣言している。

メンバー約40名を率いる社長であり、1児の母でもある彼女は、葛藤をどう乗り越えてきたのか。

Kazuhiro Matsubara/ハフポスト日本版
YOUTRUST代表の岩崎由夏さん

「私って、女性なんだ…」

岩崎由夏さんが、キャリアSNS「YOUTRUST(ユートラスト)」を運営する株式会社YOUTRUSTを立ち上げたのは2017年12月。

「和製LinkedIn」とも言われる同サービスは、今すぐ転職したいと考える求職者のみならず、「今後転職するかもしれない」「本業以外の仕事をしてみたい」とゆるく仕事やポジションを探す人同士がつながるプラットフォームだ。

新型コロナの影響でリモートワークや副業が広がってきたこともあり、利用者を増やしている。

大学を卒業後、2012年に新卒でDeNAに入社。翌2013年には、第2次安倍政権が「女性活躍」を成長戦略の目玉として打ち出した、そんな時代。

結果を残した人が着実に裁量をひろげていく社風の中で、性別をあまり意識することもなく仕事に情熱を燃やしてきた岩崎さんだったが、起業してから急に「女性であること」を意識するようになったという。

「『女性社長、応援しています』とか『美人だし大丈夫だよ』という言葉をかけられることがよくありました。でも男性社長、とは言わないし、外見と社長も関係ないですよね。相手は悪気がなく、何なら褒め言葉くらいの気持ちで言っていることはわかりながらも、『女性』であること以外に私に貼られるタグがないのかな、と思うと悲しかったですね」

「何が彼らにこれを言わせてるんだろう?私は女性として戦ってるつもりは1ミリもなくて、YOUTRUSTという事業で戦ってるのに…、と悔しさと憤りを感じていました」

Kazuhiro Matsubara/ハフポスト日本版
YOUTRUST代表の岩崎由夏さん

“詐欺師症候群”に陥っていた人生

FacebookのCOO、シェリル・サンドバーグの著書「リーン・イン」でも紹介された、「詐欺師症候群(インポスターシンドローム)」という言葉がある。

褒められても自分の力によるものだと思えなかったり、昇進を打診されても「私には無理」と断ってしまう自己評価をおとしめて悩む状態のことで、一般に女性の方が陥りやすいと言われる。

「これ、私じゃん・・・・・・」

この言葉を知った瞬間、そう感じたという岩崎さん。

「性別なんて関係ない、と思っていたDeNAでも、典型的なインポスターシンドロームに陥っていました。そろそろマネージャーになってみたいと思っても上司に伝えることができなかった。自分にその能力があるのか自信が持てず、手を挙げるなんておこがましいと思っていたような気がします」

思い返せば、無意識のうちに女性である自分を過小評価する経験は、初めてではなかった。

「例えば大学進学も。無意識に弟にいろんなチャンスを譲ってたんですよね。弟も私も進学校に通っていたのですが、彼の方が東大や京大を目指すべきと勝手に思いこんでいて、自分は家計を考えて実家から通える大学を選んでいた。誰からも頼まれてないのに、『弟は長男だし彼を優先すべし』と思っていたんです。親から一切そんなこと言われていないのに、無意識のうちに、幼い頃に触れたメディアや周囲の大人の会話などに刷り込まれていたんでしょうね」

Kazuhiro Matsubara/ハフポスト日本版
YOUTRUST代表の岩崎由夏さん

きっかけは妊娠・出産。先輩の背中が見えない

人生の目的を左右する転機が訪れたのは、起業から2年半が過ぎた頃。

2回目の資金調達の準備をしていた時に第一子の妊娠がわかったのだ。

「誰に相談したらいいんだろう? と考えた時に、女性のスタートアップ起業家で妊娠出産を経験している人がほとんど思いつかなかったんです」

この経験が、岩崎さんに「令和の女性のロールモデルになる」という決意をさせることになった。

「起業家で出産している人って、本当はもっといる。なのに、いないように見えている。これが問題だと思っていて。後輩や次の世代がもっと自由に選択しやすい社会になっていくためにロールモデルが必要だと感じたんです」

Kazuhiro Matsubara/ハフポスト日本版
YOUTRUST代表の岩崎由夏さん

岩崎さんが見せていきたいのは、自分らしく、仕事もプライベートも“全部どり”する姿だ。

「特別な天才でなくても、事業もちゃんと成功しているし、家族とも楽しくやっている、となりたいです。仕事とプライベートが、二項対立じゃなく当たり前に両方とれる社会になって欲しいから、“両どり”している自分を見せていきたい。そのためにも事業を尋常じゃないほど成功させないといけないと思っています」

「少し上の世代で活躍している女性経営者や女性リーダーに対して『あの人みたいにはなれない』という声がありますよね。それって、成功のために何かを捨てているように見えるからだと思うんです。決してそんなことはなく、彼女たちも歯を食いしばる思いで重大な選択をし続けてきた結果なのにも関わらず。何かを手放さなければビジネスで成功できない、自分を曲げないと上に上がれない…そういう思い込みや誤解を、自分の姿を通して解いていきたいです」

Kazuhiro Matsubara/ハフポスト日本版
YOUTRUST代表の岩崎由夏さん

“強強(つよつよ)”の私たちが、トップラインを押していく

「令和のロールモデル」という言葉を使うとき、岩崎さんがイメージするのは、過去や未来という「縦」の時間軸と、一緒に時代を推し進めようとする「横」のつながりだ。

「ジェンダーギャップがそもそも社会課題として認識される時代になったというのが、上の世代とは全然違う。課題だと言うことが憚られ(男性と同じ土俵での)成功が求められた時代から、今やっと『問題だよね』と声をあげられるようになってきた。でも100年後から見たら、今ってすごく滑稽なんでしょうね。一刻も早くそうなるような一助に、自分がなれたらいいなと思います」

事業でも私生活でも結果を出したいという岩崎さんの言葉は、ともすれば強者のそれに聞こえてしまう。別の誰かを取り残す不安はないのだろうか。

「私みたいに、東京で起業して子育てもして、世の中を変えてやるぜという意思を持っている強そうな人間が、トップラインを力づくで押さないと、世界は変わっていかないと思うんです。これは1人では到底無理で、同じような強強(つよつよ)な人たちと一緒に、色んなあり方を見せながら、押しあげていきたい。もちろん成功や幸せの形は人それぞれ。その上で、何かを得るために何かを失う、というのではなく、自分の求めるものを“全部どり”しているように見える人が、この世代でウワっと生まれないとな、と思うんです」

Kazuhiro Matsubara/ハフポスト日本版
YOUTRUST代表の岩崎由夏さん

「私のため」じゃ頑張れないけど「誰かのため」なら頑張れる

こうして腹をくくった岩崎さんは、起業したての頃なら笑顔で受け流していたことにも、声をあげるようになった。

「先日、とある方から久しぶりにFacebookメッセンジャーで連絡をいただいたんですけど、『ご無沙汰してます、美人ママ社長!』から始まっていて。見た瞬間にモヤっとしました。こう言われる原因は私にあるのかなぁ、と思ったりしたけど、次の瞬間すぐに『待て待て、違う』と自分で打ち消しました」

夫にも相談をして文章を添削してもらいながら、「そういう言い方はやめてください」と相手に返信した。

「相手の方はわかってくれて、謝ってくれました。やっぱりスルーしてしまわなくてよかったです」

Kazuhiro Matsubara/ハフポスト日本版
YOUTRUST代表の岩崎由夏さん

また、スタートアップ業界で有力なピッチイベントへ参加する予定だったが、「30名近い審査員が全員男性」という理由で、イベント参加を辞退したこともある。辞退の際には、なぜその決断に至ったのか、権威あるイベントだからこそ日本のスタートアップ発展のために意識改革と実行を成し遂げて欲しいという内容をしたため事務局に送付した。

岩崎さんを奮い立たせるのは「もう繰り返している暇はない」という強い思いだ。

「自分のため、というのを外すと急に言えるようになるんです。私が良くても、後から続く女性のことを思えば、声をあげるべきじゃないか。そう思うと頑張れる。少しでもひるみそうになったら、今、詐欺師症候群に陥ってるんじゃない? 勝手に忖度してない? と自分に問いかけて、勇気を出したい。強いマインドで、時代をしっかり前に押し進めたいですね」

Kazuhiro Matsubara/ハフポスト日本版
YOUTRUST代表の岩崎由夏さん

岩崎さん率いる「YOUTRUST」。広報を担当する女性は、新型コロナを機に単身赴任をしていた夫が住む仙台に転居し、2拠点生活のリモートワークを行う。

サービス開発をリードするプロダクトマネージャー(PdM)の女性は、妊娠中に転職をしてきて、間も無く出産を控えている。パートナーが1年の育休をとって育児を主導する予定だという。

ロールモデルの周りにはいま、着実に、別のロールモデルが集まり始めている。

(取材・文:南 麻理江 /ハフポスト日本版)

 

 

岩崎由夏さんが3月25日(木)夜9時からのハフライブに出演します。先日、経団連の副会長に女性ではじめて内定したDeNAの南場智子会長との”師弟トーク”にご期待ください。

番組概要:

配信日時:3月25(木)夜9時~

配信URL: YouTube

https://youtu.be/s9L9UplPKQ4

配信URL: Twitter(ハフポストSDGsアカウントのトップから)

https://twitter.com/i/broadcasts/1dRJZNneLgrJB

 (番組は無料です。時間になったら自動的に番組がはじまります)