香川真司、代表戦に向け「こんな大きな壁はない」(元川悦子 )

5日に行われる代表戦を前に香川真司が口を開いた。マンチェスター・ユナイテッドで不遇の時を過ごす日本の10番だが、メンタルは極めて前向きだった。悲壮感はなく、試合ができる喜びを感じているようだった。

5日に行われる代表戦を前に香川真司が口を開いた。マンチェスター・ユナイテッドで不遇の時を過ごす日本の10番だが、メンタルは極めて前向きだった。悲壮感はなく、試合ができる喜びを感じているようだった。

■「今はその壁をポジティブに捉えてる」

2014年W杯イヤーを迎えてから、所属のマンチェスター・ユナイテッドで1月1日のプレミアリーグ・トッテナム戦、1月11日のスウォンジー戦、2月25日のCL・オリンピアコス戦の3試合に出ただけの香川真司。

「実戦としては物足りない。しかも今年はここまでゴールがない。こんなに長い期間ゴールが取れないのは初めて」と本人もかつてないほど大きな挫折に苦しんでいる。

そんな彼にとって久々の日本代表戦となる3月5日のニュージーランド戦(東京・国立)はここまでの停滞感を打破し、悪い流れをポジティブに変える絶好のチャンスだ。

「もちろん試合に出続けることが選手にとっては大事ですけど、それはどうしようもないというか、自分がピッチで結果を残さない限り、得られないもの。置かれている状況は変えられないことだけど、それをポジティブなものにするために、5日に結果を残そうと思って戦いたい。

この試合が次につながって、いいきっかけになればいいいし、ムリならばまた次に頑張ればいい。とにかく前を向いてやっていきます。

こんなに大きい壁はなかなか経験できるものじゃない。そういうのを乗り越えて成長してくもんだと思ってますし、自分の人生もそうですから。今はその壁をポジティブに捉えてる。それがW杯イヤーの年に来るっていうのは、何らかの意味でもあるんだと思う。

その状況を変えるには、やっぱり僕が結果を残すしかない。ピッチの上で自分の力を証明できるように頑張りたいと思います」と香川は厳しい現状を客観視しつつ、物事を努めてポジティブに捉えようとしているようだった。

■達観したようなメンタルは先輩からのアドバイスか

デビッド・モイーズ監督就任直後の昨秋時点の彼は、そこまで冷静ではなかった。10月のセルビア・ベラルーシ2連戦の時は全身から悲壮感と焦燥感を漂わせ、「この2試合はすごく飲まれていたし、どこか試合に入り切れない部分があった。

コンディションの問題もあって、いきなり代表に来て試合をするのには状態が悪かった。やっぱりチームで出ないといけないと思います」と申し訳なさそうに反省の弁ばかりを口にしていた。

その後、浮上のきっかけをつかみ、10月末から12月にかけてはユナイテッドでの出番も急増。11月のオランダ・ベルギー2連戦での香川は本来の輝きを取り戻しつつあった。しかし、クラブの不振とフアン・マタら新戦力の加入もあり、彼の立場はシーズン序盤より険しいものになりつつある。

これだけの紆余曲折を経験すれば、どこか達観した部分やメンタル的な図太さが生まれてくるのかもしれない。もちろん長友佑都や細貝萌ら親しい先輩たちからも前向きになるようにアドバイスを受けただろう。

今季終盤を迎えた今、もはや自身の立場が急激に好転しないのは本人も十分に理解しているはず。だからこそ、できることを少しでもやっていくしかない。いい意味での開き直りが今の香川の中に生まれたようだ。

■「僕は常に90分やりたい」

実際、ニュージーランド戦に向けた合宿初日には「楽しみたい」という言葉を何度も何度も繰り返していた。

「まずホームでできるんで楽しみですし、個人としても試合が楽しみ。試合ができる喜びを今、すごく感じてます」

試合勘や実戦感覚の不足はどうしても不安視されるが、90分プレーできるコンディションは維持していると本人は言い切る。

「僕は常に90分やりたい。試合に出てないとかは関係なしに。クラブの練習はハードなのでコンディションは上げているつもりです。練習と試合は違うので、そこの難しさはもちろんありますけど、練習をやりながらつかんでいくしかない。とりあえず、出てないとかそういうことを頭に入れすぎずに、ピッチの中でやるだけかなと思ってます」

それだけモチベーションが高くなるのも、自身初のW杯となるブラジル大会がすぐそこに迫っているからだ。聖地・国立での最後の代表戦、加えて東日本大震災から間もなく3年と、今回のニュージーランド戦には香川の闘争心を掻き立てる材料が揃いも揃っている。この試合ではフレンドリーマッチではあるものの、下手なプレーは絶対に見せられないという思いは非常に強い。

■「ゴールや勝利を被災地に捧げられればいいかな」

「国立は歴史あるスタジアムですし、あこがれていた舞台。好きなスタジアムですし、最後になるので楽しみです。

それに震災に対しての思いは常にあります。ゴールや勝利を被災地に捧げられればいいかなと思ってる。あと1週間後に3年が経つってことで、自分がそういうものを届けられたらいいと思いますし、W杯イヤーなんで東北のみんなも盛り上がってくれればいい。改めて震災のことを振り返りながらいい戦いをしていきたいなと思います。

W杯に向けては、欧州2試合をいい形で勝てたり、自信を持てるところが沢山あったんで、それを継続したい。代表は時間が空くんで継続することが難しさでもあるけど、そうすることがW杯につながる。時間も少ないですけど、うまく戦っていきたいと思いますね」

ざまざまな思いを胸に、香川は久しぶりにエースナンバー10をつけてピッチに立つ。ブラジル本大会メンバー発表前最後の国際Aマッチでゴールという目に見える結果を残せば、長く暗いトンネルから抜け出せるだろう。明けない夜というのはない。香川にもきっと何かしらの希望が見えるはずだ。

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