無観客試合終了後、浦和レッズの淵田敬三社長は記者会見を開いた。だが、そのすべてが報道されたわけではない。今メディアに出ているのは一部のみだ。ここに全文を掲載する。報じられなかった重要な質疑も含まれている。
■淵田敬三社長、記者会見冒頭のコメント
「浦和レッズ代表の淵田でございます。本日、無事無観客試合を終了できまして全ての関係された皆さま方に、まず御礼と感謝を申し上げたいと思っております。
特に、本日の趣旨をご理解いただいた浦和レッズのファン・サポーターの皆さま、そして清水エスパルスのファン・サポーターの皆さま。本当にありがたく思っております。
また、両チームの選手も最後の最後までファイト溢れるフェアプレーをしていただいて、本当にありがたく思っています。このような状況の中でプレーすることは非常に難しいと思っていますけども、本当に最後まで戦ってくれて、感謝の気持ちでいっぱいです。
本日の試合を経験しまして、『サッカーはやはりサポーターがいないと寂しい』と、『サポーターの応援があって初めてサッカーなんだ』ということを痛感いたしました。二度とこのようなことを起こさないように、改めて肝に命じた次第であります。
本日は、皆さま方も十分認識いただいたと思いますが、浦和レッズにとって再出発の日でございます。『SPORTS FOR PEACE!』。差別を撲滅して、断固として戦っていく浦和レッズに変わってまいります」
続いて、淵田社長から資料が読み上げられ、『SPORTS FOR PEACE!』の説明があった後、質疑応答に移った。
■当日は社員含め229名の体制
――無観客試合を行われて、観客の方もこの周辺にはいらっしゃらなかったように我々は感じました。この試合自体、いつもとは違う雰囲気で行われました。感想を改めて教えてください。(記者A)
「さきほど申し上げた通り、我々は無観客試合になってから事前にホームページ等で、サポーターの皆さまに『できるだけ(スタジアムに)来ないでください』というようなお断りを呼びかけました。
皆さん色々な気持ちだとは思いますけれど、今日はご自宅で、またはいろんな所で観戦していただいたのかな、と。ご協力に対して、本当にありがたかったと思っております。
また試合も、普通の試合とは全く違うと皆さまも感じられたと思いますけれど、やはり『ファン・サポーターの声援があって初めてサッカーというのは盛り上がっていくのだ』、『選手もそういう声を聞いて盛り上がってファイトしてプレーしていく、こういう環境の中でサッカーをやらないといけないな』と強く思いました。二度とこういうことを起こさないように、改めて私自身が思っている次第です」
――本日の警備体制とチケット等の払い戻しの進捗状況についてお伺いをしたい。(記者B)
「警備体制は、社員も含めて230名だったか...。すみません、exactな(正確な)数字はないのですけども、それくらいの万全の体制を整えました。
チケットの払い戻しの状況については、承知していません。順次上がってきていると思いますけれど...申し訳ございません」
「警備体制について申し上げます。本日、警備員177名でございました。場内場外含め177名でございました。社員を含めますと229名になります」(白戸秀和社長補佐)
■横断幕の禁止、期間は設けていない
――横断幕やフラッグの許可はいつぐらいを目処に考えていらっしゃるのですか?(記者C)
「今皆さまには『当面の間』と申し上げております。この『当面の間』の意味は、我々がある一定のルールの中で管理できるような確証を得た、それとやはり、そういうものに対してファン・サポーターの方がご理解、ご協力をいただけると判断できるような段階になった時に、やれるのかなと思っております。
場合によっては、順次ある旗からはOKということで取り進めることも視野に入れて考えていきたいと考えています」
――期間としては特に設けていないのですね?(記者C)
「はい」
――今いただいているこのリリースの中で、4段落目に『まずはクラブの風土・意識を改革します』と書いてありますが、ご就任されて早々恐縮ですが問題となるべきクラブの風土と意識というのは社長自身どのようなものだとお考えですか?(記者D)
「今回の問題の発端が、掲示された横断幕に対する意識、感性が低かったというのがございます。
それと、ここにも書いておりますが、旧来積み上げてきたサポーターとの関係、これは自主を重んじてできるだけサポーターの皆さまが盛り上げていただくという、観客が築いてきたわけですけども、ともすればそれがやはり甘くなってしまうと言うか、あまりにも頼りすぎてしまうという部分も出てくる。そういう意識をもう少し変えていかなければいけない。
特にこういう差別問題について、断固たる意識を持てるような、意識をレベルアップしていかなければならないと思っていますし、また社内の一つひとつの仕事の中で、かなり良くはなってきているのですけれども、横の連携をしっかりしていくことも必要ではないかなと今考えていまして、そういったものに取り組んでいきたいと考えております」
■なぜ名前が公表されないのか?
――今回、問題ある掲示をしたサポーターのグループから改めて反省や、クラブの方に申し出みたいなものはあったのでしょうか?(記者E)
「前の会見でも申し上げましたけれども、チームは解散しております。解散する時に、謝罪の言葉もございました」
――今日改めて、ということはなかったのですか?(記者E)
「今日来ていませんし...」
――いや、あの例えばクラブの方に連絡があったとか...。(記者E)
「ないです」
――今、『解散したグループ』と出ましたが、私が取材するところでは、そのグループは提携するサポーターズグループがあり、そのグループがこの(解散させられた)クラブのサポートを中心的に行っていると聞いております。
提携関係にあるグループに対して、クラブとしてはどのような指導であったり、あるいは、今回のグループに関しても名前が公表されていないことに非常に憤りを覚えているサポーターが多く、何というグループで、どれくらいの規模で、また提携しているグループはどこなのかと。
ドラスティックにゴール裏、浦和レッズのサポーター、応援スタイルが変わっていくには、そういうところを変えなければまた同じことが起こるんじゃないかなと私は考えているんですが。
私自身、浦和レッズのゴール裏にいたことがございます。また、応援をリードしていたことがございます。95年のある事件を契機に、私はスタジアムを去りました。浦和レッズはその時に、本当のことを言ってくれませんでした。今回もまた同じことになるのかなと思っております。
私は浦和に住んでおりまして、浦和レッズを信じております。20年間ともに歩んできておりますので、もう裏切られたくないんです。我々の子供に浦和レッズを託すためには、新しく変わるといった具体的に『解散しております』ではなく提携関係のクラブにも解散を申し入れるくらいの強い意思を見せてもらいたいなと。
癒着とか慣れ合いとかそういったものでの一体感であるならば、いらないんじゃないかなと考える人も多いと思うのですが、社長はどのようにお考えでしょうか?(記者F)
■自由席を指定席に変更することも視野に
「まず、我々が今スタートしたのは、その『コア』と呼ばれるゴール裏のチームだけではなくて、あらゆるサポーターの方からいろんな意見を聞いていこうと。もちろん、今仰ったグループも含めての話ですけれども。
それと、この事態が起こった時に、ホームページに色んな意見をいただいております。それらを総合すると、やはりゴール裏、バックスタンドの応援のあり方、スタジアムの運営の仕方を変えていかないといけないと思います。
グループの解散以前に、まず我々がいかにゴール裏、バックスタンドをしっかり管理できるような形をとれるかということを今考えています。
具体的には、今までは通路も含めて応援が埋まっていましたけれども、それだと何が起こっても我々は入っていけないんですね。そこにも入れるようにして、我々のスタッフ、それから警備会社の方にも入って行ってもらうと。まずそういうことをやっていこうと。
それとルールという意味では、いろんなルールがありましたけれども、旗の持ち込みのルールを変えていくとか、またはグループ、それから旗の登録制といったものも導入していきたいと考えています。これもあらゆるサポーターの皆さんとの話し合いの中で築き上げていくものかなと考えております。
そういう積み重ねを早急にして、変えていきたい。『断固として我々は生まれ変わるんだ』という意識でやっています。信用してください」
――(ゴール裏は)自由席ですけども、それを指定席にすることでより管理はしやすくなると思いますし、今自由席は「不自由席」と言われているくらい、既得権益を得たサポーターが同じ場所を陣取るということ、あるいは先に入場した者が数多くの席を埋めてしまうことで、サポーターが去っている状況が少なからずあると思いますが、今後、自由席が指定席に変わることもふまえて考えてください。(記者F)
「はい。そういうことも視野に入れて考えています」
■サポーターの嫌韓事情を選手に伝えた事実はない
――10日前の会見の時にもクラブ内の処分について検討されているとありましたが、その後何かありましたか?(記者G)
「今ヒアリングを終えて社内のプロセスに則って、粛々と進めている段階です。まだです」
――今回の横断幕を掲げた人に無期限の入場禁止という処分が下っていますが、どのようにしてスタジアムでその方を判別するのか疑問があり、自由席であっても指定席であっても名前を変えて入場することは可能だと思いますけども、入場禁止に対してどのように措置をとるのか、お願いします。(記者H)
「担当が顔を分かっているので、ゲートでチェックして...」
――全てのゲートに入場禁止の方の顔がプリントされた何かを配布して、ということですか?(記者H)
「プリントかどうかまでは分かりませんけども...まだ決まっていません」
――サポーターの新しいグループなどについては、どんな形で話し合いに向き合っていこうと考えていますか?(記者I)
「今お話させていただきました通り、グループ単位でお話しさせていただく場合もありますし、それからタウンミーティングもあります。グループになっていない方もいらっしゃると思っています。
実はそういう方にもすでに3回くらい我々が出て行ってお話をさせていただいていますし、グループの方々とも数回のコミュニケーションをとっています。
そういった形でお話を聞きながら、我々としてどういう方向に向かっていけばいいのか。安全で、誰もが安心して楽しく観戦できるスタジアム。これが我々のゴールです。そのためにどういう形が取れるのかということを、これから作り上げていきたいと思います」
――ある雑誌の中で、サポーターのコアな方で浦和レッズというチームに対して嫌韓であると。チームのサポーターが嫌韓であって、それをクラブの関係者も知っていて、その選手にも伝えていると、そういった話が出てきた。そのことについてクラブで何か把握していたり、その後、こういう問題が起きて何か対策など練られたとか、社長の個人認識も含めてお願いします。(記者J)
「そういうことはないと認識しています」
――その事実もないということも宜しいですか?(記者J)
「はい」
【了】
text by 桑村健太 photo Asuka Kudo / Football Channel
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(2014年3月25日「フットボールチャンネル」より転載)