香川真司に恩師クルピが移籍のすすめ「時間を無駄にするな」(沢田啓明)

モイーズ監督になってからマンチェスター・ユナイテッドで不遇の時を過ごす香川真司。そんな香川をかつての恩師レヴィー・クルピはどう思っているのか。移籍期間も終わり、今季は残留となったが、クルピはユナイテッドから移籍することを強く提言した。

■「(モイーズから)求められていない」

香川真司の今冬の"駆け込み移籍"はなかった。3月末まで認められているJリーグへの復帰がない限り、少なくともW杯まで、マンチェスター・ユナイテッドに留まることになる。

はたして、この決断は正しかったのか。

2007年5月にセレッソ大阪の監督に就任した直後、18歳2ヶ月の香川をレギュラーに抜擢してチームの主力に育て上げ、19歳2ヶ月で日本代表へ送り込み、2010年のドルトムント移籍後も交流のある恩師レヴィー・クルピに忌憚のない意見を求めた。

なお、本記事はブラジルで行った独占インタビューである。

「結論から言おう。純粋にシンジのフットボーラーとしてのキャリアだけを考えるなら、できるだけ早くユナイテッドを離れ、移籍するべきだ。

なぜなら(デイビッド・)モイーズ現監督が目指しているフィジカル重視のプレースタイルがシンジと全く合わないから。シンジの持ち味であるテクニックと創造性が十分に生かされていない、という以前に、そもそも求められてすらいない。

一昨年、(アレックス・)ファーガソン前監督に請われてユナイテッドに入団したこと自体は、間違っていない。それは当時、監督が本当にシンジを必要としていたからだ。そして、プレミアリーグでの一年目としては決して悪くない結果を残した。

しかし、監督が交代し、選手に求めるコンセプトが変化したことで、状況が一変してしまった」

■考えるべき「フットボーラーとしての将来」

「誤解してほしくないのは、私は、『シンジはユナイテッドのようなビッグクラブでは成功できない』と言っているのではないこと。成功することは可能だ。ただし、今の監督が今のコンセプトでチームを作る限り、それは非常に難しい。

少なくとも、かなりの時間がかかる。『フットボーラーのキャリアは短いのだから、貴重な時間を無駄にするべきではない』と言いたいのだ。

もちろん、選手が欧州ビッグクラブから別のビッグクラブへ移籍する場合は、様々な要素がからむ。

ひょっとしたら、ユナイテッドはシンジが加わったことによって新たに獲得した日本企業のスポンサーシップを失うことを嫌い、手放したがらないかもしれない。また、シンジ本人も『現在より収入を減らすくらいなら、ユナイテッドに留まりたい』と考えても不思議ではない。

だから、私が言っているのは、あくまでも彼のフットボーラーとしての将来だけを考えた場合の選択だ。

もし移籍するなら、彼の長所を十分に発揮できるリーグとクラブが望ましい。具体的には、スペイン、ドイツ、フランスなどのビッグクラブだろう。イタリア・セリエAもいい。能力の高いDFが多いが、だからこそ、シンジの長所が際立つはずだ。

日本へ帰ってくるのは、まだ早い。2014年W杯のことを考えて、出場機会を増やすために戻ってくるのも感心しない。もっともっと、欧州でチャレンジすべきだろう」

■香川の持つ、テクニックよりも大きな長所とは?

「初めてシンジを見たときのことは、良く覚えている。当時は控え選手だったが、紅白戦で見て、すぐに『これはとてつもないタレントだ』と確信した。

日本では、『まだ若いから、もっと時間をかけてじっくり育てて...』という考え方をする人が多いようだ。

そのような発想は、私にはない。ペレは16歳でサントスからデビューしてブラジル代表に入り、17歳でW杯を制覇した。そういう国から来た者にとって、日本人がなぜ年齢にこだわるのか、理解に苦しむ。

シンジの持ち味は高度なテクニックと豊富なアイディアだが、もっと大きな長所がある。それは、志の高さだ。若い頃から『世界トップの選手になるんだ』という夢を持ち、それを実現するため、常にブレることなく努力を続けてきた。それは、曖昧な願望ではなく、確たる目標としての『夢』だ。

本田(圭佑)、長友(佑都)らもそうだが、才能の有無もさることながら、強烈な向上心を持つ選手だけが世界の頂点にチャレンジすることができる。これが欠けていたのが、以前の曜一郎(柿谷)だ。ただし、今は全くの別人。強い向上心こそが、彼を急激に成長させる原動力となっている。

常々、私は『シンジは日本のフットボールが生んだ最高の才能』と考えている。『夢』を持ち続ける限り、シンジはさらに成長する。

彼の心の中に、『せっかく偉大なクラブに入ったのに、このような形で退団するのは悔しい』という感情があるかもしれない。それは自然な思いであり、間違ってはいない。

しかし、自分が好ましくない状況に置かれ、そのような状況を打開するのに自力よりも他力が重要である場合、環境を変えることは最良の選択でありうる。また、それは決して恥ずかしいことではない。

フットボーラーのキャリアは短い。時間を無駄にするべきではない」

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