【速報】タイガー・ウッズ逮捕!:もはや許されない「2度目の裏切り」--舩越園子

タイガー・ウッズの逮捕は、腰痛で手術とリハビリを繰り返す中、悲痛な胸中をブログで綴って大きな反響を得た5日後のことだった。

もはや、世界中のファンに対する裏切り行為だと言わざるを得ない。

ゴルフ界の元王者、いや永遠の王者となるはずだったタイガー・ウッズ(41)が29日未明(米東部時間)、フロリダ州ジュピターの自宅近郊の路上で飲酒運転の疑いで逮捕され、拘置された。

腰痛と手術、リハビリを繰り返す生活の中、悲痛な胸中をウッズ自身がブログで綴り、大きな反響を得たわずか5日後のことだった。

焦点が定まらないうつろな目

24日に更新されたウッズのブログには、4月に受けた4度目の手術のおかげで「ようやく痛みのない生活ができる」と安堵を見せる一方で、「もう一度、プロフェッショナルなゴルフがしたい」とトップアスリートとしての悲痛な叫びがしたためられていた。

そのブログを読み、「タイガー、頑張れ!」「復活を信じているよ」「戻ってくるまで待っているからね」と激励の言葉を送った世界中のファンたちは、それからわずか5日後のウッズ逮捕の報をどんな気持ちで受け止めればいいのだろうか。

逮捕され、拘置されて撮影された正面からの顔写真。焦点が定まらないうつろな目。ゴルフ界の王者とはとても思えない情けない表情。

すでに世界中のウェブサイトに出回っているその顔写真を指差しながら、「タイガーはどうしたの?」と子供たちから問われたら、親たちは、大人たちは、どう説明したらいいのか。

これは、まさに世界に対するウッズの裏切り行為だ。

飲酒あるいは薬物使用

ウッズが逮捕されたのは、米東部時間の29日午前3時ごろ。フロリダ州ジュピターの自宅から数マイル南側の道路で交通違反取り締まり中の警察官に止められ、飲酒あるいは薬物使用下で運転していたとして逮捕され、同午前7時18分にパームビーチ・カウンティ拘置所へ身柄を移された。

ウッズは同午前10時50分に釈放されたが、この日の米国はメモリアルデーの祝日ということもあり、警察側からの詳細な発表は今のところ、行なわれていない。

ウッズ逮捕の第一報を受け、米国内のTV各局は臨時ニュースを流して次々に驚きの事実を伝えている。

またしても

『CNNヘッドライン』やゴルフ専門TVの『ゴルフチャンネル』は、逮捕の経緯やウッズのゴルフの経歴、近況などを繰り返し伝えている。

そして、米メディアの多くは2009年にウッズが起こした交通事故を引き合いに出し、「またしても警察の世話になった」と批判している。

2009年11月。サンクスギビングのお祭りムードが漂う夜、フロリダ州アイルワースの当時の自宅のすぐそばで消火栓にぶつかった自損事故。あの事故が発端となって、未曽有の不倫騒動が勃発した。

あのときは「ウッズを信じていたのに裏切られた」「憧れていたウッズは虚像だった」などと落胆、批判が膨れ上がり、ウッズはしばらくの間、公の場から姿を隠していた。

そのままゴルフ界から消えてしまうのではないかという見方さえあったが、翌春、謝罪会見を開き、「僕はあやまちを犯した」と世界に向かって謝罪。そして4月のマスターズから戦いの場へ復帰した。

以後、2012年に年間3勝、2013年は年間5勝を挙げて完全復活をアピールし、ゴルフ界からも世間からも「許された」格好になっていたが、メジャー優勝は2008年の全米オープンが最後で、不倫騒動以後のメジャー優勝はない。

2014年以降は腰痛が悪化し、手術とリハビリ、欠場を繰り返していた。それでもウッズが姿を現わせば、ファンが集まり、ウッズがブログを更新すれば、そのたびに大きく報道される存在だった。

5日前のブログ更新時もそうだった。だが、わずか5日後に逮捕されるとは、誰が想像できたであろうか。

誰にもあやまちはある。だが、1度は許されても、2度許されることはない。

これは、ファンに対し、世間に対し、世界に対する裏切り行為。そう言わざるを得ないことが、あまりにも残念すぎる。

ウッズが釈明声明を発表

同日の午後、釈放されたウッズ自身から釈明の声明が発せられた。

「自分がしたことの重大さは理解しており、自分の行動に対する全責任を取るつもりだ」

「みんなに知ってほしい。アルコールは無関係だ。処方された薬の予期せぬリアクションが出た。複数の薬による反応がこれほど大きく出るとは思っていなかった」

飲酒運転ではなく、いわゆる違法ドラッグ使用でもないという、この声明。まだ本人の「肉声」は聞けていない。質問にも答えていない。この段階でどう受け止めたらいいのか――世界がいまなお揺れている。

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舩越園子

在米ゴルフジャーナリスト。1993年に渡米し、米ツアー選手や関係者たちと直に接しながらの取材を重ねてきた唯一の日本人ゴルフジャーナリスト。長年の取材実績と独特の表現力で、ユニークなアングルから米国ゴルフの本質を語る。ツアー選手たちからの信頼も厚く、人間模様や心情から選手像を浮かび上がらせる人物の取材、独特の表現方法に定評がある。『 がんと命とセックスと医者』(幻冬舎ルネッサンス)、『タイガー・ウッズの不可能を可能にする「5ステップ・ドリル.』(講談社)、『転身!―デパガからゴルフジャーナリストへ』(文芸社)、『ペイン!―20世紀最後のプロゴルファー』(ゴルフダイジェスト社)、『ザ・タイガーマジック』(同)、『ザ タイガー・ウッズ ウェイ』(同)など著書多数。

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(2017年5月30日フォーサイトより転載)

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