スマホで保護者と連絡 保育園の事務スムーズに

保育士の業務負担を軽減し、保護者とのコミュニケーションを円滑にするアプリ開発へ。

園児の様子をスマホで撮影する保育士

茨城県龍ケ崎市のまつやま大宮保育園(松山圭一郎園長)は、保育園向けICTシステム「kidsly(キッズリー)」を導入し、保育士のアナログ的事務作業の改善を進めている。

スマートフォン(スマホ)による写真付き連絡帳や登降園連絡は、簡単で便利だと保護者に大好評。保育士と保護者のコミュニケーションの活性化や、保育士の業務負担軽減に役立っている。

社会福祉法人山ゆり会が運営する同園(定員60人)は、2013年8月に開所した郊外型の保育園。築山がある広い園庭で、68人の園児が元気に走り回っている。

キッズリー導入のきっかけは15年9月、開発元の㈱リクルートマーケティングパートナーズからの電話。保育士の業務負担を軽減し、保護者とのコミュニケーションを円滑にするアプリ開発への協力依頼だった。

「保育士確保には給与アップだけでなく、キャリアパスの仕組みや働きやすい環境づくりが必要。ICT化で保育士の業務負担を軽減したい」と考えていた松山園長は、連絡帳やクラス掲示板などを手書きしていること、電話で園児の欠席・遅刻の連絡を受けていることなど、アナログ的な現場の実情を伝えた。

また、モニターを引き受け、開発中のアプリを1クラスで使い、保育士や保護者の反応、意見を報告した。そしてキッズリーは今年3月に無料アプリとしてサービス提供を開始した。

キッズリーの機能には、欠席・遅刻、誰が何時に送迎するかが一目で分かる「登降園管理」、園児の様子を写真付きで4人まで送信できる「連絡帳」、園での様子を写真撮影して保護者に送れる「フォト」、ケガや体調不良を保護者に緊急通報できる「個別連絡」、園からのお知らせを伝える「掲示板」、年間行事が分かる「カレンダー」があり、スマホやタブレット上で簡単に操作できる。

登降園管理機能(左)と個別連絡機能

同会は運営する4保育園のうち、規模の小さい2園でキッズリーを導入したが、松山園長が最も気を付けたのが、保育士と保護者の理解を得ることだった。モニターしていたこともあり、保育士の理解はすぐ得られた。しかし、保護者からは手書きの良さなどを訴える意見があり、キッズリーへの変更を望まない一部の人には従来通り手書きの連絡帳を継続することにした。

保護者との関係良好に

キッズリーを導入して、保育士の事務作業は大きく変わった。

事務職員が電話で受けていた欠席・遅刻などの連絡は、クラスごとに保育士がスマホで確認。園児の状態を直接把握でき、朝の忙しい時間を有効活用できるようになった。登園時に受け取り、限られた時間内で手書きし、降園時に手渡ししていた連絡帳は、スマホで入力し、降園1時間前に保護者へ送信するよう設定。保護者は事前に今日の出来事や体調などが分かるため、降園時の会話が弾むようになった。 送迎者の急な変更があっても、事前に4人分の名前と顔写真が登録されているので、確認作業が容易になった。

また、ケガなどの緊急通報は、患部を撮影した写真を付けて連絡するように変更。電話では伝わりにくい状態が写真で分かるので、説明時間は短縮され、保護者とのやりとりもスムーズになった。

0歳児を担当する森山睦美さん(35)は「連絡帳は体温や授乳時間・量などを細かく記載できる。記録としても使えて便利。紙の時より保護者とのコミュニケーションが増えた。クラス掲示板を書く時間は半分になり、写真付きで分かりやすくなった」と話す。

一方、保護者からは

「子どもの様子が写真付きで分かるので安心」

「出張中の父親や祖父母と情報共有でき、家族関係も良くなる」

「通勤電車で連絡帳を書いて送れるので便利」

など歓迎の声が上がっているという。

「一般企業に比べ保育園は遅れている。小中学生が授業でパソコンやタブレットを使用する時代に、ICT化しないことに違和感がある」と話す松山園長。

「キッズリーの機能はどんどん充実している。全国130園で導入が決まっており、近い将来LINEのように当たり前になる。来年には全園に導入したい」と話している。

手の空いた時間にスマホで連絡帳を記入する

(2016年9月16日「福祉新聞」より転載)

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